姉の友達vs妹の友達

差等キダイ

進撃の女子二人組

 ……いかん。この二人が、まさかここまでのポテンシャルを持っているとは……ていうか、今さらだが聞き忘れてたことがあった。

「あの……二人に負けた場合は、どちらの言うことを聞けば……」
「そりゃあ、もちろん……」
「どっちも、ですよ」
「…………」

 二人の「何言ってるの?当たり前でしょ」と言わんばかりの返事に、こめかみを汗が伝う。いよいよ負けられなくなってきた。俺の平穏な休日の為にも!
 コントローラーを握る手にも力が入るのを感じながら、第二コース目スタート。

「よっしゃあ!」
「むむっ」

 なんと、水瀬さんが勢いよくロケットスタートをかました。マジか。

「さすが、暴走族は違いますね」
「おう!……って、誰が暴走族だよ!やったことねえわ!!」
「す、すいません……」

 だから、そんないちいち顔を顔を近づけられると、ドキがムネムネしてやばいんですって!ああもう!
 しかし、それだけで決まらないのがレースだ。

「てい」

 後続グループを走る真冬ちゃんのキャラクターから、ブーメランが投擲され、水瀬さんのキャラクターを的確に転倒させる。マジか。あれ、追尾機能ついてないやつだぞ……。

「やりやがったな、この!」

 水瀬さんは、すぐさま反撃するべく、コースをバックで逆走し始めた。レース展開無視かよ!
 さらに驚きなのが、こちらも的確に真冬ちゃんのキャラクターをぶっ飛ばしていた。ちなみに、周囲のCPUも何体か転倒していた。うわあ、初めてコンピューターが操作しているキャラに同情してしまったぞ。てか、離れとかないと俺のキャラも危ない。俺がキャラ崩壊するという意味じゃないよ。
 そう考えた瞬間の出来事だった。

「この!」
「なんの!」

 思いきりぶつかり合いながら進撃する二つの破壊車に、俺のキャラクターはあえなく池の中へ落とされた。

 *******

 第二コース……俺は4位で終わった。そして……。

「お姉さん、やりますね……次は負けませんよ」
「悪いな。次で勝負をつけさせてもらうぜ」

 水瀬さんは1位。
 真冬ちゃんは2位。
 ……だからなんでだよ!
 いや……理由はわかっているんだ。
 なんというか、この二人の暴走行為は、ことごとく俺を巻き込んでいく。せっかく1位になっても、絶妙なタイミングで崖から落とされたり、空に打ち上げられたりする。むしろ4位なのを誉めてほしいくらいだ。
 ……もう二人の言うこと聞くのがほぼ確定している気がする。
 こういう時の潔さには定評のある俺なので、大人しく思考を楽しむ方向へと切り替えた。しかし……

「さて、どっちが上かをわからせてやろうかな」
「油断していると、あとで痛い目を見ますよ。おば……お姉さん」
「なぁっ!?お前今おばさんとか言いやがったな!アタシはおばさんじゃねえし、年もそんなに変わらねえだろ」
「そうですか~?」

 こっちのほうは、未だにヒートアップし続けていた。そのうち爆発すんじゃねえかな。

 *******

「はあ……はあ……どうする?もう一回やっとくか?」
「はあ……はあ……もう一回、やりたいですね」
「…………」

 ちょっとだけいやらしいことを考えてしまいました。ごめんなさい。
 ゲームしてただけなのに、何故息切れしているのかはわからないが、無事(?)全コース終了した。
 結果は水瀬さんと真冬ちゃんの同率1位である。ちなみに、俺は3位。
 まさかこんな結果になろうとは……いや、かてたんだ。勝てたはずなんだ……普通にやっていれば……。
 負け惜しみを心中で呟きながら、窓の外に目を向けると、陽もだいぶ傾いていた。

「じゃあ、めでたく1位決まったことだし、そろそろお開きに……」
「直登」
「お兄さん」

 やはり逃げられなかった。ちっ、勝負に熱くなりすぎて、すっかり忘れていると思ったのに。
 二人はゆらりと迫ってきて、異論反論を一切許さないような強い眼差しで俺を射抜いている。
 そして、ゆっくりと口を開いた。

「今週の週末、空けといてくれ」
「来週の週末、よろしくお願いします」
「……はい」

 こうして、俺の週末の予定はまたもや埋まってしまった。
 きっと想像した以上に騒がしい休日が俺を待っているんだろうな……。

 *******

 その日の夜。

「兄貴、モテモテじゃん。よかったね。最初で最後のモテ期だよ」
「いや、三回来るんじゃねえのかよ」
「まあまあ、いいじゃん。直君だって悪い気はしないでしょ?」
「悪い気っていうか……前も言ったかもしれないけど、そもそもあの二人にその気がなくて……」
「「またまた~」」
「うぜえ……」
「あっ、そうだ!お姉ちゃん、今度夏希さんに泊まりに来てもらってよ。私はふゆっちに泊まりに来てもらうから。絶対にすごいイベントになるよ」
「わぁ、面白そう~」
「やめて!絶対にやめて!」
「からの~?」
「断固拒否だよ!」

 *******

「おかえり。姉さん、今日は楽しかった?」
「おう、ありがとな、真帆。ちび達の面倒見てくれて」
「別にいい。それより……頑張って」
「何を?」
「……なんでもない。おやすみ」

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品