天才にして天災の僕は時に旅人 第一部

流川おるたな

赤城芹奈(あかしろせりな)

 僕は何を隠そうショートスリーパーでもある。
 短時間の睡眠でも生きていけるという特異な体質だ。
 故に一日の平均睡眠時間は4時間に満たないが問題ない。
 常にやりたい事の多い僕は、この特異な体質のお陰で随分と助かっている。
 成長期に睡眠不足では身長が伸びないと両親からの懸念もあった。
 だが案ずることなかれ、中3で170cmになっていたものである。
 これも筋肉の発達と同様に、身体に宿る大妖怪大嶽丸の影響と考えられた。
 突然始めたショートスリーパーの話はこれくらいにしておく。
 中学時代は他にも楽しかったり悲しいエピソードも在るには在るが、端折らせていただいて卒業式の日と相成りました。
 父と母が忙しい中出席してくれたのだけれど、感無量でずっと号泣していたらしい。
 僕にしてみれば、何の感慨も無く単なる儀式を終えたという感想しか無い。
 卒業式の行われた体育館を出ると、数組の友人や先輩後輩の人のかたまりがチラホラ見えた。
 笑っている人、泣いている人、ケンカを始める人などなどそれぞれである。
 中には卒業式恒例の第二ボタン争奪戦を繰り広げる人達も居た。
 ほとんど学校に顔を見せなかった僕には友人もいないし、ましてや恋人もいない訳で...
 などと考えながらスタスタと両親の待つ校門に歩いていると、突然目の前に見覚えのある女子が立ちはだかる。
 確か、良いことか悪いことかは分からないが、たまたま見事に3年間同じクラスになってしまった元生徒会長の赤城芹奈(あかしろせりな)だ。
 長い黒髪でツンデレ感のある顔、スラっとしたスタイルの美人さんである。
 学業における成績が優秀で秀才の呼び声も高く、僕さえ居なければ試験も学年トップだったろう。
 僕が居たばっかりにずっと2位だった訳である。
 スポーツもテニスの全国大会で3位になる程の実力の持ち主で、正に才色兼備の女子であった。
 そんな才色兼備さんが僕に何の用事だろう?
「キキ君知ってる?」
 綺麗な笑顔をして第一声が質問とは...
 しかも超アバウトな質問と来た。
 ひょっとすると赤城芹奈は天然系なのかも知れない。
 こんな質問をされた側の返答はただ一つ。
「何を?」
 である。
「ああ残念、やっぱり知らないんだ〜ああ残念」
 無念極まり無しと天を仰ぐ赤城芹奈。
「いや、だから何をだよ?」
 天を仰いだ形のまま目線だけを僕に向けて少し怖い感じの芹奈さん。
「知らないなら教えてあげるね」
 幸いな事にすぐ体制を戻し笑顔も戻してくれた。
「わたしもキキ君と同じ高校に行くの。よろしくね」
「あ、ああよろしく」
 それだけ言うと芹奈さんは僕の目の前から去って行った。

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