姉の友達vs妹の友達
おでかけしましょ
「お兄さん、こっちですよ」
「はいはい」
真冬ちゃんについてしばらく人並みを縫うように歩くと、意外な建物がそこにあった。
「……ゲームセンター?」
「あっ、知らなかったですか?ゲームセンターというのはですね、色んなジャンルの……」
「いや、それは知ってるから。なんか意外だと思って……」
「意外……ですか?」
「うん。なんかこう……『ゲームセンター?噂には聞いたことがありますが、存在したんですね』みたいな事言うかと……」
「お兄さんはバカなんですか?私、現役の女子中学生ですよ。この前、お兄さんの部屋でもゲームしたじゃないですか」
「えっ!?真冬ちゃん……友達、いたの?」
「失礼ですね!普通にいますよ!これでも学校では猫何匹か被ってますから!」
「猫被ってるって自分で言っちゃうんだ……しかも何匹かって」
せめて俺の前でも一匹くらいは被って欲しいものだ。切実に。
「あっ、ちなみにうちのお母さんはあれが素ですから」
「だからもうその情報はいいんだよ!」
あれが素といわれても、ただの謎のお姉さんにしか見えんし。いや、あれはあれでミステリアスな美女と言えなくも……って、違う違う!何考えてんだ、俺は……。
「……というわけで、今日は目一杯お兄さんのリフレッシュに付き合ってあげますよ」
「何故上から目線……まあ、久しぶりに来たし、別にいいけどさ」
何からやろうかと辺りの筐体を物色しようとすると、真冬ちゃんから袖をちょいちょい引っ張られる。
「お兄さん、お兄さん、あれやりましょう」
「ん?」
真冬ちゃんの白く細い指先は、エアホッケーを指差していた。
いきなり運動系を選んでくるとは……まあいい。いっちょやったるか。
さらに真冬ちゃんは、にやりと余裕たっぷりの笑みを見せながら口を開いた。
「あっ、もちろん本気でいいですよ。私、負けませんので」
なんだそのどこぞの名医のノリ。
仕方ない。ここはそろそろ年上の威厳というやつを見せつけて、二度と毒を吐けなくしておくか。
俺も彼女に倣い、余裕たっぷりの笑みを浮かべた。
「望むところだ」
*******
「……参りました」
「よろしい」
負けた。そりゃあもうあっさり。おかしい。なんでこの子こんなに強いの?3パック同時プレイの時、立て続けにゴールされた時は、思わず立ち尽くしちゃったよ。
真冬ちゃんは「ん~♪」と気持ちよさそうに伸びをして、勝利の余韻に浸っている。今のが夏希さんなら、色々強調されていただろう。
「ふふふ、お兄さんはすっかり油断してましたね」
「……まあ、否定はしない」
「自慢ですが、私はクラスのエアホッケー大会で二連覇しています」
「…………へえ」
いやクラスのエアホッケー大会ってなんだよ。あと二連覇て。クラス替えしてから、まだそんなに経ってないと思うんだけど。
とはいえ、負けは負けだ。年下と思い、油断していた。
「じゃあ、罰ゲームは……」
「ちょっと待って。罰ゲームとか聞いてないんだけど」
「はい。言ってませんので」
「さも当たり前のように言わないでくんない?お兄さんまだ心の準備できてないよ?てか何をするつもり?」
「う~ん……じゃあ1日だけ家を交換するというのはどうでしょう?」
「すいませんごめんなさい勘弁してください」
「そ、そこまでですか……まあ気持ちはわかりますけど」
わかるんかい。それはそれですごいな……。
「あ、そうだ。今度一緒にお風呂に入りましょうよ」
「何さらっとやべえ事言ってんの!?頭おかしいんじゃねえの!?」
「あはは、だってこういうチャンスを使ってスタイル抜群のお姉さんと差をつけたいじゃないですか」
「はあ……ていうか、そう言いながらいざ迫ってくると顔真っ赤になってるから、やめとけっての」
「お兄さんがそう言うなら止めときます……お兄さんも顔赤くなるくせに」
からかうような表情だと見なくてもわかる声音に、何だかくすぐったいような気分になる。
だがそれを気にしだしたら面倒そうなので、俺は真冬ちゃんに話しかけた。
「次は俺が決めていい?」
「はい。もちろんです」
********
そうしてしばらく遊んでから、俺達はゲームセンターを出た。戦績?ご想像にお任せします。
「4勝1敗で私の勝ちですね、お兄さん」
「…………」
言わないでくれよ。せっかく有耶無耶にできたのに……嗚呼、夕陽が目に染みる。
ちなみに、俺が勝てたのはレーシングゲームだけだ。
「まさかシューティングゲームで二丁拳銃使うとは思わなかったよ」
「こういう時の為に練習しておきました」
こんな場面を想定していたというのか。普段何を考えて生きてんだろうか。
また一つ妹の友達の謎が深まった。どうでもいいやつだけど。
「じゃあ、陽も暮れるし、そろそろ帰ろうか。……真冬ちゃん?」
「…………」
「真冬ちゃん?」
「…………」
真冬ちゃんに声をかけても反応がない。彼女は何故かボーッと前を見ている。
不審に思い、その視線を辿ると…………そこには彼女の母親とは別の女性と並んで歩く彼女の父親がいた。
「はいはい」
