おれたち天使の部屋の極悪兄弟

文戸玲

兄と弟


 大して学もなく,何かに突出した才能があるわけでもない底辺にいる人間には世知辛い世の中だ。その日その日をなんとか食っていくために地道に働いては国に税金として吸い取られる。大金持ちには生きにくいと言われるが,車を持てば自動車税に数年に一回は車検,家を持てば固定資産税と,年度の始めに母親がため息をつきながら何かしらの通知にため息をついているのを見てからいろいろ調べた結果,庶民にもそれなりに負担はかかる。だれにとっても生きにくい世の中だ。
 部屋に戻って達也の顔を見ると,盗んだギフトカードでグローブを買ってやるとつい言いたくなってしまう。生まれた順番では兄貴ではあるが、頼りがいもないし思慮の欠片もない。そんな兄を支えてきたという自負はあったが,喜ぶ顔を見るのが好きだった。これじゃあどっちが兄貴かわかりゃしない。


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