姉の友達vs妹の友達
誤解のち誤解
「……なるほどね。さっきのは不可抗力であって、決してわざとではないと」
「……はい」
「あの、お姉さん。お兄さんの言うとおりです。そもそも私がはしゃぎすぎたのが原因なんです。ね、お兄さん?」
何故このタイミングで、笑顔で確認してくるのか……まあ、それはさておき、姉さんの表情からして、誤解が解けたのは伝わってきた。
「まったくもう……可愛い弟が犯罪に手を染めたかと思っちゃったよ」
「いや、考えすぎだから。姉さんは俺がどんな人間か知ってるでしょ?」
「……うん。もちろんだよっ」
「今の間は何!?」
何て事だ。実の姉から信用されていないなんて。
その様子を見て、真冬ちゃんは笑いを噛み殺している。うん、半分くらいは君のせいだからね?そして……
「なあ、直登。これはどういうことだ……」
「は、はい?」
さっきで黙って俯いていた水瀬さんが、急に詰め寄ってきた。
ちなみに、姉さんは俺と2人のいざこざを知らないので、目を丸くしていた。
「お前、あん時の約束を忘れたのかぁぁ!!」
「ちょ……違います違います!これはそういうんじゃ……!」
*******
ここで少し話を遡ることにしよう。
あの校門でのあれこれの後、俺達は間を取って、喫茶店で3人で話をすることにした。
もちろん、冷えきった空気なのは言うまでもない。こんな空気を味わったのは、父さんがキャバクラに行った事が母さんにバレた時以来だ。
そんなひたすら気まずい空気の中、水瀬さんが一番に口を開いた。
「そろそろ6時になるけど、中坊は帰らなくていいのか?」
「心配するふりして、さりげなく帰らせようとしないでください。それに、遅くなったらお兄さんに送ってもらいますので」
俺、君の家知らないんだけどね。
苦笑いをしていると、真冬ちゃんは真っ直ぐに水瀬さんを見た。
「それより、お姉さんこそ、結局はお兄さんに何の用なんですか?」
「えっ?ア、アタシは、その……この前スーパーの特売で手伝ってもらったり、弟や妹の遊び相手をしてくれたお礼を……って、別にいいじゃねえかよ、細かい事は!そっちは大して用はないんだろ?」
「いいえ。そんなことはありません。お兄さんと話す時間は、私にとって大事な時間です。既に一週間のルーティンに組み込まれています。毎朝鯖の塩焼きを食べるのと同じです」
「知らねえよ」
確かに。それは知らない。てか、なんだそのルーティン。毎朝カレー食うとかを某プロ野球選手からパクったのか。
すると、周りの視線がこちらに向いている事に気づいた。
「何あれ。修羅場?」
「どうやら二股っほいな」
「マジかよ。何であんな美人と美少女があんなのに……」
……おい。どういう事だ。なんで俺だけダメージ喰らってんだよ。理不尽すぎだろ。
真冬ちゃんは周りの視線など気にしておらず、水瀬さんは片っ端から睨み返していた。なんだ、この対極のリアクション……俺も見習い……たくはないな。
胃がキリキリ痛むような錯覚に、こっそり溜め息を吐くと、ようやく注文したホットココアが来た。
「お待たせしました~……少年、しっかり向き合えよ」
何故か店員のお姉さんに、ガッツポーズとウインクのセットをもらえた。なるほど、これがこの店のスペシャリテか。
すると、二人の視線がこちらに向いていた。
「「…………」」
「な、何でしょうか?」
「「別に」」
完全にシンクロしやがった。間違いなくこの二人仲良いだろ!?そうなんだろ!?おら、さっさと仲直りしろや!
