クリスタル・エノン

夕月桜

小豆とひなの(2)

干菓子を口に頬張りながら走り、学校はなんとか遅刻せずにたどり着けた。

ここ『音山学園』は男女共学。初等部と中等部の校舎は最寄り駅から近いが、高等部だけは駅からバスが出ている。

私は家が近いからバスを乗らなくても歩いて通えている。
もしバスで通っていたら登校ラッシュで今頃、本当に遅刻していたよね…。

私は正門を通り校舎に入った。上履きに履き替えていたとき、誰かに肩がぶつかった。


「あっ……ごめん」


声がした方を向くと、同じくらいの背の女の子がいた。


「あ…支倉さん」


彼女は同じクラスの『支倉ひなの(はせくらひなの)』さん。
灰色のボブヘアで赤縁眼鏡の奥には、黄色の綺麗な瞳をしている。少しつり目で…ジト目っていうのかな?可愛い顔をしてる。

少し近寄り難いところがあるからか、あまり友達といるところを見た事が無い。


「何…?」


私があまりにも見過ぎだったのか、嫌そうな顔をして言われた。


「あ、ごめんね…おはよう」

「…おはよう」


よかった…挨拶してくれた。


「よかったら教室まで一緒に行かない?」


私は支倉さんに挨拶してもらえたのが嬉しくてつい教室まで誘っちゃった。支倉さんは、驚いた後じっと見つめてくる。

あ、調子乗っちゃったかな…嫌だったかな。

私が不安になっていると、支倉さんは「ふふ…」と小さく笑った。


「いいよ、行こ」

「!!!!」


支倉さんの笑った顔…初めて見た。

可愛い笑顔に見惚れちゃって固まっていると支倉さんから「早く、遅刻するよ」と声をかけられた。


『1年A組』の札がかかっている教室に入る。


「小豆!おはよう!」

「小豆〜おっは!」

「アイちゃん、ナナちゃん、おはよう」


教室から現れた2人のクラスメイトが私に挨拶してくれた。私も2人に声をかけると、後ろにいた支倉さんが黙って自分の席に座りに行った。


「小豆、支倉さんと来たの?」

「そ、そうだけど…」

「あの子ってさ、すごい無愛想で近寄り難いじゃん」

「あ、ウチも無理〜あの見下してる態度?イライラしてくるよね〜」

「あと、あの子さ休み時間に1人で絵描いてるじゃん?漫画家でも目指してるんじゃないの〜?」


2人とも支倉さんに対してあまりいい感情は、持ってないみたい。

私も初めは怖かったけど、今日ので支倉さんのいいところ見れたし、そこまで悪い人には思わなかったのに。

そんな話をしていると、ホームルームのチャイムが鳴った。

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