世界樹とハネモノ少女 第一部

流川おるたな

城下町ミシル

 ミア達は翌日も朝早くからトーラムを出発する。
 目的の町イザリデまでの道中は30体近くの魔物と遭遇したが、手古摺ることも無く打ち倒して行く。
 夕方になる頃にはイザリデに到着した。

 レクルが町の中をキョロキョロと見渡して言う。

「この町はトーラムより大きいし、もっと都会的な感じがするね」

「アディア城の城下町ミシルから一番近い町だから発展してるのよ」

「ふ~ん。そうなんだね」

 確かにイザリデは城下町ミシルから近く発展していたのだが、大きく発展した理由は他にもあった。
 イザリデの近辺には金の掘れる金山が幾つかあったのである。
 そのため一攫千金を狙って多くの人々集まり、爆発的に大きくなった町だった。
 町並みを観ると良く分かるのだが、この金山で上手く金を掘り当てた人々の建てたであろう豪邸がチラホラ見受けられる。
 そんな町だったので宿屋の料金もトーラムより高めだった。

「どこも本当に料金が高いわねぇ」

 ミアが何軒かの宿屋の料金を比較してぼやく。

「時間も勿体ないし次あたりで決めたらどうかな?お腹も減ってきちゃった」

「そうね。明日は早めにミシルに行きたいし、もう決めちゃおう」

 こうして料金は高めだったが次で見つけた宿屋に泊まり、夕食を済ませて早々に就寝したのだった。
 
 イザリデの町で迎えた朝も天気は良好だった。
 身支度を済ませ、宿屋の馬小屋に繋がれているケインの元へ向かう。

「ケインおはよう!悪いけど今日も頑張って貰うわよ!」

「おはよう。荷物は別としてミア自体は軽いから助かってる。今日は最終目的地みたいだし頑張るよ」

 ケインは張り切っていた。
 イザリデを出発してケインがいつにも増して速く走り続ける。

「ケイン!無理はしなくていいのよ!」

「全然無理はしてないよ。それに到着したら暫くオレはお役御免で休暇だしね」

 実際のところケインの身体が大きいため、レクルのように気軽に連れて回る訳にはいかなかった。
 ミシルに着けば宿屋の馬小屋で過ごしてもらうことになるだろう。

「なんだかごめんね。ケイン」

「何を言ってるんだい。オレは新しい飼主がミアになってとても喜んでいるんだ。さあもっと飛ばすよ!」

 ケインのお陰で昼時にはミシルに着くことが出来た。
 アディア城の城下町であるミシルはブロックで積み上げられた塀で囲まれていて、全体で3箇所ある入り口のどれかの門を通らなければならない。
 門には兵士が必ず2人以上立っているが、平常時の門は常に開放されていて多くの人々が行き来している。
 その門を抜けると他の町とは明らかに違い、理路整然とした街並みが広がっていた。
 ミア達は最初に見つけた宿屋に決めて昼食を済ませる。
 そのあとケインを宿屋の馬小屋に預け、闘技大会の手続きをするためにアディア城へと向かい歩くのだった。 

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