実際はそんな事を口に出す勇気はないので、ホットココアに口をつけると、優しい甘味が気持ちを落ち着かせてくれる気がした。
二人もそれぞれ、真冬ちゃんはカフェオレ、水瀬さんはブレンドコーヒーに口をつけ、聞いてるほうがじんとくるような甘い吐息を漏らした。
そして、気を取り直したのか、水瀬さんは「じゃあ」と落ち着いたトーンで話し始めた。
「ひとまず……今週は直登を譲ってくれねえか。ウチのチビ達が会いたがってるんだ」
「わかりました。いいですよ」
「よくないよ!?俺にもデートとか予定が……」
「「彼女いないのに?」」
「おい、二人とも実は裏で繋がってんだろ!?白状しろ!!」
*******
「直君……いつの間にか大人になってたんだね。びっくりだよ……」
「いやいや、誤解。誤解もいいところだから」
今の話のどこに大人な要素があるというのか。まあ、姉さんはピュアだから仕方ないけど。
ちなみに、エロ本など所持して姉さんに見つかったら、どうなるかなんて想像もつかないくらいやばい。
それよりやばいのは、水瀬さんが至近距離まで近づき、じっと俺を睨みつけている事だ。
ここまでくると、怖いというより、綺麗な顔を遠慮なく近づけてくる無防備さに胸が高鳴る。さらさらの金髪。ぱっちりと大きな目。すらりと形のいい鼻。滑らかで柔らかそうな白い肌。そして、甘い香りと口調に合わない可愛らしい唇。ぶっちゃけ理性を削る凶器でしかない。
彼女は俺の鼻先に吐息をかけながら話を続けた。
「今週はアタシに付き合うって言ったよな?も、もも、もしかして、もう……!」
「いや、それは……」
「今日はたまたま遊びに来ただけですよ。それに、今のは誤解だって説明したじゃないですか……このムッツリスケベ」
「…………はあ!?だ、だ、誰が!」
真冬ちゃんは、顔を真っ赤にしている水瀬さんの横を通り抜け、さらなる爆弾を投下した。
「じゃあ、お兄さん。この誰かに似た金髪つり目のグラマーなお姉さんの写真集は借りていきますね」
「はっ!?」
「なっ!?」
何言ってんの、この子!?
そう思った時、既に時は遅く、しらっとした目を向けてくる姉さんの隣で、水瀬さんが顔を真っ赤にして、口をぱくぱくさせていた。
「ちょっ、お、おま……お前……しゃ、写真?え?」
いかん、処理落ちした機械みたいだ。なんか目の焦点が合ってない。
……とりあえず確実なのはただ二つ。
この誤解(?)を解くのは面倒な事と、真冬ちゃんは小悪魔じゃなく悪魔な事だ。
「……はい」
「あの、お姉さん。お兄さんの言うとおりです。そもそも私がはしゃぎすぎたのが原因なんです。ね、お兄さん?」
何故このタイミングで、笑顔で確認してくるのか……まあ、それはさておき、姉さんの表情からして、誤解が解けたのは伝わってきた。
「まったくもう……可愛い弟が犯罪に手を染めたかと思っちゃったよ」
「いや、考えすぎだから。姉さんは俺がどんな人間か知ってるでしょ?」
「……うん。もちろんだよっ」
「今の間は何!?」
何て事だ。実の姉から信用されていないなんて。
その様子を見て、真冬ちゃんは笑いを噛み殺している。うん、半分くらいは君のせいだからね?そして……
「なあ、直登。これはどういうことだ……」
「は、はい?」
さっきで黙って俯いていた水瀬さんが、急に詰め寄ってきた。
ちなみに、姉さんは俺と2人のいざこざを知らないので、目を丸くしていた。
「お前、あん時の約束を忘れたのかぁぁ!!」
「ちょ……違います違います!これはそういうんじゃ……!」
*******
ここで少し話を遡ることにしよう。
あの校門でのあれこれの後、俺達は間を取って、喫茶店で3人で話をすることにした。
もちろん、冷えきった空気なのは言うまでもない。こんな空気を味わったのは、父さんがキャバクラに行った事が母さんにバレた時以来だ。
そんなひたすら気まずい空気の中、水瀬さんが一番に口を開いた。
「そろそろ6時になるけど、中坊は帰らなくていいのか?」
「心配するふりして、さりげなく帰らせようとしないでください。それに、遅くなったらお兄さんに送ってもらいますので」
俺、君の家知らないんだけどね。
苦笑いをしていると、真冬ちゃんは真っ直ぐに水瀬さんを見た。
