大賢者は剣士がしたい

水止 鏡明

VSスザク・・・決着

「相変わらずクール気取ってるんだねぇ」

 スザクと戦っているイリュウが声を掛けている。



「ふん、いつもはお前がやる気ないくせにどうした今日は元気だな」

 スザクはイリュウとは何度か戦っているようで黒いスライムが見えているわけではないが攻撃や防御には対応していた。



「今日はみんなで勝つって約束したんだよ。それにおれはもう昔のおれじゃない。君を倒して名実ともにおれたち前衛組が勝たせてもらうよ」

 そう言って多彩な攻撃を繰り出し詰めていくイリュウ。



「そう簡単に行くとでも? フレイマ・ピラー」

 スザク手前まで詰め寄ったイリュウの前に大きな火柱が立ち上がる。

 イリュウは勢いを止め一旦引く



「クソあと少しだったのに」



「あと少しだと? ここまで追い詰められているのがわからんのか」

 スザクは詠唱無しで手を下から上に上げる動作をする。

 すると先程の火柱があたり一面に出現した。

 場の空気も一気に温度を上げ息苦しくなっている。



「おれは空間を支配する。この炎を耐えてみろ」

 そう言うと火柱を操りイリュウに向かって攻撃してきた。



 イリュウは体を捻り次から次へと向かってくる火柱を避けながら動いている。

 スザクも逃げれない場所へと追い込むような攻撃を繰り出すがイリュウもそれに気づき挟まれない位置をうまいこと探して逃げている。



 しかし息苦しさからか動きが悪くなってくるイリュウ。逃げるのにも限界が来ていた。

 更に火柱を出して攻撃してくるスザク、イリュウは一か八か賭けに出る。

 引いたと見せかけ火柱の死角からスザクに向かって突っ込んだ。



「その程度読んでいたぞ」

 スザクはそう言って目の前に火柱を出現させた。



「おれも読んでたよ」

 その火柱ができるのをイリュウは読んでいた。

 イリュウを止められると油断したスザクに火柱もろとも大剣で斬りつける。



「生意気な捨て身か」

 スザク自身を炎で纏い直撃は免れたようだが肩からバッサリ切られ血しぶきを上げ後ろに吹っ飛ぶスザク



「どうだ効いただろ?」

 炎柱もろとも斬ったが炎には巻き込まれこちらもひどい傷を負っている。



「おれにここまで傷をつけるとはな」

 スザクは切れて出血している部分を指でなぞった。

 すると切れていた部分が焼かれ、ジューと音を立て傷口を塞いだ。

「おれは熱さを感じないこの程度どうってことないのだよ」



 ダメージで言うとイリュウのほうが大きいようだった。

「フレイマ・レイン」

 火の粉を空から降り注ぎイリュウを襲う。



 イリュウは剣を分離させ危ないものだけを切りつけ避ける。

「フレイマ・レディー……アインス、ツヴァイ、ドライ、フィアー、フュンフ!」

 避けいる間にスザクが詠唱していた。

 試験で使った上級5連魔法だった。



「チッ」

 イリュウは舌を鳴らした。

 そして大きな炎がイリュウを巻き込んみ爆発した。



 うつ伏せに倒れ動かなくなったイリュウ

 スザクはギリギリのところでイリュウが投げつけた剣が横腹を切りつけ出血していた。

 またその傷口を焼き出血を止める。しかし出血量が多かったのか膝をつく。



「悪いがおれの勝ちだ」

 そういうスザク



「もう負けないそう誓ったんだ」

 イリュウはボロボロのからだを起こそうとしていた。



「残念だが辞めておけお前の今の状況、すべての魔力が回復にまわっている。次攻撃を受けたら防御が間に合わないぞ」

 黒いスライムは回復に専念するようにイリュウを守っていた。

 スザクは手を上げイリュウに向かって詠唱をしようとした瞬間スザクの前に何かが飛んできた。



 ズザザザザー

 その何かはスザクの前に転がり止まった。

「ジヴァか? 誰にやられた」

「カハッ……悪いしくった、ルーシュと召喚魔獣がこっちに来てる」

「召喚魔獣? あいついらんことを」



 ギャーオ!!

