招待

ダークカンパニーホテルというワイズの港にあるという巨大ホテル。



　主にお盆休みに訪れる客が多く、プールに入りながら眺めることが出来る海の景色が絶景であるそうだ。



　レストラン、ボルテックスを経営して1週間。豚の魔物の挽肉でハンバーグとオムライス、さらに中華風のオムレツも作ってみるなどして客が増え、銀貨100枚ほどの金を得た。



　さらにアンペア商店街で客が行列になるほどで休む暇もなく、休憩できる時間もない。



　それでもライトニング達はめげずに働いた。休日は水曜と土曜であるためどうにかなるし、生活の心配もいらないが、こうなると人手が欲しいと思う。



　そんなことを思っているライトニングに1人の客が招待状を渡す。



　その客はダークカンパニーの社員のようだった。



「ダークカンパニーさんが俺に何の用かな？　俺は商店街でちっぽけな店で働くだけの一般市民だぞ」



「いえいえ、ライトニングさんの経営するこのボルテックスさんの人気はアンペア商店街だけではなく、ワイズ全体でこの噂は広まっています」



　これはヒーラーの広告だけではなく、レストラン、ボルテックスに来た客が料理の評価をしてくれたおかげでもある。



　1日におよそ1000人は来るレストランボルテックスで朝昼晩と料理を出すということで客は期待し、ダークカンパニーもこのボルテックスの人気に注目したのである。



「招待券は何だ？　裏に何か書かれてあるな。読んでいいのか」



「どうぞ」



　それはダークカンパニーの社長からの招待券であった。内容は、ダークカンパニーホテルで料理店経営の店長による食事会を開く。それで是非ともボルテックスの店長ライトニングには料理店のおすすめの料理を作って、それを社長自ら味わってみたいという内容だ。



　この食事会をやる日は明後日。しかしせっかくダークカンパニーホテルに行けるのにプールなどを楽しめなくては意味がないとライトニングは思い、明日の朝出発すると社員に伝える。



「食事会は参加する。しかしせっかくダークカンパニーホテルのような高級ホテルに行くんだ。だから楽しみたいんだよね。1泊でもいいからさ」



「構いません。招待券を受付の方に見せれば1泊宿泊のお客様としてホテル内をご招待いたします」



「それなら問題ない」



　まさにタダで高級ホテルを楽しめるというもの。しかしダークカンパニーホテルの生き方が分からないため、ライトニングは社員に行き方を教えてもらい、メモする。



　その後、念のためヒーラーにダークカンパニーホテルの行き方を徹底的に確認すると、留守を任せるように言っておいた。



「しばらく店は任せるがいいか？」



「大丈夫だよ。私1人でも焦らずに出来そうだよ。もうお客さんいっぱいにも慣れてきたしね」



「コハナも手伝えれば手伝わせてやりたいが、ダンス教室をやりたいそうだからな」



　ライトニングはコハナにダンスをしたいという夢を叶えさせてやりたかった。



　しかし今の忙しさではヒーラーは断るだろうと感じたが、ヒーラーはあっさり承諾した。



「いいよ！」



「本気か？　1人で本当に大丈夫なのか？　料理を作って運んでを繰り返すんだぞ。あとお会計もだ」



「任せて。食い逃げだって数秒で捕まえられるこの私だよ。アンドロイドをなめちゃいかんよ」



　元気と気合十分のヒーラーをみてほっとするライトニング。



　明日の朝、ライトニングはボルテックスの店をヒーラーに託してダークカンパニーホテルへ向かう。その時にコハナがライトニングを追いかける。



「待ってください！」



「どうしたコハナ」



「このお守りを」



「何だ？」



　コハナがライトニングにくれたのは、銀の指輪であった。



「これは私が借金生活を送っていた時に右手の人差し指に着けていた願い事が叶うようになるおまじないの指輪です」



「こんな大事なものを受け取っていいのか？」



「はい、私は願いを叶えました。今度はライトニングさんが願いを叶えてください」



「分かった。ありがたくもらうぞ」



　ライトニングは右手の人差し指に銀の指輪をつけると、コハナに手を振ってダークカンパニーホテルへ向かっていった。