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全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ

雪月 桜

プロトタイプ

「これはついとなる2つの水晶の片割れです。対応する水晶同士の共鳴作用を利用する事で、片方に与えられた刺激を、もう片方に転送する事が出来ます。この仕組みが完成すれば、遠く離れた場所の音や光景を共有する事も可能となるのですよ。とはいえ、これは研究段階のプロトタイプで、音しか共有できない上に遅延も音質もひどいものですが」

拳大こぶしだいの水晶を掌に乗せ、淡々と説明する、ルクスリア。

しかし、その内容は、これまでの常識をくつがえすような驚くべきものだ。

要するに、思念魔法以上の情報伝達能力を誰でも簡単に得られるようになるという話なんだから。

実現すれば、まさに世界規模の革命と言っても過言じゃない。

ただし、今の話で重要なのは、このマジックアイテムの性能とは別の事だ。

「……で、そんな大それた発明品を個人的な盗聴に使ったと? というか、そもそも何で、お前が持ってるんだよ」

恐らく、もう片方の水晶もルクスリアが所有していて、今は学園長室の何処どこかに目立たない形で設置されているはずだ。

それを使って統一議会との会話を盗み聞きしたという事だろうけど、プロトタイプなんて簡単に出回る物じゃないだろう。

「まず最初に否定しておきますが、個人的な盗聴というのは語弊ごへいがあります。さっきも言った通り、これは運用データの収集用に作られた試作品なのですよ。色々なシチュエーションで実際に使用して、使い勝手や欠点などを確認するために作られた訳です。そして、このアイテムは国から降りた予算によって研究開発が行われているもの。つまり、魔王様から魔界の運営を任されている私には成果を確認する義務があるのです」

「……という建前で、魔王城にあるパパの私室に水晶をしのばせた事があった。その日のうちに私が見つけて回収したけど」

ルミナリエに【建前】だとバッサリと切り捨てられ、気まずそうに目をらすルクスリア。

本人にも苦しい言い訳だという自覚があるのだろう。

「お前なぁ……いくら魔王ヴェノを敬愛してるからってさぁ。そもそも、成果を確認するだけなら他にやりようがあるだろうに」

「それは、そうですが。魔王様の警護をする上でも好都合なのですよ。離れた場所からでも御身おんみの無事が確認できるので」

「いや、お前の場合、思念魔法が使えるんだから、それで済むだろ」

「いくら私でも四六時中しろくじちゅう、思念魔法を維持する事は出来ませんから、それだと魔王様にせまる危機を感知できません。それに、思念魔法は相手が応じられない状況だと役に立ちませんし」

「……とにかく、これは没収。それと、1回目は黙っててあげたけど、今回はキチンとパパに自白すること」

「はい……」

まるで母親にしかられた幼子おさなごのように肩を落としてシュンとするルクスリア。

普段はりんとしていてカッコいいのに、ルミナリエの前だと本当に子供っぽいよな。

とにかく、コイツを一人で向かわせるのはこくだし、俺も付いて行って必要ならフォローしてやるか。

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