 すぐにディアボロの声が聞こえてきた。

「おっいたいた、スザクお前らのものだろこいつ返すよ」

 俺がディアボロと戦っているジヴァのスキを突き吹っ飛ばし、こいつをスザクの前に引っ張ってきた。



「ルーシュ? やっと帰ってきたか」

 立ち上がるのが精一杯のイリュウ



「イリュウかスザクと互角か? だいぶダメージ受けているな」

「いやまだあいつのほうが元気だ。もう少しやれると思ったんだがな」



 ギャーオ!!

 ディアボロはジヴァと俺の攻撃で大分機嫌が悪くなっていた。尻尾を振り回しながら地形を変えるほど暴れ狂いおれたちの間に割って入ってきた。



「そろそろ邪魔だな」

 俺は指を構え少し溜めた。



「お前に用はない。フレイマ・ピラー・エクスプロージョン」



 スザクもディアボロに向かって詠唱していた。

 周囲にあった火柱が集まりディアボロを包み込み大きな爆発を起こす。

 パチンッ

 それと同時に俺が指を鳴らした。

 火花と斬撃の風で花火のように爆発が起こった

 ディアボロは大きな声を上げ真っ黒になりその場に倒れ跡形もなく消えていった。



「イリュウまだ戦えるか? 時間がない」

「わかってるあいつを倒す」



「ジヴァやれそうか?」

「悪い立つのが精一杯だ」



 お互いに2:2だが1人づつは動けそうにない最後は俺がケリをつけるべきということか。



「待てまだ終わってねぇよ」

 後ろから声がした。

「パーティーはちゃんと呼んでよね」

「一発ぐらい殴らせろ」



 ジャックを始めリリス、ロックも合流した。

「これで5:2だ、スザク諦めろ」

 ジャックが言う。

「リントにリカルナが負けたのか?」

 少し焦っている表情になるスザク



「ジャックにリリスそれにロックまで良く無事で」

 俺は3人に近づいた。

 俺を見て安心したのか3人共近づく前に倒れてしまった。



「おいっ大丈夫か? もう少し頑張れ」

「わりぃ限界かも……でもお前がいるなら安心だ」

「ルーシュわたし頑張ったよあとはちゃんと決着着けてね」

「全員勝ったんだな、よかった」

 そう言ってそのまま3人共消えていった。



「限界だったのか? しかしよくここまで来たものだ。どうするルーシュ2:2だケリつけようじゃないか」

「ああ、お前を倒して前衛が勝つ!」

 パチンッ

 先に仕掛けたのは俺だ。

 スザクはすぐ反応し後ろに下がる。



 スザクも手を振り火柱を操って攻撃してくる。

 パチンッ

 指を上から下に降ろし火柱を真っ二つにする。



「どうしたスザクその程度か?」

「うるさい。フレイマ・エクスプロージョン」

 火柱をさっきディアボロを倒すのに消費してしまった分、数が少なく威力が小さい。

 しかし各火柱を次々と爆発させ動きを封じつつ攻撃してきた。



「倍ほどの威力なら止められたかもな」

 俺は上に飛び上がりスザクの周りに狙いを定めた。

 いくぞパチンッ

 スザクの周囲を斬撃が襲う



「まだだ、フレイマ・イラプション」

 そう唱え地面に手を付けるとスザクの下からマグマが吹き出してきた。

 斬撃がすべて止められる。



「何だよそれすげーの使えるな」

「お前には負けるわけにはいかない。ラヴァ・ナイト」

 スザクが唱えると溢れているマグマが騎士になり襲ってくる。



「早いが!」

 パチンッ

 騎士の攻撃をかいくぐり指を鳴らす。

 マグマが飛び散り消滅する。



 その間に魔力を高めたスザクが上級魔法を詠唱する

「ラヴァ・ディオ」

 マグマが集まり大きな魔神が生まれる。



「この短時間にここまでの魔力を溜められるか」

