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Pt.Cracker

【不気味!紫吹川事件編】第二十六話 不気味な白骨

 グラウンドにピーッと耳を震わせる高い笛の音が鳴り響いた。
 今日の体育の種目は隣のクラスとサッカーの対抗試合。鬱々とした気分を晴らすには丁度良いと、俺は思いっきり相手チームが転がしていたサッカーボールを横から奪い取りゴール目掛けて蹴り飛ばした!
 蹴り飛ばしたボールはゴール枠にぶつかり、金属音を立てて激しく揺れたかと思うとボールは上空に投げ出され、外れの杉林へと落ちていった。
 生徒達は呆然とボールの消えた杉林を見つめる。
 再び、笛の音が鳴る。

「十分休憩ー! 水分補給忘れるなよ」

 先生は腕時計を見て声を張り上げ、それを合図に生徒達はまばらに動き出す。
 相手チーム方にいた麗人が駆け寄り、挨拶代わりに肩をぶつけた。

「おいおい~陽、力入れ過ぎだって」

「ゴメン、ゴメン。ボール回収してこないとな~」

 流石に外れても杉林までは吹っ飛ばないだろうと思っていたのに、これは苦笑いするしかないなと頭を掻いてボールの落ちた場所へ走った。「俺も探す」と麗人も付いて来た。
 杉林の向こう側はススキの生い茂った空き地があり、その向こうには紫吹川しぶきがわという川が流れている。
 この紫吹川には「位の高い武家の娘と身分の低い百姓が添い遂げる事叶わず、刀で二人の体を貫き心中した」という眉唾ものの伝説が残っている。
 校内でも有名で、度々ここで女性の霊を目撃したという噂もあり気味悪がって近付く人はほとんどいない。

「よりにもよって、こんな所に落ちるなんてな」

 麗人は楽し気に笑う。つられて俺も笑うが、裏腹に噂通り嫌な空気が漂っているのを感じ取っていた。
 一刻も早くボールを見つけてここを離れようと、一面に広がるススキを掻き分けて地面を覗く作業をかれこれ三分ほど繰り返した。

「お、あった!」

 麗人はボールを見つけたようで、ススキの中を泳ぐように進んで行く。

「うわっ」

 突然、麗人が後ろに倒れ込む。

「大丈夫か?」

 俺は麗人に駆け寄って手を貸した。こんなススキ野じゃ足をとられてしまうのは無理もない。俺だって何度コケそうになった事か。
 麗人は俺の手をつかんでゆっくり立ち直った。

「いてて……今、何かが足を掴んだような」

 そんなわけないよなと笑おうとした麗人は足元に視線を動かすと、瞬時にその表情を曇らせ、固まった。

「どうした?」

 訊ねると、麗人は震える指で地面を指した。
 ……そこには、白骨化した人間の手があった。


                                ◆◇◆◇◆


 放課後、校舎の前にはパトカーと見慣れない車が数台停まり、グラウンドでは警官が事情聴取を行っている姿があった。

「……ふむ。ススキの中でボールを探している最中に発見した、と」

 事情聴取されているのは第一発見者である藤沢麗人と俺だ。
 麗人はあれから珍しく青い顔をして俯いてばかりいる。いつもならちょっとやそっとじゃ落ち込んだ素振りも見せないで冗談のひとつでも言い合う所なのに、必要以外はだんまりだ。白骨遺体に足を掴まれた事は勿論、白骨遺体を見つけてしまったのが余程ショックだったんだろう。
 山辺という警部から続け様に質問が飛ぶ中、問題の杉林の向こうから若い警官が横に駆け寄り、なるべく周囲に聞こえないようにといった配慮なのか、小声で話した。

「他にも三人の遺体が見つかりました」

「そうか。どうも事件のニオイがするな、こりゃ」

 俺達は近い場所に居たせいで、そう話しているのが聞こえてしまったわけだが、遠ざかって話さなかったという事は、それほど聞かれて困る事でもないのかもしれない。

「あの。もう、帰ってもいいですか」

 麗人は暗い声で警部に訊ねた。心なしか、さっきより顔色が悪くなっている。
 警部は「また協力を頼む」と一言言って、片手を挙げて若い警官と話を続けた。
 この調子だともう俺も解放されていいかと、麗人に続いて鞄を下げ、校門を出る。どうせ帰りは途中まで同じだし、気分の悪そうな麗人を一人にするのも悪いと思い、麗人の後ろを歩く。

「麗人、大丈夫か?」

「ああ……うん、ちょっと気分悪くて」

 一瞬、麗人の顔にモヤがかかって見え、俺は目を擦った。
 ……気のせいだよな?

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