姉の友達vs妹の友達
訪問者
ひとまず朝食を済ませ、二人は帰宅することになった。
……あとでもう一回寝直そう。
「じゃあな、春香。また学校で」
「うん。また泊まりに来てね」
「ちーちゃん。ちゃんと宿題やらなきゃダメだよ」
「わかってるって。気をつけて帰れよ~」
それぞれ別れの挨拶をするのを眺めていると、昨晩からさっきまでのあれこれが、何だか夢みたいに思えた。まあ、あれがただの妄想なら、俺がいよいよやばいんだけど。
……やば、色々思い出してきた。なんか柔らかいのとか、温かいのとか。
自分の顔が火照ってきたのを感じたところで、夏希さんと真冬ちゃんがこちらを向いた。
「直登、じゃあな」
「お兄さん、また来ますね」
「あ、ああ……帰り、気をつけて」
「……おう」
「はいっ」
二人の頬も、俺と同じように火照って見えるのは気のせいだろうか。
それを確かめる間もなく、彼女達は背を向けた。また変なとこで息合うな……。
そこで、何の気なしに彼女達が歩く方向の逆側に目をやると、少し離れた場所に、誰かが立っているのが見えた。
……あれは確か、昨日夏希さん達と河川敷にいる時に見かけた女の子だ。もしかして、夏希さんに用事があるのだろうか。
だが、こちらが声をかけようか考え始めたら、その子はすぐに曲がり角の向こうへと姿を消した。
一体何だったのか。
俺には想像つかなかった。
*******
ようやく新しいクラスにも馴染み始め、浮き足だった心は落ち着き、穏やかな時間がやってくる……はずだったのだが。
「なあ、日高。お前結局どっちと付き合ってんの?」
「どっちとも付き合ってねえよ」
「そっか。まだ決めかねてるのか。仕方ないよな。どっちも美人だしな」
こんな風に、三田村が絡んでくることがある。こいつはてっきり知らないとばかり思ってたのに……一体誰に聞いたのだろうか。
まあ、こんな質問もしばらくすればされなくなるだろう。
溜め息混じりに廊下に目を向けると、予想外の人物が廊下を歩いていた。
なんと、河川敷の少女(仮名)が歩いていたのだ。
さらに目が合う。
「…………」
「…………」
そのまま視線を交錯させること数秒……。
「っ!」
「あ……」
彼女は突然走り出した。
やっぱり偶然とか気のせいじゃなかった!
あの女子、絶対に水瀬さんの関係者だ!
よくわからないまま立ち上がり、俺は教室を飛び出した。
「あいつ……目が合っただけの女子をあんな必死に追いかけて……とんだケダモノじゃねえか」
三田村が何かほざいた気がしたが、今は大して気にならなかった。
*******
「はぁ……はぁ……」
「と、とりあえず確保ぉ……まさか、同じ学校だったとは」
逃げ出した謎の女子を捕まえたが、別に俺の足が速いわけではなく、単純にこの子が遅すぎた。そりゃあもうびっくりするくらい。
まあ、何にせよ、まずは話をしなければならないので、誰もいない視聴覚室へと入ることにした。
そして、彼女の息が整うのを待ってから、単刀直入に切り出してみた。
「あー……夏希さんに何か用事があった?」
「えっと、あの、その……」
夏希さんの名前にしっかり反応するあたり、予想は外れていないようだ。
だが、彼女はまだ言おうか言うまいか迷っているように見える。
わからない話ではない。
そもそも夏希さんに用事があるのだから、俺がここでそれを無理矢理聞き出しても、何も解決しない気はする。
とりあえず今の自分にできるのは……
「じゃあ、俺には用事の内容は話さなくていい。でも、もし一人で夏希さんに話しかけにくいなら、頼ってくれていいよ」
すると彼女はやや緊張を緩めた表情になった。ショートカットの割に、長い前髪の隙間から見える瞳が、潤んでいるのがわかる。
「い、いいんですか?」
「まあ、それぐらいなら……」
「あ、あの……私、前田ゆのっていいます。そっちは日高君ですよね。水瀬さんの恋人の……」
「ちょっと待って。後半違う。全然違う」
*******
実は隣のクラスだった前田さんと連絡先を交換し、そろそろ家に帰ろうかと下駄箱に向かうと、今度は如月先生と遭遇した。
……まさか立て続けにあの二人の関係者に遭遇するとは。何か細工してんじゃねえのか。
「あら、こんにちは。日高君」
「あ、どうも……」
そういや、この人はあの家には住んでいないのだろうか?