 俺は魔神の攻撃を避けながら狙いを定めていた。

「でかいし熱い。めんどくさいなこいつ」

 パチンっ

 魔神の腕を吹き飛ばす。

 少し動きが鈍ったようだった。

「もういっちょ」

 パチンッ

 同じ方の足を吹き飛ばす。



「これでも勝てないのか?」

 魔神が追い込まれるにつれ焦るスザク



「ディオ・レイン」

 魔神の身体からマグマが降り注ぐ



「細かいのは鬱陶しいな」

 俺は細かいのは腕に巻き付いた武器ベンテンディアに任せスザクと魔神が直線に入いるように誘導していた。

「あっつ……」

 《ベンテンディア》で防ぐがマグマの細かいのが身体に当たる。

 俺は魔神とスザクが直線に入るのを確認するとアーサー戦で使用した突きのような軌道の斬撃を使う。

 刀を抜くように腕を振り抜き指を鳴らす。

 パチンッ



「しまっ……」

 スザクはギリギリのところで気づいたようだったが斬撃のほうが早かった。

 魔神の土手っ腹には大きな穴があいた。

 スザクはジヴァを守りながら戦っていたので側に居たジヴァもろとも巻き込んだ斬撃が2人を切りつけていた。

 スザクはその場に倒れ込んだ。



 ジヴァの方を見ながら

「すまないな守れなかった」

「おれこそ悪い足手まといだったな」

 そう言ってジヴァは消えていった。



「ふぅ」

 おれは一息ついた。





「スザクおれたちの勝ちだ。悪いが退場してもらうぞ」

 指を構える。

「あぁ完敗だ」

 パチンッ



 スザクが居た場所は砂埃がたった。

 ビィィィィィィィィィィ

 それと同時に終了の笛がなった。

 俺とイリュウが残っているこっちは2人向こうはスザクも退場し0人

 完全勝利だ。



「危なかったなぁスザク」

 直ぐ側で声が聞こえた。



「まて誰だ!?」

 気づかなかった、スザク以外に誰かが居た。

 砂ホコリが収まってくる。



「はぁお前居たなら戦えよ」

 スザクが誰かに声を掛けている。

「いやいやあれは参加できへんて巻き込まれて一発退場やわ」

 そこにいたのは学園3位リカルナだった。



「なんでお前ここにいる? さっきリリスもここにいたんだぞ」

 俺はこの状況がわからなかった。このままだと引き分けだ。



「へっへ~ん。あんなお嬢ちゃんに負けるかいな。ちゃんと傀儡使って隠れてたんよ。あの子はもう消えそうだったからほっといたわけ。戦うか見守るか迷ったんやけどレベル高すぎたで最後まで待機しとってんで、正解やったな」

「よくやった。実質負けだが名目上引き分けだなルーシュ」

 スザクは少しホッとしたようだった。



 空に映し出される試合結果

 ピコンッ

 2:3

 勝者 前衛チーム



「なっ」

「えぇええぇぇ、なんでなん? 誰残っとんの?」

 スザクとリカルナは驚いてこっちを見てきた。



「いやわからん本当に誰だ?」

 俺はイリュウを見たがイリュウも首を振っていた。



 ピコン

 選手一覧が映し出された。

 後衛チーム

 ・スザク

 ・リカルナ

 以上2名

 前衛チーム 生存者

 ・ルーシュ

 ・イリュウ

 ・デン

 以上3名



「で、で、で、デン君!!」

 俺は驚いた。

 ジャックと一緒にぶっ倒れていたデン君がしぶとく生き残っていたようだった。

「あいつ……」

 イリュウも苦笑している。



「ふはは、まさかあいつが残るとはな因果報応だな」

 スザクは笑っている

「あちゃー残りおらんか捜索はしてたんやけどほとんど虫の息やったんやな」

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