ゴブリンロード
第168話 矜持
「それで今更だけれど・・・ノエンの実力ってどんなものなんだ?ぶしつけな聞き方ですまない」
ユウトはそれまでのノエンの立ち振る舞いとその大柄な体格からそれなりの戦闘能力を携えているだろうということは想像している。
「ラーラ殿が女性として魔術枷を付けたまま都市の外で精力的に活動する限り、護衛を務めているノエン殿の実力にもそれに見合ったものだろう。使用している武器はそのロングソードか?」
デイタスもユウトに続いて自身の考えを言ってユウトはノエンの腰に下げられた剣を見た。
「ロングソードと左手に防御用の魔術短剣で戦います。実力はどうでしょうか。対人戦はそれなりですが、魔物との戦闘経験はありません」
ノエンは真剣な表情でそう言いながら短剣を取り出してユウトとデイタスに見せる。
「ほう!二刀流。これは珍しい。差し支えなければ師はどなたか?ザイデラン卿が有名ではあったが」
デイタスが目を輝かせながらノエンに尋ねた。
「そうですね。僕はザイデラン卿の孫弟子にあたります。師弟というほど強い関係ではありませんが」
ノエンの返答にデイタスは「なるほど!」と気持ちを高揚させている。ユウトはノエンが見せた短剣が気になっていた。
ユウトが見るにノエンの短剣の構造は攻撃力を増すためのユウトの使い慣れた魔剣とは違って見える。より複雑でディゼルの魔術式盾を連想させた。
ラーラの護衛を目的にするのなら防御力を伸ばした方が都合が良く、理に適っているとユウトは思う。それだけリナ達ハイゴブリンを守るのにも期待できると考えた。
「ユウト。これなら期待できるぞ。武人として手合わせを願いたいくらいだ」
デイタスは鼻息荒く嬉しそうにユウトに話しかける。
「うん、確かに。その短剣を使いこなせるなら十分な実力があると思うよ」
ユウトはデイタスに答えつつ、ノエンを見て頷いた。
モリードのラーラへの報告はユウト達が話している間も続いている。ユウトが横目にその様子を見ていると二人はユウト用の大魔剣の説明からデイタス用の魔術式大剣へと移っていた。
モリードが身振り手振りでわたわたとしつつラーラはじっと剣を見つめている。そして頭をモリードの方へと動かし、何かを言うとモリードはほっとしたように肩の力が抜けた。
それから二人はユウト達の方へと歩いてくる。涼しい顔をしたラーラに少し遅れて若干憔悴してみえるモリードが着いてきていた。
「進捗は聞き終わったわ」
「僕の方も話しは終わったよ。明日は前線へ出ることになった」
ノエンは立ち上がってラーラに向き直って答える。
「そう。それは良かったわ。ありがとうユウト。ノエンの願いを聞いてくれて。足手まといにはならないわ」
ラーラはユウトを見ながら話しかけた。
「こちらとしても助かる。ありがたい申し出だよ」
ユウトはそう答えながら立ち上がる。
「それじゃあ、そろそろ寝床へ戻るよ。モリードはがんばって、デイタスはまた明日」
「私たちも失礼するわ」
ユウトとラーラ、ノエンはモリードとデイタスにそう言って仮設工房を後にした。
モリードとデイタスに見送られながらユウト達は入口を出る。出てすぐラーラが何か思いだしたようにユウトに声を掛けてきた。
「そうそう。ラトムからの伝言通り、メルに会って話をしたわ」
「さすがに速いな。それで、こちらの提案の返事はどうする?」
先に出ていたユウトはラーラに振り向いて尋ねる。
「確かに面倒もあるけれど、魅力的な提案ではある。ただし」
ラーラはあごに手を当て少しの間を空けて続けた。
「数がどれほど揃えられるか、ね。それ次第。具体的な数は市場に出してみなければわからないにしても生産量がある程度なければ値がついても採算が取れない」
冷たい声でラーラは淡々と語る。
「うーん、つまりはオレのがんばり次第ということか」
ユウトはそう言ってふっと笑った。
それを見てすぐにノエンが動く。ラーラの耳元で「姉さま」と小さくささやいた。
ユウトはその意味が分からなかったが話は終わった思い、前へ向き直ろうとする。その時ラーラはハッとしてユウトを引き留めた。
「・・・待って、まずは信頼に答えるべきだったわ。メルとあのクロネコテンだけでも私が面倒をみます。私もユウトに賭けることにするわ」
にやりと頼もしくラーラは笑顔で言った。
「ほんとにいいのか?どうしてまた」
「損失を回避するだけなら商売人は誰でもできる。分の悪い賭けであっても勝つための手段を考え実行するのが商人としての私の矜持。そしてなによりこの件はおもしろい。それだけでこの賭けに挑む価値はある」
先ほどまでも冷たい声と打って変わり、ラーラの言葉には熱がこもっている。ユウトは見上げるラーラの後ろで力強く頷いているノエンを見て小さく頷いた。
「わかった。ならお願いするよ。クエストラ商会の力を貸してくれ」
そう言ってユウトは手を差し伸べる。ラーラは躊躇することなくユウトの手を握った。そして離れた後、ユウトはそのままラーラの後ろに控えるノエンに向けて手を伸ばす。ノエンは一瞬ためらったがユウトの手を確かに握った。
