全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ
元勇者の新たな挑戦
「……魔王様、アイネさんに付けていた部下から思念魔法で報告が届きました」
俺達の間に漂っていた重苦しい空気と沈黙は、ルクスリアの一声で終わりを迎えた。
しかし、そんな彼女の顔色も、お世辞にも良いとは言えないものだ。
「例の件ですか。その様子だと、あまり喜ばしい報せでは無さそうですね?」
「……ご期待に添えず申し訳ありません」
何の話か良く分からないけど、話の流れから察するに、どうやらルクスリアの部下がアイネを尾行していたようだな。
恐らくは、試験が終わった後、帰路に就くアイネを監視する事で、魔界に来た手段を探ろうとした、という所だろうか。
そして、その目論見は残念ながら失敗したらしいな。
「気にする事はありませんよ。今回は相手の方が一枚上手だった。ただ、それだけの事ですから。それよりも、その報告について、詳しく聞かせて貰いましょうか」
「かしこまりました。……最後の面接試験を終え、学園を出たアイネさんは、まず学園街に向かったようです。どうやら、昨日から学園街の宿に泊まっていたようですね。そして、預けていた荷物を宿で受け取った彼女は、そのまま学園街を一巡りしたそうです。監視任務に就いた部下によると、特に明確な目的もなく、ただ物見遊山を楽しんでいる様子だったと。そして、日が沈み、辺りが暗くなった頃、学園街を囲む森に足を踏み入れた彼女は、服を着たまま湖に飛び込んだそうです。それからすぐに魔力反応が消失し、部下が湖をくまなく捜索したものの、彼女は見つからなかったとの事。……これは余談ですが、監視中に不審な行動は見られなかったものの、湖に飛び込む直前、彼女が湖面に映る月を眺めていたと。それだけなら風情を楽しんでいただけ、と解釈する所ですが、その直後に姿を消したとなると、何か関係があるのでは、と報告を受けました」
要点を絞り、分かりやすく淡々と説明するルクスリア。
ちなみに、学園街というのは、魔王学園の目の前に広がる小さな街だ。
この学園のためだけに作られたと言っても過言ではなく、住民全員が何らかの店を構えている。
学園内にも購買を始めとした施設が充実しているけど、その品揃えは日用品を重視したものだ。
学園街には、より専門的で特定の分野に特化した店が数多く並んでいるので、必要に応じて使い分けられるようになっている。
「……なるほど。ちょうど今日は満月ですから、それに関連した条件を満たす事で発動する魔法が使われた可能性はありますね。念の為の確認ですが、転移魔法の気配はありませんでしたか?」
「はい、転移魔法の兆候は最大限に警戒していたので、見落とす事は有り得ないと断言していました」
「なら、アイツの羽衣と同じく、固有の魔法と考えるのが妥当だろう。その辺りに関しては地道に調査を続けるしかない。……それにしても、厄介事が次から次へと舞い込んでくるな。まだ授業も始まってないうちから、こんな調子だと先が思いやられるぞ」
「あはは……。でも、シルクさんが居てくれるので、私としては心強いです。これからの働きにも期待していますよ?」
オマケに魔王様まで、こんなプレッシャーを掛けてくる始末だしな。
勇者をやってた頃よりはマシかもしれないけど、この学園の仕事も思った以上に、一筋縄ではいかなさそうだ。
俺達の間に漂っていた重苦しい空気と沈黙は、ルクスリアの一声で終わりを迎えた。
しかし、そんな彼女の顔色も、お世辞にも良いとは言えないものだ。
「例の件ですか。その様子だと、あまり喜ばしい報せでは無さそうですね?」
「……ご期待に添えず申し訳ありません」
何の話か良く分からないけど、話の流れから察するに、どうやらルクスリアの部下がアイネを尾行していたようだな。
恐らくは、試験が終わった後、帰路に就くアイネを監視する事で、魔界に来た手段を探ろうとした、という所だろうか。
そして、その目論見は残念ながら失敗したらしいな。
「気にする事はありませんよ。今回は相手の方が一枚上手だった。ただ、それだけの事ですから。それよりも、その報告について、詳しく聞かせて貰いましょうか」
「かしこまりました。……最後の面接試験を終え、学園を出たアイネさんは、まず学園街に向かったようです。どうやら、昨日から学園街の宿に泊まっていたようですね。そして、預けていた荷物を宿で受け取った彼女は、そのまま学園街を一巡りしたそうです。監視任務に就いた部下によると、特に明確な目的もなく、ただ物見遊山を楽しんでいる様子だったと。そして、日が沈み、辺りが暗くなった頃、学園街を囲む森に足を踏み入れた彼女は、服を着たまま湖に飛び込んだそうです。それからすぐに魔力反応が消失し、部下が湖をくまなく捜索したものの、彼女は見つからなかったとの事。……これは余談ですが、監視中に不審な行動は見られなかったものの、湖に飛び込む直前、彼女が湖面に映る月を眺めていたと。それだけなら風情を楽しんでいただけ、と解釈する所ですが、その直後に姿を消したとなると、何か関係があるのでは、と報告を受けました」
要点を絞り、分かりやすく淡々と説明するルクスリア。
ちなみに、学園街というのは、魔王学園の目の前に広がる小さな街だ。
この学園のためだけに作られたと言っても過言ではなく、住民全員が何らかの店を構えている。
学園内にも購買を始めとした施設が充実しているけど、その品揃えは日用品を重視したものだ。
学園街には、より専門的で特定の分野に特化した店が数多く並んでいるので、必要に応じて使い分けられるようになっている。
「……なるほど。ちょうど今日は満月ですから、それに関連した条件を満たす事で発動する魔法が使われた可能性はありますね。念の為の確認ですが、転移魔法の気配はありませんでしたか?」
「はい、転移魔法の兆候は最大限に警戒していたので、見落とす事は有り得ないと断言していました」
「なら、アイツの羽衣と同じく、固有の魔法と考えるのが妥当だろう。その辺りに関しては地道に調査を続けるしかない。……それにしても、厄介事が次から次へと舞い込んでくるな。まだ授業も始まってないうちから、こんな調子だと先が思いやられるぞ」
「あはは……。でも、シルクさんが居てくれるので、私としては心強いです。これからの働きにも期待していますよ?」
オマケに魔王様まで、こんなプレッシャーを掛けてくる始末だしな。
勇者をやってた頃よりはマシかもしれないけど、この学園の仕事も思った以上に、一筋縄ではいかなさそうだ。
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