ライトニング、社長の欲を見破る。

社長の甘い言葉に誘惑されそうなライトニング。

　しかし、そんな時コハナからもらった銀の指輪が光る。

　社長もそれに気づく。

「ライトニングさん。その指輪は？」

「ああ、私の趣味です。結婚とかしているわけでも好きな方がいるわけでもないのですよ」

「なるほど」

　これはやばいと感じる。普段ならこれで大手の社長と小さいお店の店長の恋愛に発展するような感じだ。

　しかしライトニングは社長が企んでいることは分かる。

　銀の指輪がそれを教えてくれた。

　指輪はライトニングがコミュニケーションでピンチになったときに光だし、１分間の間だけ相手の心の声を聞くことが出来るようだ。

　社長はライトニングの想像通り、ライトニングと結婚したら、レストラン、ボルテックスを乗っ取って、自分の思うようにアンペア商店街を支配するつもりであった。

　さらにライトニングも予想はしていたが、メカ魔物の黒幕は社長であった。

　ライトニングを含めた６人の料理人は所詮メカ魔物の改造のためのモルモットに過ぎなかった。

　ホテルの地下室や本社の地下ではグロテスクのメカ魔物製造実験が行われている。

　本来なら他のメンバーに伝えたいところである。しかしライトニングは無駄に言ったとしても信じない人は多いだろうし、言いふらすことで社長の手先に命を狙われることだってある。

ライトニングはこれを恐れ、社長には別れの挨拶をする。

「そういうことです。社長のお気持ちは承知いたしました。それでは私は失礼いたします」

「もう帰ってしまうのですか？」

「はい、お詫びをしようと参っただけです。ですからこれ以上の長居は失礼です」

「そんなことはありません。ライトニングさんでよろしければまたいつか」

「私を誘ってくださって嬉しく思います。またご縁がございましたら参ります。それでは失礼いたします」

　ライトニングは部屋を出ると、自分の宿泊部屋へ戻る。

　そこにはラップ戻っており、ベッドで寝ていた。

「ラップ」

「ライトニング」

「戻っていたんだ」

「何もすることがないから」

「そうなの？　さっきまでダークネス社長と会話していた」

「ダークネス社長と？」

「この階の１１９号室のロイヤルルームにいる」

「社長だからそういう部屋にいてもおかしくないよね」

「そうだけど、それって今言うこと？」

「そうだね。言う事じゃないよね」

　ラップは不安で落ち込んでいた。ライトニングが強気で攻めると怯える。

　ライトニングはそんなラップを慰めようとホテル内を一緒にデートしようと誘う。

「そうだ、気分転換で俺とデートしないか？」

「デート！　デートって……」

「何だ？　女の子の俺がいうんだ。別に女が男ナンパしたっていいじゃない」

「それは、そうだけど。男の娘である僕をナンパって」

「いいんだって。俺がラップとデートしたいから」

「そう言われても」

　ライトニングはラップの腕をつかんで部屋を出た。そしてエレベーターで１階へ降りると、広いロビーに行った。

「広いロビーだね。ラップ」

「そりゃあ、そうだろうね。ダークカンパニーホテルはワイズ１番のホテルだからロビーも広いよ」

　賑やかで平和なホテルのロビー。しかしここのホテルの地下にメカ魔物の実験が行われていると知ったらどれだけ居心地が悪いだろうか。

　本来ならさっさとチェックアウトをしてホテルを出たいところであるが、ライトニングはそうしなかった。

　もし早くホテルを出れば、社長に怪しまれると考えたからである。

　今は社長に疑いをかけないようにホテルに留まって朝になったら挨拶をしに行くようにした。

　不安はあっても今はラップと２人っきりの時間を過ごそうと考えた。

　ラップもしばらくして不安が治まり、ライトニングと楽しい時間を過ごすようになった。