姉の友達vs妹の友達
姉の友達の嫉妬
特に何の変哲もない穏やかな朝。
普通に通学路を歩いているだけで、こういうのいいなあ……なんて考えてしまう。まあ、最近なんか騒がしいからな。
これで可愛い女の子が朝から挨拶してきて、一緒に登校なんて流れになれば……
「あの、おはようございます……」
「え?あ、はい。おはようございます」
なんかいきなり可愛い子から挨拶された!
さらさらと朝の優しい風に揺れるショートヘアー。ぱっちりと大きな目。快活そうな外見の割におどおどした控えめな表情。
この雰囲気……あれ?もしかしてメインヒロインきた?
「あの……私の事忘れちゃいましたか?」
「え?あ、いや、すぐ思い出すから待ってて!!」
やばいよやばいよ!!この子誰だったっけ?
幼い頃一緒に東大行く約束した女の子とか?
……いや、そんなわけないな。俺、真面目に勉強した時期って、そんなにないし。
「あの、私……前田ゆのですけど。ほら、この前……」
「あ、ああ!久しぶり!」
「……そんな久々でもないですけど。この前初めて話したばかりだし」
いかん。最近の割とでかいイベント連発のせいで、すっかり忘れていた。転んだショックで忘れたということにできないだろうか。無理だろうな。
あたふたと言い訳じみた事を考えていると、前田さんはおずおずと話を切り出してきた。
「あの……よかったら、一緒に学校に行きませんか?」
「え?別にいいけど……どうしていきなり?」
「その、まだ自分から水瀬さんに声をかける勇気が持てなくて……それで、できれば水瀬さんの事、少し教えて欲しくて……」
「ああ、なるほど。別にいいけど。つっても、そんな知ってるわけじゃないんだが」
「はい。全然大丈夫です。よろしくお願いします」
彼女はそのまま隣に並び、歩き出した。俺には興味なしかい、なんて野暮なツッコミはしない。
こうして、学校に到着するまでの短い間、夏希さんについてぽつぽつと語り合った。
……途中、何度か背筋がぞくぞくしたが、もしかして風邪でもひいたかな?
*******
「な、直登が女子と歩いてる?いや、別におかしな事じゃねえけど……なんだ、アイツ?意外とモテるのか?」
「なっちゃん?」
「ひゃあっ!……な、なんだ、美春か。脅かさないでくれよ」
「あはは、ごめんね。それで、どうかしたの?……あ、直君だ。あらあら、初めて見る子だね~」
「あ、あれって、もしかして……」
「違う思うよ。姉の直感だけど」
「そ、そうか。それはさておき、現代文の課題はやってきたか」
「現代文の課題なんて出てないよ。気になるなら声かければいいのに」
「べ、別に気になってなんかねーし!親友の弟に悪い虫がついてねえか見張ってただけだし!」
「そっかぁ、直君のためにわざわざありがとね~」
「お、お前、信じてねえだろ!」
「ほら、はやく行かないと遅刻しちゃうよ」
「あ、無視すんな、待て~!」
*******
そして、学校生活について特に語られる事なく迎える放課後。
校門から出て、少し歩いた所に夏希さんが立っていた。あの金髪は本当に目立つなあ。待ち合わせに困らなそう。
彼女はこちらに気づくと小走りに駆け寄ってきた。
「よう、あれから体のほうは平気か?」
「あ、はい。まあ、転んだだけなんで。説得力ないかもしれませんが」
「まあ、なんともないならいい。本当は毎日来たかったんだが、千花が熱だしてな。看病してたんだよ」
「えっ!?大丈夫ですか?」
「ああ。もう今は元気にはしゃぎ回ってうるさいくらいだよ」
「そっか……よかった」
元気になったならそれでいい。今度お見舞いに行こう。また体力削られそうだけど。
密かに決心していると、夏希さんが珍しく言いづらそうに口を開いた。
「あー、直登。お前、今朝同じ学校の女と歩いてたよな?」
「え?」
やばい。朝のやつを見られていたのだろうか。正確に言えば、やばいの俺じゃなく前田さんなんだが。
どちらにせよ約束は約束なので、何としてでも隠さなければならない。
だが、夏希さんに嘘を吐くのも心苦しい。
二つの感情が頭の中でせめぎあっていた。
「あれって、その……そういう関係なのか?」
「あー、そういうんじゃなくてですね……最近出会ったばかりの浅い関係ですけど?」
「……怪しい。お前、隠し事してんのか?アタシとお前の仲だろ?」
「ど、どんな仲ですか……」
「……まあ、この前助けてもらったしな。お前の頼みなら何でも一つ聞いてもいいくらいだよ」
「何でも!?」
「リアクションがベタすぎんだよ!!な、何でもとは言ったが限度はあるからな!やらしいのはダメだからな!」
それは何でもではないのでは?と言いたいところだが、俺は紳士なので、もちろん変なお願いはしない。嘘じゃないです。信じてください。
「じゃあ、お願いのほうは今度考えときますよ」
「お、おう、どんとこい……!」
「そういう台詞はあまり言わないほうが……それより、そろそろ行きましょうか。多分、特売でしょ?」
「ああ、そうだな。頼んでいいか?」
「もちろんです」
とりあえず誤魔化せた……向こうから有耶無耶にしてくれた感はあるけど。
「それで……本当はあの女と、どんな関係なんだ?」
「…………」
普通に通学路を歩いているだけで、こういうのいいなあ……なんて考えてしまう。まあ、最近なんか騒がしいからな。
これで可愛い女の子が朝から挨拶してきて、一緒に登校なんて流れになれば……
「あの、おはようございます……」
「え?あ、はい。おはようございます」
なんかいきなり可愛い子から挨拶された!
