全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ
見えない敵
「……つまり、纏めると、こういう事か? 例の魔族の少女は、正体不明の人物に接触されたけど、暗示によって記憶を封鎖されていた。そして、アインストの魔法によって、その時の記憶を取り戻したものの敵の正体については依然として不明のままと」
ヴェノから聞いた説明を要約して、俺の認識に間違いが無いか確認を取る。
その問いに対して、ヴェノは静かに頷くことで肯定を示した。
「どうやら相手は全身を覆うローブに身を包んでいて、なおかつ声も発しなかったようですね。念のため、アインストさんが同意を取って、夢見の魔法で当時の記憶を閲覧したそうですが、老若男女の区別すら判断できなかったそうです。暗示が解けた場合に備えての事でしょうが、随分と用心深い。その尻尾を掴むのは、簡単では無さそうです」
「そして、アイツは魔法生命体を植え付けられ、無自覚のまま入学試験に来た訳だな。……というか、そもそも敵の目的は何だったんだろうな」
魔王学園に対する攻撃、というのは考えにくい。
他の被害者が見つからなかった以上、魔法生命体に寄生されていたのは、アイツだけという事になるけど、まさか、そんな戦力で魔王学園を落とせるとは考えていないだろう。
では、魔王学園に潜入させてスパイにしたかったのか。
恐らくは、それも違う。
それなら、あのタイミングで暴走させる意味が無いからだ。
アイツは1次試験で脱落したから、見限って他の生徒に寄生させようとした、とも考えられるけど、あの段階では試験の結果は発表されていないしな。
だとすると、あくまで魔法生命体の運用実験をしたかっただけ、という線が最も濃厚だろうか。
あんな存在は魔王ですら知らないらしいから、今回の黒幕(あるいは所属する組織)が新たに開発したものだろう。
その運用データを収集し、あわよくば事故を装って魔王学園に爪痕を残そうとしたのかもしれない。
魔王学園を陥落させる事は不可能でも、将来有望な受験生を殺して戦力を削ったり、評判を落とす程度なら可能だと思ったのか。
まぁ、仮に俺が居なくても、魔王が控えている以上、そんな小さな勝利すら有り得ないと断言できるけど。
「敵の目的については、現段階では断定できませんね。ただ、一つ言えるのは、今回の黒幕は能力的にも、暗躍に徹するスタンス的にも、非常に厄介だという事です。100年前の革命派の動きを彷彿とさせますね」
「……とうとう奴らが本格的に動き出したと?」
「その可能性も否定は出来ません。とはいえ個人的には、この手の敵が革命派の他にも潜んでいるとは考えたくありませんけどね」
流石の魔王も、見えない敵との暗闘には苦戦を免れないらしい。
その乾いた笑みには、少しだけ精神的な疲労が滲んでいた。
ヴェノから聞いた説明を要約して、俺の認識に間違いが無いか確認を取る。
その問いに対して、ヴェノは静かに頷くことで肯定を示した。
「どうやら相手は全身を覆うローブに身を包んでいて、なおかつ声も発しなかったようですね。念のため、アインストさんが同意を取って、夢見の魔法で当時の記憶を閲覧したそうですが、老若男女の区別すら判断できなかったそうです。暗示が解けた場合に備えての事でしょうが、随分と用心深い。その尻尾を掴むのは、簡単では無さそうです」
「そして、アイツは魔法生命体を植え付けられ、無自覚のまま入学試験に来た訳だな。……というか、そもそも敵の目的は何だったんだろうな」
魔王学園に対する攻撃、というのは考えにくい。
他の被害者が見つからなかった以上、魔法生命体に寄生されていたのは、アイツだけという事になるけど、まさか、そんな戦力で魔王学園を落とせるとは考えていないだろう。
では、魔王学園に潜入させてスパイにしたかったのか。
恐らくは、それも違う。
それなら、あのタイミングで暴走させる意味が無いからだ。
アイツは1次試験で脱落したから、見限って他の生徒に寄生させようとした、とも考えられるけど、あの段階では試験の結果は発表されていないしな。
だとすると、あくまで魔法生命体の運用実験をしたかっただけ、という線が最も濃厚だろうか。
あんな存在は魔王ですら知らないらしいから、今回の黒幕(あるいは所属する組織)が新たに開発したものだろう。
その運用データを収集し、あわよくば事故を装って魔王学園に爪痕を残そうとしたのかもしれない。
魔王学園を陥落させる事は不可能でも、将来有望な受験生を殺して戦力を削ったり、評判を落とす程度なら可能だと思ったのか。
まぁ、仮に俺が居なくても、魔王が控えている以上、そんな小さな勝利すら有り得ないと断言できるけど。
「敵の目的については、現段階では断定できませんね。ただ、一つ言えるのは、今回の黒幕は能力的にも、暗躍に徹するスタンス的にも、非常に厄介だという事です。100年前の革命派の動きを彷彿とさせますね」
「……とうとう奴らが本格的に動き出したと?」
「その可能性も否定は出来ません。とはいえ個人的には、この手の敵が革命派の他にも潜んでいるとは考えたくありませんけどね」
流石の魔王も、見えない敵との暗闘には苦戦を免れないらしい。
その乾いた笑みには、少しだけ精神的な疲労が滲んでいた。
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