闇商人再び

ボルト館を後にしてレストラン、ボルテックスに戻るライトニング。途中でヌルと別れてボルテックスに戻ろうとするが、夜中でほとんどの店は閉まっているというのにライトニングは危険を承知で夜中の10時のアンペア商店街を歩く。



　危険を承知で夜中のアンペア商店街を歩く理由は、夜中にはこの街にどのような人物がいるのかを調べるためである。



　アンペア商店街は夜中、出歩いても問題ないかは調べなければいけないところ。夜中に活動する盗賊やチンピラに絡まれないか心配であるが、コハナとヒーラーを今後危険な状況にならないかということと、このアンペア商店街でお店を経営していいものかをライトニングはアンペア商店街を歩いて調べていた。



　アンペア商店街を30分ほど歩いてみたところ、店は全て締まっており明かりも少ない。おまけに交番のような場所さえない。



　夜中はおろかおそらく朝と昼も警戒しなければいけない危険な街かもしれないとライトニングは思った。



　何しろヌルのような裏仕事のよろず屋がいる街なのだから危険な街なのかもしれないとライトニングは思うところではあるが、ボルト館のようないいおりゅ屋がある商店街でもあるため、アンペア商店街は良い商店街か悪い商店街なのかはっきりとしない。



　そんなことでライトニングはアンペア商店街の広場で悩まされていると、1人の男が近づいてくる。



　その男は見たことがある。森の中で高価な熊の魔物の毛皮を銅貨10枚で売ったのに怒ってライトニングを襲った闇商人だ。



「見つけたぞ。この商店街にいるって噂を聞いたが本当だったようだな」



「あんた誰だっけ？」



　顔は知っているのだが、あえて知らないふりをするライトニング。しかし闇商人には通用しない。



「貴様、俺の顔を忘れたとは言わせないぞ！」



「それよりあんた。聞きたいことは多いが、まず何故俺がここにいるって分かった？　それと何故俺に恨みを持っている？」



「知りたいか？　お前の似顔絵入りの広告板がワイズのあちこちに出回ってやがる。有能なアンドロイドが空を飛んでは6時間で広告してきたみたいだしな」



　闇商人の言う広告板はライトニングが転生前にいた世界でいうSNSソーシャル・ネットワーキング・サービスであり、アンドロイドのヒーラーならば頭脳内でライトニングが宣伝してほしい情報を見て、見たものを画像化。ヒーラーの目はカメラのレンズのようになっており録画と撮影が可能のようで、しかもそれをワイズの街全体の映像に6時間で流せるのだ。



　この闇商人もそれを見てこの街に来たそうだ。



「ヒーラーの情報伝達は有能だと思ったが、余計な奴呼んじゃってるな。こういうのはこの世界でもほどほどにか」



「後悔したって遅いぞ！　それと俺は、お前のような恨みがあるのは高価の毛皮を安く平気で売ってくる能天気な奴は大嫌いなのさ。反吐が出て存在するだけでも殺したくなる」



「狂ってるわね。ただのバカなのか恨みなのか俺をいじめたいだけなのか」



「それだ。そういう態度が気に食わない！」



「だけどあんた、偽金に面白い仕掛けがあったおかげで洞窟にいけたわ」



「何！？　貴様、どうしてその謎が分かった？」



「俺の経験とコハナの記憶ってやつ。偽金にはトリックがあるからね。少しいじくるだけで面白いものが見れるって昔おばあちゃんから教わったんだよね」



　これはライトニングの転生前の少年時代の西南雷気の経験。ライトニングの祖母は豆知識をライトニングに教えるのが好きで、様々なことをライトニングに教えていた。



　その１つで偽札や偽金を見抜くにはいじって仕掛けを見つけること。また、偽金には時に重大なヒントもあるかもしれないとどうでもいいような豆知識をライトニングは祖母から教わっていた。



「どうでもいいって思っていたけど、おばあちゃんの豆知識の話が役に立ったのと、コハナがコンカについて知っていたから助かった」



「あの女まで余計なことを。余計貴様が嫌になってきた。こうなればとっておきのアイテムで殺す！」



　怒り狂った闇商人は謎のリモコンを取り出してボタンを押す。すると巨大な右腕がチェーンソーの腕で左腕がドリルの全長8メートルの巨大なメカが空から現れた。



　メカの恐ろしさよりも闇商人のどうしようもないライトニングに対する怒りにライトニングはただ呆れるだけだった。



　ライトニングはこのメカがコンカの洞窟の兎の魔物と比べて恐ろしくないように思えるからである。