クリスタル・エノン

夕月桜

小豆とひなの(6)

お冷をテーブルに乗せてくてた長嶺さんに小さくお辞儀して「ありがとうございます」と言った。


「ひなちゃんが友達を連れてくるなんて、はじめてだよね」

「まぁ、そうですね」


やっぱり、私が初めてだった…どうしよう、嬉しくてにやけちゃいそう。

顔を両手で抑えていると支倉さんが「どうしたの?」と言ってきたので、慌てて「なんでもないよ」と手をおろした。


「今日はどんな絵を描くの?」

「この子の実家の看板絵です」

「私の実家、和菓子屋なんです。それで、新作メニューの看板絵を両親に頼まれて」

「なるほど、それでひなちゃんが手伝ってるんだね」


支倉さんは「まぁ」と言って黙々と絵を描く準備をしていた。


「支倉さんは毎日ここに?」

「そうだよ。ひなちゃんね、放課後ここに来て絵の練習しているんだよ」

「そ、そうだったんだ」


長嶺さんと話をしていると支倉さんが「よし、できた」と言って絵を描く準備が終わったみたいだった。

長嶺さんは「頑張ってね、ごゆっくり」と言ってカウンターに戻った。


「じゃあ、どんな感じの絵にしたいか教えて」

「え、えっと…新商品はね…」


私はまず、新商品の大福の説明と大福のアピールしてほしいところを伝えた。

支倉さんは「うんうん」と真剣に聞いてくれて、「じゃあ…」と言って次々とスケッチブックに絵を描いていった。


2人で話しながら書きはじめて20分くらいしたとき、お店から誰か入ってきた。

思わず振り向くと、小柄な女の子がいた。白いブレザーに赤いリボン、黒い無地のスカートと白いニーハイソックスと茶色のローファーを履いていた。


「おかえり、学校おつかれ」

「ありがとう」


どうやらこの子も常連なのか、長嶺さんに挨拶して店内の奥まで進んできた。女の子が歩いていると、私たちに気づいたみたいで声をかけてきた。


「ひなのちゃん。珍しいね、友達?」

「クラスメイトです」


支倉さんとも話している。凄い常連さんなんだなって思っていたら、私の方を向いた。
胡桃色の肩下までのセミロングで、優しそうなタレ目と少し太めの眉毛が特徴的。黄緑色の瞳で、見つめられて今にも吸い込まれそうだ。


「クラスメイトって事は、1年生?」

「あ、はい!新田小豆です!」


私は慌てて自己紹介をした。見た目は凄い可愛いのに、見かけより少し声が低いみたい。


「元気な挨拶だね。私は『柚木廉(ゆのきれん)』白神谷学院高校普通科2年。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします」


柚木さんが手を差し出してくれて、私は席を立ってその手をとって握手した。立ってみて思ったけど、意外と背が低いし…胸も…


「どうしたの?」

「い、いえ…マジマジ見てすみません」

「クスッ……気にしないで」


笑った顔も魅力的で、思わず見惚れちゃう。そして、お胸も……

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