姉の友達vs妹の友達
言い出せなくて
俺のリクエストで立ち寄った本屋では、不思議なくらい何事も起こらず、ただ普通に買い物しただけだったのでスキップすると、時計の針はもうお昼時を指していた。
なので、千秋の提案に従い、地下にあるファーストフード店に行くことにした。
「兄貴の買い物があっけなく終わったね~」
「やかましいわ。山も谷もいらんし、波乱万丈になる必要もねえだろ」
「ところで何の本買ったの?エロ本?」
「妹とその友達を連れて歩いている時にエロ本買うほど狂ってねえよ。あと妹が、んな事ストレートに聞くな。期待に添えなくて悪いが、ただの小説だよ」
「へえ、どんな小説なんですか?」
「今話題になってるやつだよ。確か最近映画化決定したやつ」
「あ、私もそれ知ってます。クラスの子が持ってました」
「私はわかんないなぁ、あと本読むの苦手……」
千秋はポテトを齧りながら、机に項垂れる。こいつはその分運動神経とかに振り分けられたからな。あとコミュ力とか。なんだ、こいつ。リア充かよ。
隣の真冬ちゃんは、こうぐいぐい食いついてくるあたり、読書は好きそうだ。
本当に対照的な二人だな。
そこで、ふと気になったことを聞いてみた。
「そういや、二人は何で仲良くなったの?」
「勉強教えてもらった」
「ちーちゃんと席が隣同士になった時に、わからない問題を教えたのがきっかけです」
千秋のテキトーな説明を真冬ちゃんが補足してくれる。なるほど……余裕で状況が目に浮かぶわ。
音声まで完璧についてくるとか、なかなかかねえぞ。あと千秋は何をそんなに得意気になっているのだろうか。
俺はつい真冬ちゃんに向け、頭を下げてしまった。
「……こんな妹ですが、末長くよろしくお願いいたします」
「なぁっ!?や、やめてよ、兄貴!なんかアタシがバカみたいじゃん」
「あははっ、はい。わかりました。じゃあ、その代わり……」
真冬ちゃんは、人差し指を唇に当て、少し考える素振りを見せてから、にぱっと年相応の可愛らしい笑顔を見せた。
「今度お兄さんから勉強を教わりたいです」
「…………ごめん。そんな成績よくない」
その無邪気なお願いに、残酷な現実を突きつけるのは少々心が痛かった。
しかし、彼女は笑顔を崩さなかった。
「全然大丈夫ですよ」
「「いや、大丈夫なのかよ」」
出てきた台詞に、思わず千秋と同時に突っ込んでしまった。絶対に大丈夫じゃないと思う。
*******
「あ~、結構歩いたね~」
千秋がベンチに座り、宙を仰いだ。近くにいる子供と似たような動作なのが笑ってしまう。
昼食の後は、特に何も決めずに思いつくまま色んな店に入った。
そうしていたら、だいぶ時間が過ぎていた事に気づき、そろそろお開きにすることになった。
「少し休んだら行くか。真冬ちゃんは疲れてない?」
傍に立っている真冬ちゃんに声をかけると、彼女からは何の返事もなかった。
ちらりと目をやると、彼女はさっき千秋と同じような動きをしていた子供と、その両親を見つめていた。
その瞳は、さっきの豆柴を見ていた時と同じような鈍い輝きで、見ていると胸を締め付けられる気分になる。
やがて、その瞳がこちらを向いた。
「あ、お兄さん、ごめんなさい。ぼーっとしてました」
一瞬にして鈍い輝きは消え去り、見慣れた笑顔に変わる。
こちらもそれに答えるように笑顔を見せた。
「少し休んだら行こうか」
「そうですね。今日は楽しかったです」
「そっか。ならよかった」
……わかったのは、多分俺は彼女よりも作り笑いが下手だということだ。
*******
「どうかしたの、なっちゃん?」
「ん?いや、何でもねえよ。それより、美春。ここがわからねえんだけど」
「ああ、そこはね……」
「なるほど。やっぱお前教え方上手いなー」
「あはは、それほどでもないよ。なっちゃんが本当は頭いいだけだよ」
「それもあるかもな。ははっ……そういや、お前んとこの妹とか、弟……最近どうだ?」
「直君なら、千秋ちゃんと真冬ちゃんの買い物に付き合ってるよ」
「そっか……って、別に直登の事だけ聞いたわけじゃねえよっ!」
「次の問題なんだけど……」
「スルーすんなぁ!」
*******
とりあえず、二週にわたり日曜日に女子と会うというリア充じみたイベントを過ごしたわけだが、何故だろう……これで終わりそうな気が全然しない。
むしろここから、さらに賑やかになりそうな気がしていた。
そして、こういう背筋をぞくぞくと震わせるような予感こそ当たりやすいものらしく、ずばり的中した。
だって今まさに……。
「直登、一緒に帰ろうぜ」
「お兄さん、一緒に帰りましょう」
「…………」
多分……今週と来週の日曜日の予定も、強制的に埋まる羽目になるだろう。
