世界樹とハネモノ少女 第一部

流川おるたな

第一部 最終話

 試合場中央にアディア国王グラール、女王リディア、剣聖七葉の7人、闘技大会の運営委員会の面々が集結し、優勝者を讃える表彰式の準備が整った。

 運営委員会委員長のパルコという男が司会進行を務め、表彰式開始の挨拶を済ませるとミアを試合場中央に誘導した。

「アディア闘技大会優勝者のミア殿!こちらまで!」

「はい!」

 緊張した面持ちのミアが国王の御前に直立してお辞儀をする。

 観戦客らは試合の時と違い、沈黙を保ちつつ厳かなこの表彰式を見ていた。

 アディア国王グラールが、純金で作られた金の小さな盾を右腕に抱えて話す。

「並々ならぬ多くの強者達を制し、見事優勝を果たしたペタリドの少女ミアよ!貴殿が試合で皆に見せた雄姿を讃え、アディア闘技大会優勝者を証明する黄金の盾をここに与える」

 国王が両手で黄金の盾をミアに差し出す。

「国王様、身に余る光栄です。謹んで受け賜わります」

 ミアはお辞儀をしたあと両手で黄金の盾を受け取り、観戦客に見えるように頭上に掲げた。

「ド!ッワーーーーーーーー!!!」

 観戦客らが大歓声を上げ、賞賛の拍手が暫くのあいだ鳴りやまなかった

 表彰式が無事に終わり、委員長のパルコに控室で待つよう云われたミアは、控室のベッドに横たわっていた。

「コンコン!委員長のパルコです。ミア殿、部屋に入っても大丈夫でしょうか?」

「あ、はい!どうぞ!」

 急いでベッドから飛び起き髪型を整える。

 パルコが従者を連れ二人で控室に入って来た。

「お疲れのところ申し訳ないのですが、賞金1億ギラの受け渡しの相談に来たのです」

 賞金については既に考えていたミアが訊く。

「あの、賞金についてなんですけど、ペタリドの町に住むわたしの母に届けていただくことは可能ですか?」

「…それは可能ですが、賞金の全額をでしょうか?」

 ミアが服のポケットから一通の手紙を取り出しパルコに渡す。

「もちろん全額です。あと、この手紙も一緒に届けて下さい。よろしくお願いします」

「畏まりました。この手紙と賞金が貴方の母上様へ無事に届くよう、厳重に注意して手配致しましょう」

 要件が済み、パルコと従者が部屋を出ようとしたところへ、シャナンが現れ二人と挨拶を交わす。

 そして、二人と入れ替わるようにして部屋へ入って来た。

「いつも突然で申し訳ない。でも早く会いたくて来てしまったよ」

 シャナンの顔を見てミアの表情が笑顔になる。

「お兄ちゃんならいつでも歓迎だよ!」

 闘技場では周りの目があり抱きつくことを止めたミアだったが、ここぞとばかりに抱きついた。

 ミアの頭を優しく撫でながら言う。

「明日の夜、優勝のお祝いをしよう。その時に大事な話しもしたいんだ」
 
 この時のシャナンの表情は重く、何か覚悟を決めたかのような目をしていたのだった。

 第一部 完。

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