そしてユウト達は二手に別れて進みだす。人知れず、これまでのやり取りの結果にセブルはほっと息をついていた。
ユウトはそれまでのノエンの立ち振る舞いとその大柄な体格からそれなりの戦闘能力を携えているだろうということは想像している。
「ラーラ殿が女性として魔術枷を付けたまま都市の外で精力的に活動する限り、護衛を務めているノエン殿の実力にもそれに見合ったものだろう。使用している武器はそのロングソードか?」
デイタスもユウトに続いて自身の考えを言ってユウトはノエンの腰に下げられた剣を見た。
「ロングソードと左手に防御用の魔術短剣で戦います。実力はどうでしょうか。対人戦はそれなりですが、魔物との戦闘経験はありません」
ノエンは真剣な表情でそう言いながら短剣を取り出してユウトとデイタスに見せる。
「ほう!二刀流。これは珍しい。差し支えなければ師はどなたか?ザイデラン卿が有名ではあったが」
デイタスが目を輝かせながらノエンに尋ねた。
「そうですね。僕はザイデラン卿の孫弟子にあたります。師弟というほど強い関係ではありませんが」
ノエンの返答にデイタスは「なるほど!」と気持ちを高揚させている。ユウトはノエンが見せた短剣が気になっていた。
ユウトが見るにノエンの短剣の構造は攻撃力を増すためのユウトの使い慣れた魔剣とは違って見える。より複雑でディゼルの魔術式盾を連想させた。
ラーラの護衛を目的にするのなら防御力を伸ばした方が都合が良く、理に適っているとユウトは思う。それだけリナ達ハイゴブリンを守るのにも期待できると考えた。
「ユウト。これなら期待できるぞ。武人として手合わせを願いたいくらいだ」
デイタスは鼻息荒く嬉しそうにユウトに話しかける。
「うん、確かに。その短剣を使いこなせるなら十分な実力があると思うよ」
ユウトはデイタスに答えつつ、ノエンを見て頷いた。
モリードのラーラへの報告はユウト達が話している間も続いている。ユウトが横目にその様子を見ていると二人はユウト用の大魔剣の説明からデイタス用の魔術式大剣へと移っていた。
モリードが身振り手振りでわたわたとしつつラーラはじっと剣を見つめている。そして頭をモリードの方へと動かし、何かを言うとモリードはほっとしたように肩の力が抜けた。
それから二人はユウト達の方へと歩いてくる。涼しい顔をしたラーラに少し遅れて若干憔悴してみえるモリードが着いてきていた。
「進捗は聞き終わったわ」
「僕の方も話しは終わったよ。明日は前線へ出ることになった」
ノエンは立ち上がってラーラに向き直って答える。
「そう。それは良かったわ。ありがとうユウト。ノエンの願いを聞いてくれて。足手まといにはならないわ」
ラーラはユウトを見ながら話しかけた。
「こちらとしても助かる。ありがたい申し出だよ」
ユウトはそう答えながら立ち上がる。
「それじゃあ、そろそろ寝床へ戻るよ。モリードはがんばって、デイタスはまた明日」
「私たちも失礼するわ」
ユウトとラーラ、ノエンはモリードとデイタスにそう言って仮設工房を後にした。
モリードとデイタスに見送られながらユウト達は入口を出る。出てすぐラーラが何か思いだしたようにユウトに声を掛けてきた。
「そうそう。ラトムからの伝言通り、メルに会って話をしたわ」
「さすがに速いな。それで、こちらの提案の返事はどうする?」
先に出ていたユウトはラーラに振り向いて尋ねる。
「確かに面倒もあるけれど、魅力的な提案ではある。ただし」
ラーラはあごに手を当て少しの間を空けて続けた。
「数がどれほど揃えられるか、ね。それ次第。具体的な数は市場に出してみなければわからないにしても生産量がある程度なければ値がついても採算が取れない」
冷たい声でラーラは淡々と語る。
「うーん、つまりはオレのがんばり次第ということか」
ユウトはそう言ってふっと笑った。
それを見てすぐにノエンが動く。ラーラの耳元で「姉さま」と小さくささやいた。
ユウトはその意味が分からなかったが話は終わった思い、前へ向き直ろうとする。その時ラーラはハッとしてユウトを引き留めた。
「・・・待って、まずは信頼に答えるべきだったわ。メルとあのクロネコテンだけでも私が面倒をみます。私もユウトに賭けることにするわ」
にやりと頼もしくラーラは笑顔で言った。
「ほんとにいいのか?どうしてまた」
「損失を回避するだけなら商売人は誰でもできる。分の悪い賭けであっても勝つための手段を考え実行するのが商人としての私の矜持。そしてなによりこの件はおもしろい。それだけでこの賭けに挑む価値はある」
先ほどまでも冷たい声と打って変わり、ラーラの言葉には熱がこもっている。ユウトは見上げるラーラの後ろで力強く頷いているノエンを見て小さく頷いた。
「わかった。ならお願いするよ。クエストラ商会の力を貸してくれ」
そう言ってユウトは手を差し伸べる。ラーラは躊躇することなくユウトの手を握った。そして離れた後、ユウトはそのままラーラの後ろに控えるノエンに向けて手を伸ばす。ノエンは一瞬ためらったがユウトの手を確かに握った。
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