姉の友達vs妹の友達

差等キダイ

Music from small house

 また前みたいな事になったら困るので、ひとまず近くの公園まで行く事にした。
 そして、ベンチに二人から挟まれる形で座ると、俺は単刀直入に切り出した。

「それで、今日は二人してどうしたんですか?……あっ、もしかして仲直りしたんですか?」
「あ?何言ってんだ、お前」
「そうですよ、お兄さん。私達、けんかなんてしていないですよ。これっぽっちも」
「なぁ」
「ねぇ。うふふ……」

 してんじゃん!めっちゃ睨み合ってんじゃん!バチバチなってんじゃん!
 とはいえ、本人達が喧嘩してないと言い張る以上、こちらとしてはそれ以上何も言えない。なんだ、この理不尽。

「じゃあ二人で一緒に来たんじゃないんですか?」
「「いや、たまたまそこで一緒になって……」」

 さっきまで睨み合ってたのに、急にここまでシンクロするとか。ほら、見てみろよ。シビれるだろ?
 まあ、とにかく二人は、俺に用事があってここに来たようだ。どちらも貴重な放課後の時間を使って、だ。
 ……だが断る!

「わざわざ来てもらって悪いけど、すいません。今日は用事が……」
「この前一緒にいた女の人なら、もう彼氏さんがいますよ」
「いやそういう話じゃなくて……え、マジ!?」
「ああ。アタシも昨日見たな。なんか背の高い男と並んで歩いてたぞ」
「…………」

 おいおいおいおい、このタイミングでそんな事実聞きたくなかったんですけど!
 いや、ほら、こういうイベントって、もっと物語の重要な場面とかでさあ……!
 幸いまだ連絡先を交換しただけで、本気に好きになったとかではないから、まだ傷は浅くて済んだ。それだけが救いだった。本当に。
 俺は余裕たっぷりに深呼吸をして、そっと口を開いた。

「そ、そそそ、そんな報告はいいんですよ。別に興味ないし?あ、飛行機雲」
「めっちゃ動揺してんじゃねえか……な、なんかごめんな?」
「あ、あの!お兄さんなら、素敵な彼女さんが見つかると思うんです!」

 傷をつけた二人が傷薬を塗り込んでくるこの光景、貴方はどう思うだろうか?
 まあ、それとこれとは話が別だ。

「とにかく。今日は別の用事があるんですよ」
「そっか。なら仕方ねえな」
「そうですね。今日は帰ります」

 意外なくらい二人はあっさり引き下がった。正直、どんな用事かを事細かに聞いてこようとするのかと思った。これはこれで自意識過剰だったな。気をつけねば。

「じゃあ二人とも、俺もう行くんで、帰り気をつけて」
「ああ」
「はい」

 俺達三人は公園を出て、左に曲がった……ん?

「……二人はこっちに何の用が?」
「帰るんだよ」
「帰るんですよ」
「……真冬ちゃんはともかく、水瀬さんはたしか向こうだったような」
「ば、ばかやろー!トレーニングだよ、トレーニング!遠回りして足を鍛えてんだよ!」
「…………」

 とりあえず、二人の言葉を信じよう。
 すると、俺が右に曲がれば右に曲がるし、左に曲がれば彼女達も左に曲がった。
 つまりは、そういう事だろう。最早聞くまでもない。

「はあ……ついてきても構いませんが、大した用事じゃないですよ」
「「…………」」

 二人は俺の言うことをスルーし、さりげなくついてきていた。やっぱこの二人、仲いいんじゃねえか。俺が見てないところで、絶対にハグとかしてるだろ。

 *******

「着きましたよ」
「ん?」
「ここは……」

 三人でしばらく歩いて、ようやく辿り着いた場所とは……小さな楽器店である。
 水瀬さんと真冬ちゃんは、ぽかんとした表情で、深町楽器と係れた古びた看板を見上げていた。まあ、予想外ではあっただろう。
 数秒そうしてから、水瀬さんと真冬ちゃんはハッとしてこちらに尋ねてきた。

「お前、楽器できたのか?何やってんだ?」
「最近始めたばかりですけど、ギターを少し……」
「そっか。じゃあ、今度聞かせてくれよ」
「まあ、その……機会があれば」
「お兄さん、私実は楽器を幾つか演奏できるんです。今度合わせましょうよ」
「ま、まだ始めたばかりだからいつになるかわかんないけど……」

 そんなやりとりをしていると、店から白髪頭の男性が出てきた。この人がここの店長だ。俺がここに通う原因わ、作った人だ。
 店長はこちらに向かって、軽く手を挙げ、近づいてくる。

「おう、来たか来たか。しかも彼女連れとは……生意気な」
「何が生意気なんですか。てか彼女じゃないですよ」   
「そっか。てかお前、せっかくだし、そっちのめんこい彼女達とバンドでも組めばいいじゃねえか」
「あはは、何言ってるんですか。ねえ、二人とも……え?」

 何故だかわからない。本当に何故だかわからないけど……二人は満更でもなさそうな顔をしていた。いやいや、あなた達、ハートに火が点くの早すぎじゃないですか?

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