そして、回り始めた物語は少しずつ加速していくことになる。
なので、千秋の提案に従い、地下にあるファーストフード店に行くことにした。
「兄貴の買い物があっけなく終わったね~」
「やかましいわ。山も谷もいらんし、波乱万丈になる必要もねえだろ」
「ところで何の本買ったの?エロ本?」
「妹とその友達を連れて歩いている時にエロ本買うほど狂ってねえよ。あと妹が、んな事ストレートに聞くな。期待に添えなくて悪いが、ただの小説だよ」
「へえ、どんな小説なんですか?」
「今話題になってるやつだよ。確か最近映画化決定したやつ」
「あ、私もそれ知ってます。クラスの子が持ってました」
「私はわかんないなぁ、あと本読むの苦手……」
千秋はポテトを齧りながら、机に項垂れる。こいつはその分運動神経とかに振り分けられたからな。あとコミュ力とか。なんだ、こいつ。リア充かよ。
隣の真冬ちゃんは、こうぐいぐい食いついてくるあたり、読書は好きそうだ。
本当に対照的な二人だな。
そこで、ふと気になったことを聞いてみた。
「そういや、二人は何で仲良くなったの?」
「勉強教えてもらった」
「ちーちゃんと席が隣同士になった時に、わからない問題を教えたのがきっかけです」
千秋のテキトーな説明を真冬ちゃんが補足してくれる。なるほど……余裕で状況が目に浮かぶわ。
音声まで完璧についてくるとか、なかなかかねえぞ。あと千秋は何をそんなに得意気になっているのだろうか。
俺はつい真冬ちゃんに向け、頭を下げてしまった。
「……こんな妹ですが、末長くよろしくお願いいたします」
「なぁっ!?や、やめてよ、兄貴!なんかアタシがバカみたいじゃん」
「あははっ、はい。わかりました。じゃあ、その代わり……」
真冬ちゃんは、人差し指を唇に当て、少し考える素振りを見せてから、にぱっと年相応の可愛らしい笑顔を見せた。
「今度お兄さんから勉強を教わりたいです」
「…………ごめん。そんな成績よくない」
その無邪気なお願いに、残酷な現実を突きつけるのは少々心が痛かった。
しかし、彼女は笑顔を崩さなかった。
「全然大丈夫ですよ」
「「いや、大丈夫なのかよ」」
出てきた台詞に、思わず千秋と同時に突っ込んでしまった。絶対に大丈夫じゃないと思う。
*******
「あ~、結構歩いたね~」
千秋がベンチに座り、宙を仰いだ。近くにいる子供と似たような動作なのが笑ってしまう。
昼食の後は、特に何も決めずに思いつくまま色んな店に入った。
そうしていたら、だいぶ時間が過ぎていた事に気づき、そろそろお開きにすることになった。
「少し休んだら行くか。真冬ちゃんは疲れてない?」
傍に立っている真冬ちゃんに声をかけると、彼女からは何の返事もなかった。
ちらりと目をやると、彼女はさっき千秋と同じような動きをしていた子供と、その両親を見つめていた。
その瞳は、さっきの豆柴を見ていた時と同じような鈍い輝きで、見ていると胸を締め付けられる気分になる。
やがて、その瞳がこちらを向いた。
「あ、お兄さん、ごめんなさい。ぼーっとしてました」
一瞬にして鈍い輝きは消え去り、見慣れた笑顔に変わる。
こちらもそれに答えるように笑顔を見せた。
「少し休んだら行こうか」
「そうですね。今日は楽しかったです」
「そっか。ならよかった」
……わかったのは、多分俺は彼女よりも作り笑いが下手だということだ。
*******
「どうかしたの、なっちゃん?」
「ん?いや、何でもねえよ。それより、美春。ここがわからねえんだけど」
「ああ、そこはね……」
「なるほど。やっぱお前教え方上手いなー」
「あはは、それほどでもないよ。なっちゃんが本当は頭いいだけだよ」
「それもあるかもな。ははっ……そういや、お前んとこの妹とか、弟……最近どうだ?」
「直君なら、千秋ちゃんと真冬ちゃんの買い物に付き合ってるよ」
「そっか……って、別に直登の事だけ聞いたわけじゃねえよっ!」
「次の問題なんだけど……」
「スルーすんなぁ!」
*******
とりあえず、二週にわたり日曜日に女子と会うというリア充じみたイベントを過ごしたわけだが、何故だろう……これで終わりそうな気が全然しない。
むしろここから、さらに賑やかになりそうな気がしていた。
そして、こういう背筋をぞくぞくと震わせるような予感こそ当たりやすいものらしく、ずばり的中した。
だって今まさに……。
「直登、一緒に帰ろうぜ」
「お兄さん、一緒に帰りましょう」
「…………」
多分……今週と来週の日曜日の予定も、強制的に埋まる羽目になるだろう。
そして、回り始めた物語は少しずつ加速していくことになる。
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