大賢者は剣士がしたい

水止 鏡明

VSリリス・・・VSロック

「もぉなんで死なないのよっ!」

 怒っているのはリリスだった。

 学園3位《不死のリカルナ》とそう呼ばれている女性だった。

 見た目は体調が悪そうな青白い顔に、少しボサボサした頭に清潔感の少ない感じだが、ちゃんとしたら美人だという噂もある女性。

 性格はおとなしく、冷静、慎重とミスをしないタイプでリリスにとってはやりにくい人物だ。



「あなたの攻撃厄介やね。氷による足止め、範囲攻撃、それにスピード、どれをとってもその年齢にはふさわしくないね。さすがガル様のご息女といったところやな」

「何よ一発も食らってないくせに! そもそもあんた気持ち悪いっ」

「そう言われても……そういう能力やでな」



 そう言うとリカルナは詠唱する。

「フォレスティア・カカシ」



 リカルナの足から木の根っこのようなものが広がりその先々で《木傀儡》リカルナの見た目っぽいした木の人形が生まれてくる。

 その動きは単純だがどうも見てもゾンビのようだ。



「きゃーこっちこないで」



 10体ほどに囲まれ逃げまとうリリス。倒しても倒してもきりがないのと見た目がアレなので完全にペースを奪われている。

 それに本体と思わしきものもすぐに再生するという始末、どこに本人がいてどう対処すれば良いのか、わからなくなっていた。



「このままじゃ消耗して負ける」

「そうやね。君は若い、自分の能力に体がついてきていないんやね。」



 次はリカルナの手から根っこが生えてムチのように攻撃してきた。

 リリスはギリギリで避けるが。足が絡まり転ぶそして一発貰ってしまった。



「可愛い女の子を叩くの嫌やけど戦いやし仕方ないよね。手加減無しでいくで」



 木の根っこでリリスを絡み取り、大きな丸太に変形させた腕でリリスを殴り飛ばす。

 ガードも追いつけずクリーンヒットして吹き飛ぶリリス。仰向けのまま倒れ込みそのまま動かなくなってしまった。

「ルーシュごめん勝てなかったよ」

「ん、なんか言った?」



 ぼそっと声に出てしまったが聞こえるほど直ぐ側まで木傀儡が近づいてきている。



「あと勉強のために覚えといてな。君の首に種子を植えさせてもらってん。いつもより消耗が大きかったと気づかんかった? じわじわ君の体力、魔力を放出させてもらっててんで。自分のことも大切やけど相手のこともしっかりと見なあかんで。」

 首元を指差してリリスに教えるリカルナ



「完敗だね」

「だね。ルーシュも威勢がいいからどんなメンバー連れてきたんかと思ったら、これだけ戦力差があるとはがっかりやわ。実際ルーシュも警戒するほどでもない男なんかな? 前衛は前衛らしく私らの囮になっていれば良いんやで」



 そのままとどめを刺そううとするリリス

「……ち、が」

「まだ喋るん?」

「違うよ……私達はもっとあなた達と仲良くパーティー組んで、お互いに助け合うもっと強いパーティーを作ろうとしている。あんたたちみたいに勝ったからって後衛組を囮になんかしないっ」