さらさらと朝の優しい風に揺れるショートヘアー。ぱっちりと大きな目。快活そうな外見の割におどおどした控えめな表情。
この雰囲気……あれ?もしかしてメインヒロインきた?
「あの……私の事忘れちゃいましたか?」
「え?あ、いや、すぐ思い出すから待ってて!!」
やばいよやばいよ!!この子誰だったっけ?
幼い頃一緒に東大行く約束した女の子とか?
……いや、そんなわけないな。俺、真面目に勉強した時期って、そんなにないし。
「あの、私……前田ゆのですけど。ほら、この前……」
「あ、ああ!久しぶり!」
「……そんな久々でもないですけど。この前初めて話したばかりだし」
いかん。最近の割とでかいイベント連発のせいで、すっかり忘れていた。転んだショックで忘れたということにできないだろうか。無理だろうな。
あたふたと言い訳じみた事を考えていると、前田さんはおずおずと話を切り出してきた。
「あの……よかったら、一緒に学校に行きませんか?」
「え?別にいいけど……どうしていきなり?」
「その、まだ自分から水瀬さんに声をかける勇気が持てなくて……それで、できれば水瀬さんの事、少し教えて欲しくて……」
「ああ、なるほど。別にいいけど。つっても、そんな知ってるわけじゃないんだが」
「はい。全然大丈夫です。よろしくお願いします」
彼女はそのまま隣に並び、歩き出した。俺には興味なしかい、なんて野暮なツッコミはしない。
こうして、学校に到着するまでの短い間、夏希さんについてぽつぽつと語り合った。
……途中、何度か背筋がぞくぞくしたが、もしかして風邪でもひいたかな?
*******
「な、直登が女子と歩いてる?いや、別におかしな事じゃねえけど……なんだ、アイツ?意外とモテるのか?」
「なっちゃん?」
「ひゃあっ!……な、なんだ、美春か。脅かさないでくれよ」
「あはは、ごめんね。それで、どうかしたの?……あ、直君だ。あらあら、初めて見る子だね~」
「あ、あれって、もしかして……」
「違う思うよ。姉の直感だけど」
「そ、そうか。それはさておき、現代文の課題はやってきたか」
「現代文の課題なんて出てないよ。気になるなら声かければいいのに」
「べ、別に気になってなんかねーし!親友の弟に悪い虫がついてねえか見張ってただけだし!」
「そっかぁ、直君のためにわざわざありがとね~」
「お、お前、信じてねえだろ!」
「ほら、はやく行かないと遅刻しちゃうよ」
「あ、無視すんな、待て~!」
*******
そして、学校生活について特に語られる事なく迎える放課後。
校門から出て、少し歩いた所に夏希さんが立っていた。あの金髪は本当に目立つなあ。待ち合わせに困らなそう。
彼女はこちらに気づくと小走りに駆け寄ってきた。
「よう、あれから体のほうは平気か?」
「あ、はい。まあ、転んだだけなんで。説得力ないかもしれませんが」
「まあ、なんともないならいい。本当は毎日来たかったんだが、千花が熱だしてな。看病してたんだよ」
「えっ!?大丈夫ですか?」
「ああ。もう今は元気にはしゃぎ回ってうるさいくらいだよ」
「そっか……よかった」
元気になったならそれでいい。今度お見舞いに行こう。また体力削られそうだけど。
密かに決心していると、夏希さんが珍しく言いづらそうに口を開いた。
「あー、直登。お前、今朝同じ学校の女と歩いてたよな?」
「え?」
やばい。朝のやつを見られていたのだろうか。正確に言えば、やばいの俺じゃなく前田さんなんだが。
どちらにせよ約束は約束なので、何としてでも隠さなければならない。
だが、夏希さんに嘘を吐くのも心苦しい。
二つの感情が頭の中でせめぎあっていた。
「あれって、その……そういう関係なのか?」
「あー、そういうんじゃなくてですね……最近出会ったばかりの浅い関係ですけど?」
「……怪しい。お前、隠し事してんのか?アタシとお前の仲だろ?」
「ど、どんな仲ですか……」
「……まあ、この前助けてもらったしな。お前の頼みなら何でも一つ聞いてもいいくらいだよ」
「何でも!?」
「リアクションがベタすぎんだよ!!な、何でもとは言ったが限度はあるからな!やらしいのはダメだからな!」
それは何でもではないのでは?と言いたいところだが、俺は紳士なので、もちろん変なお願いはしない。嘘じゃないです。信じてください。
「じゃあ、お願いのほうは今度考えときますよ」
「お、おう、どんとこい……!」
「そういう台詞はあまり言わないほうが……それより、そろそろ行きましょうか。多分、特売でしょ?」
「ああ、そうだな。頼んでいいか?」
「もちろんです」
とりあえず誤魔化せた……向こうから有耶無耶にしてくれた感はあるけど。
「それで……本当はあの女と、どんな関係なんだ?」
「…………」
コメント