全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ
あちらを立てれば、こちらが立たず
「それにしても、面倒な事件が起こったものですね。ただでさえ人間界で不可解な問題が発覚したばかりだというのに。こうも立て続けに厄介事が舞い込んでくると、革命派の事を抜きにしても陰謀めいたものを感じてしまいます」
この後に待ち受ける修羅場を思ってか、重い溜め息を吐くルクスリア。
そして、そんな彼女のセリフに耳聡く反応したルミナリエが、コクリと首を傾げた。
「……人間界でも何かあった? もしかして、人間の受験者がアイネだけだった事と関係している?」
ルクスリアの僅かな言葉から、ズバリと真実を言い当てるルミナリエ。
こういう勘の良さというか、鋭い観察力は天性のものなのか、はたまた彼女がルクスリアの元で培った能力なのか。
仮に後者だとしたら、ルクスリアって教官としても優秀なんじゃなかろうか。
「良く気付いたな。実は魔王から聞いた話なんだけど――」
それから、人間界で発生した複数の失踪事件について、聞いた限りの事をルミナリエに伝える。
もちろん、誰にでも言い触らして良い情報じゃないけど、既に半ば確信しているようだし、彼女が相手なら大丈夫だろう。
立場的に、この手の機密の扱いには慣れてるだろうし、革命派の事も知ってるくらいだしな。
それに、ルクスリアも止めなかったし、視点と頭脳は多い方が何かと助かる。
「……そう。そんな事が」
「ああ、何故かアイネだけは無事に辿り着けたみたいだけど、そのカラクリも不明なままだ。魔界に来た手段についても“定期船は使っていない”という事しか分かってないしな」
「彼女の故郷の里については、近いうちに調査する必要がありそうですね。今回の件とは無関係だとしても、将来的に魔界の脅威になるかも知れませんから」
「……うん」
共に過ごした時間は短くとも、アイネに対して少なからぬ情を抱いているルミナリエは、どこか後ろめたさを感じている様子だ。
実際のところ、アイネ自身からは悪意や邪気が全く感じられないから、疑いの目を向けるのが心苦しいという気持ちは分かる。
とはいえ、事の重大さを考えれば当然の処置だという事も、魔王の娘として理解しているのだろう。
友情と立場の間で板挟みになる彼女を見兼ねた俺は、ひとまず話題を変える事にした――のだが。
「そう言えば、ルクスリア。ずっと気になってたんだけど、お前は何処で魔王と統一議会の遣り取りを聞いてたんだ?」
「……いったい何の事でしょうか? 私には全く心当たりが無いのですが?」
一切の淀みもなく滑らかに動いた唇から紡がれた言葉には、動揺も無ければ震えも無い。
しかし、その瞳が、これでもかと泳ぎまくっているために、痛い所を突かれたのが丸分かりだった。
ただルミナリエを気遣っただけなのに、どうやら今度はルクスリアのフォローをしなければならないらしい。
この後に待ち受ける修羅場を思ってか、重い溜め息を吐くルクスリア。
そして、そんな彼女のセリフに耳聡く反応したルミナリエが、コクリと首を傾げた。
「……人間界でも何かあった? もしかして、人間の受験者がアイネだけだった事と関係している?」
ルクスリアの僅かな言葉から、ズバリと真実を言い当てるルミナリエ。
こういう勘の良さというか、鋭い観察力は天性のものなのか、はたまた彼女がルクスリアの元で培った能力なのか。
仮に後者だとしたら、ルクスリアって教官としても優秀なんじゃなかろうか。
「良く気付いたな。実は魔王から聞いた話なんだけど――」
それから、人間界で発生した複数の失踪事件について、聞いた限りの事をルミナリエに伝える。
もちろん、誰にでも言い触らして良い情報じゃないけど、既に半ば確信しているようだし、彼女が相手なら大丈夫だろう。
立場的に、この手の機密の扱いには慣れてるだろうし、革命派の事も知ってるくらいだしな。
それに、ルクスリアも止めなかったし、視点と頭脳は多い方が何かと助かる。
「……そう。そんな事が」
「ああ、何故かアイネだけは無事に辿り着けたみたいだけど、そのカラクリも不明なままだ。魔界に来た手段についても“定期船は使っていない”という事しか分かってないしな」
「彼女の故郷の里については、近いうちに調査する必要がありそうですね。今回の件とは無関係だとしても、将来的に魔界の脅威になるかも知れませんから」
「……うん」
共に過ごした時間は短くとも、アイネに対して少なからぬ情を抱いているルミナリエは、どこか後ろめたさを感じている様子だ。
実際のところ、アイネ自身からは悪意や邪気が全く感じられないから、疑いの目を向けるのが心苦しいという気持ちは分かる。
とはいえ、事の重大さを考えれば当然の処置だという事も、魔王の娘として理解しているのだろう。
友情と立場の間で板挟みになる彼女を見兼ねた俺は、ひとまず話題を変える事にした――のだが。
「そう言えば、ルクスリア。ずっと気になってたんだけど、お前は何処で魔王と統一議会の遣り取りを聞いてたんだ?」
「……いったい何の事でしょうか? 私には全く心当たりが無いのですが?」
一切の淀みもなく滑らかに動いた唇から紡がれた言葉には、動揺も無ければ震えも無い。
しかし、その瞳が、これでもかと泳ぎまくっているために、痛い所を突かれたのが丸分かりだった。
ただルミナリエを気遣っただけなのに、どうやら今度はルクスリアのフォローをしなければならないらしい。
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,702
-
1.6万
-
-
9,544
-
1.1万
-
-
9,415
-
2.4万
-
-
9,167
-
2.3万
コメント