アンペア商店街

東ワイズ駅につき下車したライトニングとコハナ。2人が向かうのはテナントを募集している店舗で、お店を開いても問題ない場所である。



　安い金額で貸してくれる店舗はないものか、東ワイズによろず屋があるため、ライトニングはそこを訪れる。



　東ワイズは大都市ワイズの中でも人が少ない場所であり、ライトニングが転生する前の世界にあった商店街というのがある。



　この商店街の名前はアンペア商店街。大都市ワイズの中でも賑わいがなく、活気にもあふれていない町である。



　若い女の子や働ける若い男はいるが、情熱的じゃない。客が少ないせいでどこもかしこもお店は閉まっている場所は多い。まさに大都市ワイズの住民に見捨てられた場所であった。



　この風景を見てコハナは自信を無くす。



「うわさは聞いておりましたが、ここまで寂しい場所だなんて。人もいなくてお店をやっていても通りかかる人が少なければ来てくれるお客さんなんていませんよ」



「バカだなコハナ。確かにこの商店街は人が通らず活気も溢れていない。まるで忘れ去られた町だ。しかし、やり方１つで町は活気になることを教えてやる」



「そうですか。ひとことでいえば何にもない街ですよ」



「ならばここに唯一最高の料理店が東ワイズのアンペア商店街にあることを教えてやろう」



　ライトニングはやる気であった。料理店で簡単に町おこしをしようとしているのだ。コハナはライトニングとお店をやりたい気持ちではあったが、東ワイズのさびれた雰囲気に自信を無くしていた。



　こんな寂しい商店街でどうやって料理店を経営するのか分からない。



　ライトニングはそんな寂しい商店街に黄金の雨を増やせてやろうと思う気持ちでよろず屋へのところへ向かう。



よろず屋は地下にあるため目立たないが、借金の多かったコハナは裏の人間とやり取りが多く、東ワイズのアンペア商店街に秘密のよろず屋があることを知っていた。



　コハナはライトニングを地下にいるよろず屋の部屋へ入った。よろず屋は高校生くらいの女の子でサイドテールの水色の髪色でへそ出しのチェックの服にチェックのショートスカートをはいている。



　見た目はキュートでセクシーな女の子であるが、ツンデレであった。



「何よ？　何の用なのよ？」



「ああ、来ちゃ悪かったのか？」



「別にそんなんじゃないんだけど？　むしろこんな商店街にこんなところに来てくれてうれしいっつーか」



「そうなんだな」



「それで何？　ご飯でも分けろって言いたいの？」



「ご飯はいらない。だけどほしいものがある」



「何？」



「お店だよ。風呂はついてなくていいから料理店を営業できるお店はないか？」



「お店？　あるけどどうせこんな商店街に人が来るわけないじゃん！」



「どうかな？　もしも料理店を営業させてくれるなら、君にもおいしいごちそうをわけてあげるよ」



「本当に？　私何年も米のとぎ汁とかもやしで生きてきたから、それは嬉しい」



「家賃も銀貨6枚程度の場所で構わない。それと風呂屋に近い場所であればもっといい」



「風呂屋って何よ？」



　ライトニングは仕事を終えたら疲れを癒すために風呂屋へ行こうと考えているのだが、この世界には風呂屋はないようである。よろず屋でも風呂屋について分からないのだからこの世界には銭湯とかもないのであろうかとライトニングは思った。



「風呂屋って。大浴場だぞ。裸でお湯にはいって汚れとか落とさないのか？　てかダンジョンにはあったぞ」



コンカの洞窟にいたときコハナから詳しい風呂の名前など聞かなかったため、風呂という言葉が通じなくても仕方がない。ライトニングは詳しくよろず屋に聞く。



「ああ、そういうのはあるねえ。たしかおりゅでしょ。こんな感じのやつ」



　よろず屋に絵を見せてもらうと確かにそれは銭湯の風呂場であった。この世界では「おりゅ」というようだ。なぜおりゅというのかライトニングはよろず屋に聞いてみる。



「よろず屋。どうしておりゅって名前なんだ？」



「よろず屋って呼ぶのはやめてよ。私にはヌルって名前があるの。ヌルって呼んで」



　よろず屋の名前はヌル。何とも見た目の通り体がローションでヌルヌルしてるように見えるため、そんな彼女にふさわしい名前だ。



　おりゅというのをライトニングはヌルに詳しく聞いた。おりゅはワイズで生み出されたもので、大昔ワイズで寒い中、お湯のはいった大きな桶に入って体を温めようと必死な男が「おりゅだおりゅだ」と叫び続けたことから名づけられたそうだ。



　ライトニングが転生前にいた世界とは全く生み出された理由が違っていた。