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全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ

雪月 桜

尋問開始

「ミラノ、お前な……。入ってくる時は、せめてノックくらいしろよ」 

今回は俺とアインストが雑談してただけだから良かったものの、生徒が相談に来てたら変な空気になるだろうが。

一応、正式な相談の際には、表に看板を出す決まりになってるらしいけど、コイツの場合は、お構い無しで突っ込んで来る可能性があるな。

なんなら念のため、内から鍵を掛けておいた方が良いかもしれない。

「おっとぉ、センパイじゃないッスか! こんな所で何してるんスか? ……ハッ!? まさか、こんな真っ昼間から同僚と秘密の個人レッスンっスか!? しかも神聖な学びで! けしからんッスね!」

「いや、生徒ならともかく、同僚相手に何の授業レッスンをするんだよ。それに、そもそも俺は教官じゃねぇし。つーか、相変わらずテンション高ぇな。少しは落ち着け」

ちなみに、このカウンセリングルームは、板張りの床、柔らかい色合いのベージュの壁、暖色の照明、リラックスアロマ、木製の家具と安楽椅子あんらくいすなど、気分を落ち着ける要素を取り込んでいるが、少なくともミラノの興奮をしずめるには足りないようだ。

「ふむふむ、なるほど。センパイは生徒相手じゃないとレッスン(意味深)する気にならないと。つまりは年下好きッスか? それとも、生徒との禁断の関係っていうシチュエーションに燃えるタイプとか?」

「お前の方こそ、真っ昼間っから何を言ってんだか……。アインストからも、何か言ってやれ」

「あら、別に良いんじゃない? 私も、シルクの趣味嗜好しゅみしこうには興味があるし」

「くそぅ! 俺の味方は居ないのか!」

「……はぁ。馬鹿馬鹿しい」

気付かぬ内に敵に囲まれ、思わず悲鳴を上げた俺に反応を示したのは、アインストでもミラノでもない第三者。

この騒動を冷ややかな目で外から眺めていた、例の魔族の少女だった。

「あれっ、お前は……。そういや、ミラノが重要参考人を連れて来たとか言ってたな。道理で聞き覚えのある声だと思った」

まさか、こんな形で、コイツに救われる事になるとはな。

本人は助けたつもりなんて毛頭もうとうないだろうけどさ。

「ふんっ。あの事件について詳しく事情聴取したいって言って連れて来られたのに、どうして、こんな茶番に付き合わされてるのかしらね」

なるほど、それでアインストに白羽の矢が立った訳か。

仮に魔族の少女が回答を拒んでも、アインストなら上手いこと態度を軟化なんかさせられるだろうし、敵に暗示を掛けられている場合も簡単に解除できるからな。

後は謎の魔法生命体に寄生された事で、精神に変な後遺症が残ってないかという確認もねてるんだろう。

まぁ、ミラノのせいで余計な不信感を抱かせてしまっているようだけど。

「そりゃあ悪かったな。俺達は席を外すから気にしないでくれ。ほら、行くぞミラノ」

「あっ、ちょ、引っ張らないで下さいッス〜!」

「魔王様から話は聞いてるから、後は任せてね〜。必要な情報は、バッチリ引き出してみせるから♪」

ヒラヒラと手を振るアインストに見送られながら、ジタバタと藻掻もがくミラノの首根っこをつかみ、足早に退出する俺。

全く、もう少しアインストに話を聞きたかったのに、とんだ邪魔が入ったもんだ。

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