全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ
謎が謎を呼び……
「……そういえば、人間界でも事件が起きていたよな。今回の黒幕が、あの一件にも関わっている可能性は有ると思うか?」
何十人もの人間が何の前触れもなく忽然と姿を消したという連続失踪事件。
行方不明者の名簿には、この魔王学園の受験生の名前も入っている……というより、アイネ以外の人間全員が該当者だ。
そして、うちの受験生が関わっているという点は、こちらの事件と共通している。
加えて、強力な暗示を得意とするらしい今回の黒幕が、向こうの事件にも関わっているなら、誘拐を失踪に見せかける事も容易いだろう。
なんせ、本人の意識や記憶を都合の良いように誘導できるのだから、傍目から見れば自分の意思で失踪したようにしか見えない筈だ。
予めタネを仕込んでおけば、いざ姿を消す時に痕跡が残る心配も無いし、仮に周囲から不審に思われて、暗示に気付かれたとしても、後から犯人を辿る事は至難の業だしな。
それと、現状は転移魔法の使い手が誘拐したという線で、捜査が進められていて、そこから派生して魔族が犯人ではないかと疑われている。
人間の転移魔法の使い手は国から厳しく管理されているから、罪を犯すのは容易でないという理屈だ。
しかし、暗示使いが失踪事件の黒幕であると仮定するなら、その前提は覆る。
なぜなら、暗示――すなわち精神干渉魔法は、転移魔法よりも使い手が少ない稀少な魔法であり、なおかつ転移魔法よりも秘匿しやすいから。
転移魔法を使えば、転移前と転移後、2つの地点の周囲で他人から観測されるけど、精神干渉魔法の場合は、周囲の人払いを済ませてしまえば誰にも観測されない訳だしな。
厳密に言うと対象には観測されるが、その観測を無かった事にしてしまえるので、目撃者は残らない。
なので、国が把握していない精神干渉魔法の使い手は数多く存在すると見られる。
となると、魔族の少女に接触した相手は、人間だったという可能性も考えられるな。
「有り得ない話では無いと思います。……しかし、同一犯が暗示を掛けて人間の皆さんを攫った、というのは違和感がありますね。どうせなら暗示を掛けたまま魔王学園に送り込んだ方が良かったのでは? 何故、あの少女と扱いが違うのでしょうか?」
「……言われてみると、確かに、その通りだな。人間相手と魔族相手で何かしら事情が異なるのか。それとも別人の犯行なのか。というか、あの謎の魔法生命体は、いったい何の意味があったんだ? てっきり、アイツが暗示の役割を担ってるんだと思ってたけど、よく考えたらアイツが消えた後も暗示の影響で記憶が封鎖されてたんだよなぁ」
「……やはり、現段階では情報が足りていませんね」
敵の残す手掛かりが少なすぎて、今の俺達では何の結論も下せそうにない。
そして、そんな落胆ムードに追い打ちをかけるように、新たな凶報が届く。
何十人もの人間が何の前触れもなく忽然と姿を消したという連続失踪事件。
行方不明者の名簿には、この魔王学園の受験生の名前も入っている……というより、アイネ以外の人間全員が該当者だ。
そして、うちの受験生が関わっているという点は、こちらの事件と共通している。
加えて、強力な暗示を得意とするらしい今回の黒幕が、向こうの事件にも関わっているなら、誘拐を失踪に見せかける事も容易いだろう。
なんせ、本人の意識や記憶を都合の良いように誘導できるのだから、傍目から見れば自分の意思で失踪したようにしか見えない筈だ。
予めタネを仕込んでおけば、いざ姿を消す時に痕跡が残る心配も無いし、仮に周囲から不審に思われて、暗示に気付かれたとしても、後から犯人を辿る事は至難の業だしな。
それと、現状は転移魔法の使い手が誘拐したという線で、捜査が進められていて、そこから派生して魔族が犯人ではないかと疑われている。
人間の転移魔法の使い手は国から厳しく管理されているから、罪を犯すのは容易でないという理屈だ。
しかし、暗示使いが失踪事件の黒幕であると仮定するなら、その前提は覆る。
なぜなら、暗示――すなわち精神干渉魔法は、転移魔法よりも使い手が少ない稀少な魔法であり、なおかつ転移魔法よりも秘匿しやすいから。
転移魔法を使えば、転移前と転移後、2つの地点の周囲で他人から観測されるけど、精神干渉魔法の場合は、周囲の人払いを済ませてしまえば誰にも観測されない訳だしな。
厳密に言うと対象には観測されるが、その観測を無かった事にしてしまえるので、目撃者は残らない。
なので、国が把握していない精神干渉魔法の使い手は数多く存在すると見られる。
となると、魔族の少女に接触した相手は、人間だったという可能性も考えられるな。
「有り得ない話では無いと思います。……しかし、同一犯が暗示を掛けて人間の皆さんを攫った、というのは違和感がありますね。どうせなら暗示を掛けたまま魔王学園に送り込んだ方が良かったのでは? 何故、あの少女と扱いが違うのでしょうか?」
「……言われてみると、確かに、その通りだな。人間相手と魔族相手で何かしら事情が異なるのか。それとも別人の犯行なのか。というか、あの謎の魔法生命体は、いったい何の意味があったんだ? てっきり、アイツが暗示の役割を担ってるんだと思ってたけど、よく考えたらアイツが消えた後も暗示の影響で記憶が封鎖されてたんだよなぁ」
「……やはり、現段階では情報が足りていませんね」
敵の残す手掛かりが少なすぎて、今の俺達では何の結論も下せそうにない。
そして、そんな落胆ムードに追い打ちをかけるように、新たな凶報が届く。
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