真冬ちゃんについてしばらく人並みを縫うように歩くと、意外な建物がそこにあった。
「……ゲームセンター?」
「あっ、知らなかったですか?ゲームセンターというのはですね、色んなジャンルの……」
「いや、それは知ってるから。なんか意外だと思って……」
「意外……ですか?」
「うん。なんかこう……『ゲームセンター?噂には聞いたことがありますが、存在したんですね』みたいな事言うかと……」
「お兄さんはバカなんですか?私、現役の女子中学生ですよ。この前、お兄さんの部屋でもゲームしたじゃないですか」
「えっ!?真冬ちゃん……友達、いたの?」
「失礼ですね!普通にいますよ!これでも学校では猫何匹か被ってますから!」
「猫被ってるって自分で言っちゃうんだ……しかも何匹かって」
せめて俺の前でも一匹くらいは被って欲しいものだ。切実に。
「あっ、ちなみにうちのお母さんはあれが素ですから」
「だからもうその情報はいいんだよ!」
あれが素といわれても、ただの謎のお姉さんにしか見えんし。いや、あれはあれでミステリアスな美女と言えなくも……って、違う違う!何考えてんだ、俺は……。
「……というわけで、今日は目一杯お兄さんのリフレッシュに付き合ってあげますよ」
「何故上から目線……まあ、久しぶりに来たし、別にいいけどさ」
何からやろうかと辺りの筐体を物色しようとすると、真冬ちゃんから袖をちょいちょい引っ張られる。
「お兄さん、お兄さん、あれやりましょう」
「ん?」
真冬ちゃんの白く細い指先は、エアホッケーを指差していた。
いきなり運動系を選んでくるとは……まあいい。いっちょやったるか。
さらに真冬ちゃんは、にやりと余裕たっぷりの笑みを見せながら口を開いた。
「あっ、もちろん本気でいいですよ。私、負けませんので」
なんだそのどこぞの名医のノリ。
仕方ない。ここはそろそろ年上の威厳というやつを見せつけて、二度と毒を吐けなくしておくか。
俺も彼女に倣い、余裕たっぷりの笑みを浮かべた。
「望むところだ」
*******
「……参りました」
「よろしい」
負けた。そりゃあもうあっさり。おかしい。なんでこの子こんなに強いの?3パック同時プレイの時、立て続けにゴールされた時は、思わず立ち尽くしちゃったよ。
真冬ちゃんは「ん~♪」と気持ちよさそうに伸びをして、勝利の余韻に浸っている。今のが夏希さんなら、色々強調されていただろう。
「ふふふ、お兄さんはすっかり油断してましたね」
「……まあ、否定はしない」
「自慢ですが、私はクラスのエアホッケー大会で二連覇しています」
「…………へえ」
いやクラスのエアホッケー大会ってなんだよ。あと二連覇て。クラス替えしてから、まだそんなに経ってないと思うんだけど。
とはいえ、負けは負けだ。年下と思い、油断していた。
「じゃあ、罰ゲームは……」
「ちょっと待って。罰ゲームとか聞いてないんだけど」
「はい。言ってませんので」
「さも当たり前のように言わないでくんない?お兄さんまだ心の準備できてないよ?てか何をするつもり?」
「う~ん……じゃあ1日だけ家を交換するというのはどうでしょう?」
「すいませんごめんなさい勘弁してください」
「そ、そこまでですか……まあ気持ちはわかりますけど」
わかるんかい。それはそれですごいな……。
「あ、そうだ。今度一緒にお風呂に入りましょうよ」
「何さらっとやべえ事言ってんの!?頭おかしいんじゃねえの!?」
「あはは、だってこういうチャンスを使ってスタイル抜群のお姉さんと差をつけたいじゃないですか」
「はあ……ていうか、そう言いながらいざ迫ってくると顔真っ赤になってるから、やめとけっての」
「お兄さんがそう言うなら止めときます……お兄さんも顔赤くなるくせに」
からかうような表情だと見なくてもわかる声音に、何だかくすぐったいような気分になる。
だがそれを気にしだしたら面倒そうなので、俺は真冬ちゃんに話しかけた。
「次は俺が決めていい?」
「はい。もちろんです」
********
そうしてしばらく遊んでから、俺達はゲームセンターを出た。戦績?ご想像にお任せします。
「4勝1敗で私の勝ちですね、お兄さん」
「…………」
言わないでくれよ。せっかく有耶無耶にできたのに……嗚呼、夕陽が目に染みる。
ちなみに、俺が勝てたのはレーシングゲームだけだ。
「まさかシューティングゲームで二丁拳銃使うとは思わなかったよ」
「こういう時の為に練習しておきました」
こんな場面を想定していたというのか。普段何を考えて生きてんだろうか。
また一つ妹の友達の謎が深まった。どうでもいいやつだけど。
「じゃあ、陽も暮れるし、そろそろ帰ろうか。……真冬ちゃん?」
「…………」
「真冬ちゃん?」
「…………」
真冬ちゃんに声をかけても反応がない。彼女は何故かボーッと前を見ている。
不審に思い、その視線を辿ると…………そこには彼女の母親とは別の女性と並んで歩く彼女の父親がいた。
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