ふとそんな疑問が沸いたところで、如月先生はくすりと色気たっぷりに微笑み、俺の肩に手を置いた。
「ちょっと今から保健室に来てもらえる?」
「…………」
もちろん黙って頷くことしかできなかった。
……あとでもう一回寝直そう。
「じゃあな、春香。また学校で」
「うん。また泊まりに来てね」
「ちーちゃん。ちゃんと宿題やらなきゃダメだよ」
「わかってるって。気をつけて帰れよ~」
それぞれ別れの挨拶をするのを眺めていると、昨晩からさっきまでのあれこれが、何だか夢みたいに思えた。まあ、あれがただの妄想なら、俺がいよいよやばいんだけど。
……やば、色々思い出してきた。なんか柔らかいのとか、温かいのとか。
自分の顔が火照ってきたのを感じたところで、夏希さんと真冬ちゃんがこちらを向いた。
「直登、じゃあな」
「お兄さん、また来ますね」
「あ、ああ……帰り、気をつけて」
「……おう」
「はいっ」
二人の頬も、俺と同じように火照って見えるのは気のせいだろうか。
それを確かめる間もなく、彼女達は背を向けた。また変なとこで息合うな……。
そこで、何の気なしに彼女達が歩く方向の逆側に目をやると、少し離れた場所に、誰かが立っているのが見えた。
……あれは確か、昨日夏希さん達と河川敷にいる時に見かけた女の子だ。もしかして、夏希さんに用事があるのだろうか。
だが、こちらが声をかけようか考え始めたら、その子はすぐに曲がり角の向こうへと姿を消した。
一体何だったのか。
俺には想像つかなかった。
*******
ようやく新しいクラスにも馴染み始め、浮き足だった心は落ち着き、穏やかな時間がやってくる……はずだったのだが。
「なあ、日高。お前結局どっちと付き合ってんの?」
「どっちとも付き合ってねえよ」
「そっか。まだ決めかねてるのか。仕方ないよな。どっちも美人だしな」
こんな風に、三田村が絡んでくることがある。こいつはてっきり知らないとばかり思ってたのに……一体誰に聞いたのだろうか。
まあ、こんな質問もしばらくすればされなくなるだろう。
溜め息混じりに廊下に目を向けると、予想外の人物が廊下を歩いていた。
なんと、河川敷の少女(仮名)が歩いていたのだ。
さらに目が合う。
「…………」
「…………」
そのまま視線を交錯させること数秒……。
「っ!」
「あ……」
彼女は突然走り出した。
やっぱり偶然とか気のせいじゃなかった!
あの女子、絶対に水瀬さんの関係者だ!
よくわからないまま立ち上がり、俺は教室を飛び出した。
「あいつ……目が合っただけの女子をあんな必死に追いかけて……とんだケダモノじゃねえか」
三田村が何かほざいた気がしたが、今は大して気にならなかった。
*******
「はぁ……はぁ……」
「と、とりあえず確保ぉ……まさか、同じ学校だったとは」
逃げ出した謎の女子を捕まえたが、別に俺の足が速いわけではなく、単純にこの子が遅すぎた。そりゃあもうびっくりするくらい。
まあ、何にせよ、まずは話をしなければならないので、誰もいない視聴覚室へと入ることにした。
そして、彼女の息が整うのを待ってから、単刀直入に切り出してみた。
「あー……夏希さんに何か用事があった?」
「えっと、あの、その……」
夏希さんの名前にしっかり反応するあたり、予想は外れていないようだ。
だが、彼女はまだ言おうか言うまいか迷っているように見える。
わからない話ではない。
そもそも夏希さんに用事があるのだから、俺がここでそれを無理矢理聞き出しても、何も解決しない気はする。
とりあえず今の自分にできるのは……
「じゃあ、俺には用事の内容は話さなくていい。でも、もし一人で夏希さんに話しかけにくいなら、頼ってくれていいよ」
すると彼女はやや緊張を緩めた表情になった。ショートカットの割に、長い前髪の隙間から見える瞳が、潤んでいるのがわかる。
「い、いいんですか?」
「まあ、それぐらいなら……」
「あ、あの……私、前田ゆのっていいます。そっちは日高君ですよね。水瀬さんの恋人の……」
「ちょっと待って。後半違う。全然違う」
*******
実は隣のクラスだった前田さんと連絡先を交換し、そろそろ家に帰ろうかと下駄箱に向かうと、今度は如月先生と遭遇した。
……まさか立て続けにあの二人の関係者に遭遇するとは。何か細工してんじゃねえのか。
「あら、こんにちは。日高君」
「あ、どうも……」
そういや、この人はあの家には住んでいないのだろうか?
ふとそんな疑問が沸いたところで、如月先生はくすりと色気たっぷりに微笑み、俺の肩に手を置いた。
「ちょっと今から保健室に来てもらえる?」
「…………」
もちろん黙って頷くことしかできなかった。
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