 そう言って種子を引きちぎって立ち上がるリリス。

「残念だけど、魔力源わかったよ。木だしやっぱり根っこ……地面の下だったね」



 そう言って剣を振りかざして地面を斬るリリス

 深さは3mほど10mの直線を斬った。

 その勢いのまま斬撃を木傀儡の方へ飛ばした。

 その木傀儡も攻撃は当たったようだが2体ほどにしか倒せず。他はかすった程度にしかダメージが無かった。



「当たらへんかったなぁ。ほんじゃさいなら」

 木傀儡がじわじわ周囲を囲み逃げ場をなくしてくる。

 余裕の笑みを浮かべリリスにマルタで殴りつけようとするリカルナ

「私の氷は……爆ぜる」

 パチン



「うそうそ何が起こってんの?」

 優勢だと思われたリカルナが氷リ動けなくなり焦る。



 さっきリリスが斬った地面と傷を負った木傀儡が凍っていた、その部分が一気に収縮し爆発した。それと同時に気を失い後ろに倒れるリリス。

 地面は長さ15m深さ5m幅4mほどの大きな溝になっていた。

 木傀儡も斬撃がかすめた程度の物も全て消え失せその溝の奥底から1人倒れている影があった。





「隠れずに出てこい」

 ロックが対峙しているのは学園5位の男ジヴァ

 スザクのメンバーで戦闘好きな性格の持ち主だ。

 一番後衛職らしい能力でバランスが良くリーダーっぽい熱い男だ。



 ここまでスザクのメンバーは相性のいい相手を選んで戦っていた。

 手数やスピードがメインのジャックに対しては空間魔法で認識を鈍らせるリント

 魔力消費の大きい広範囲のリリスには冷静で消耗戦の得意なリカルナ

 多様な攻撃を持ち高防御で突き進むロックには更に多様な攻撃を備えるジヴァ

 結果はどうあれ後衛組のほうが一枚上手だった。



「これが俺たち後衛の戦い方だ。そんな化け物みたいなやつに真正面からやり合うかよ」

「出てこないなら探すぞ。オープン・アースポインタ」



 両手を広げ広範囲の索敵を始めるロック



「クローナ・ツェーン」

 分身を駆使し10体を索敵範囲に紛れ込ますジヴァ



「あぁもお、わからん。てめぇやる気あんのか」

「やる気はあるよ。それにお前のほうがダメージ大きいのわかってる?」



 ロックが探している間にジヴァは見えない場所からの攻撃を幾度となく繰り返し自慢の岩の鎧はボロボロだった。いつ壊れてもおかしくないほど亀裂ができている。



「アースロック・オーバー」



 ロックはボロボロの鎧を吹き飛ばし索敵に引っかかった箇所に向かって攻撃した。

 2体ほど消滅したが本体ではないようだ。

「ウィンディア・ゴーレム」

 そのまま詠唱するロック次は風をまとい素早く移動して更に分身を倒していく。



「次は風かい? 相性は知ってるよね? 岩は水に、水は風に、風は火に、火は岩にこれは上位魔法でも同じ。鋼は氷に、氷は雷に、雷は炎に、炎は鋼に。けど風に炎はどうなると思う? フレイマ・フェネクス」

 風の鎧で飛び回るロック6体目の分身を倒したところに鳥の形をした炎魔法がやって来た。



「くそぉアースガイア・ニーディア」

 岩を地面から針のように突き出し炎の鳥を攻撃する。

 しかしうまいこと避けられてしまう。

「ならこれならどうだ?」

 ロックは自分の周りを岩で固めた。



「炎に岩じゃダメだろ」

 炎の鳥は岩を砕き風をまとっていたロックもろとも焼き尽くした。



「アイスア・ナベリウス」

 ジヴァは氷の三首の狼を作り出し追い打ちをかける。



 狼に噛みつかれその部分が凍ってしまうロック

 その場で崩れ動かなくなってしまった。



 その場に大きな音とともに大きな影が寄ってくる。

 ギャーオ!!

 ロックたちの側にきたのはリントを踏みつけたモンスター《ディアボロ》だった。



「おいおいあいつこんなもんまで召喚してたのか? 見境ないから辞めておけって言ったのに」

 ディアボロに攻撃されるジヴァ

「フレイマ・フェネクス」

 もう一度炎の鳥の攻撃を放つジヴァ

 それはディアボロに直撃し少しひるませることはできた。

「しっかし、硬てぇなぁこいつ」

 怯んだだけで暴れているのは止められなかった。むしろ狙われる結果になって焦るジヴァ



「な、何なんだこいつ……」

 倒れているロックが喋る。

「おっ次はロックか。大丈夫か?なかなかひどくやられたな」

「ルーシュか下は無事に終わったみたいだがあれはお前のせいだな」

「ばれた? なんかギリギリのところで後衛の1人に召喚されちまった。まぁ誰構わずだからスザクのとこ持っていく途中だったんだけどジャックのとこと、お前のとこ経由してるみたいだわ」

「まったく邪魔しやがって……」

「そのボロボロでよく言うわ」

「すまんな……」

「急にどうした?」

「リーダーにまでしてもらったのにおれはいつも負けばっかりだ。何も期待に答えられていない」

「気にすんな、お前はお前だ、リーダーに必要なものは揃ってる。お前の一言はみんなに勇気を与える。あとはもっと訓練だな」

「お前らみたいな化け物にはなれねぇよ」



 暴れるディアボロをこちらに巻き込もうとしているジヴァ

「なんとかなるよ。悪いけど俺はいくぞ」



 そう言ってディアボロを誘導するジヴァを止めに来た。

「おいお前あっちには俺の仲間がいるんだ。ここで消えてもらうぞ」

「ルーシュか? と言うことは下は全滅か」

 ルーシュと対峙するジヴァ

 ラスト15分は残り人数が表示されない仕様になっていて最後に確認できたのは

 6:7

 俺が3人やってきたから最低でも6:4

 こっちが有利だがジャックたちが消えてしまっていたらわからない状況だった。


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