「それより、お姉さんこそ、結局はお兄さんに何の用なんですか?」
「えっ?ア、アタシは、その……この前スーパーの特売で手伝ってもらったり、弟や妹の遊び相手をしてくれたお礼を……って、別にいいじゃねえかよ、細かい事は!そっちは大して用はないんだろ?」
「いいえ。そんなことはありません。お兄さんと話す時間は、私にとって大事な時間です。既に一週間のルーティンに組み込まれています。毎朝鯖の塩焼きを食べるのと同じです」
「知らねえよ」
確かに。それは知らない。てか、なんだそのルーティン。毎朝カレー食うとかを某プロ野球選手からパクったのか。
すると、周りの視線がこちらに向いている事に気づいた。
「何あれ。修羅場?」
「どうやら二股っほいな」
「マジかよ。何であんな美人と美少女があんなのに……」
……おい。どういう事だ。なんで俺だけダメージ喰らってんだよ。理不尽すぎだろ。
真冬ちゃんは周りの視線など気にしておらず、水瀬さんは片っ端から睨み返していた。なんだ、この対極のリアクション……俺も見習い……たくはないな。
胃がキリキリ痛むような錯覚に、こっそり溜め息を吐くと、ようやく注文したホットココアが来た。
「お待たせしました~……少年、しっかり向き合えよ」
何故か店員のお姉さんに、ガッツポーズとウインクのセットをもらえた。なるほど、これがこの店のスペシャリテか。
すると、二人の視線がこちらに向いていた。
「「…………」」
「な、何でしょうか?」
「「別に」」
完全にシンクロしやがった。間違いなくこの二人仲良いだろ!?そうなんだろ!?おら、さっさと仲直りしろや!
実際はそんな事を口に出す勇気はないので、ホットココアに口をつけると、優しい甘味が気持ちを落ち着かせてくれる気がした。
二人もそれぞれ、真冬ちゃんはカフェオレ、水瀬さんはブレンドコーヒーに口をつけ、聞いてるほうがじんとくるような甘い吐息を漏らした。
そして、気を取り直したのか、水瀬さんは「じゃあ」と落ち着いたトーンで話し始めた。
「ひとまず……今週は直登を譲ってくれねえか。ウチのチビ達が会いたがってるんだ」
「わかりました。いいですよ」
「よくないよ!?俺にもデートとか予定が……」
「「彼女いないのに?」」
「おい、二人とも実は裏で繋がってんだろ!?白状しろ!!」
*******
「直君……いつの間にか大人になってたんだね。びっくりだよ……」
「いやいや、誤解。誤解もいいところだから」
今の話のどこに大人な要素があるというのか。まあ、姉さんはピュアだから仕方ないけど。
ちなみに、エロ本など所持して姉さんに見つかったら、どうなるかなんて想像もつかないくらいやばい。
それよりやばいのは、水瀬さんが至近距離まで近づき、じっと俺を睨みつけている事だ。
ここまでくると、怖いというより、綺麗な顔を遠慮なく近づけてくる無防備さに胸が高鳴る。さらさらの金髪。ぱっちりと大きな目。すらりと形のいい鼻。滑らかで柔らかそうな白い肌。そして、甘い香りと口調に合わない可愛らしい唇。ぶっちゃけ理性を削る凶器でしかない。
彼女は俺の鼻先に吐息をかけながら話を続けた。
「今週はアタシに付き合うって言ったよな?も、もも、もしかして、もう……!」
「いや、それは……」
「今日はたまたま遊びに来ただけですよ。それに、今のは誤解だって説明したじゃないですか……このムッツリスケベ」
「…………はあ!?だ、だ、誰が!」
真冬ちゃんは、顔を真っ赤にしている水瀬さんの横を通り抜け、さらなる爆弾を投下した。
「じゃあ、お兄さん。この誰かに似た金髪つり目のグラマーなお姉さんの写真集は借りていきますね」
「はっ!?」
「なっ!?」
何言ってんの、この子!?
そう思った時、既に時は遅く、しらっとした目を向けてくる姉さんの隣で、水瀬さんが顔を真っ赤にして、口をぱくぱくさせていた。
「ちょっ、お、おま……お前……しゃ、写真?え?」
いかん、処理落ちした機械みたいだ。なんか目の焦点が合ってない。
……とりあえず確実なのはただ二つ。
この誤解(?)を解くのは面倒な事と、真冬ちゃんは小悪魔じゃなく悪魔な事だ。
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