全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ
がんばれ、ルクスリア
「……終わった」
「あっ、ルナちゃん、お疲れ様!」
俺が密かにアイネの認識を改めていると、部屋の復旧作業に当っていたルミナリエが戻って来た。
話に夢中で気が付かなかったけど、確かに天井や壁に空いた穴が完璧に修復されていて、散乱していた瓦礫や調度品の類いも、すっかり元通りになっている。
なんなら、ルミナリエが荒らす前よりも綺麗になっているかも知れない。
「随分と時間が掛かったみたいだけど、この仕上がりは流石だな。修復魔法は苦手だと言っていたのに大したもんだ」
「うんうん。やっぱり、ルナちゃんは凄いよ! 修復魔法は回復魔法よりも難易度が高いって言われてるのにっ」
俺とアイネに褒められて、ルミナリエが照れくさそうに目を逸らす。
「……やっているうちに何となくコツを掴めたから。でも、慣れない事をするのは思ったより疲れた」
言われてみれば、ルミナリエのアホ毛の張りが少し弱い気がするな。
いつもは天を衝くように、そそり立っているのに、今は微妙に萎びている印象だ。
これだけ分かりやすく、かつリアルタイムに疲労が反映される髪というのも珍しい気がするけど、そもそもアホ毛自体、滅多に見られるものじゃないか。
「ご苦労さん。けど、すぐに試験が再開されるんだろ? そんな調子で大丈夫なのか?」
とはいえ、大丈夫じゃないと言われた所で、ルミナリエだけに便宜を図る訳にはいかないんだけども。
「……問題ない。私の計測は既に終わってるから。後は結果が出るまで待機するだけ。後は、あそこで伸びてる愚か者も」
そう言って、部屋の隅で壁に背を預けているガンマの方へ視線を向けるルミナリエ。
どうやら、俺が放置した後で、誰かが運んでやったようだ。
どうせなら、保健室に連れて行ってやれよと思わなくもないけど、そこまでする義理は無いという事か。
あるいは自分の試験が終わっていないのか、はたまた邪魔だから退けただけ、という事かも知れない。
まぁ、別に怪我してる訳でもないから、適当に寝かせとけば良いという判断は間違ってないな。
「そうか。ならアイツも、きっと次の試験に進むだろうな。三次試験は筆記だから魔力の消耗は関係ないし、そのまま合格する可能性もあるか」
あの沸点の低い脳筋に、どれだけの知性が宿ってるかは知らないし、最後の面接試験で落とされる危険も残ってるけどさ。
「――って、まだ私は終わってなかったんだ! ちょっと行ってきますね!」
言うが早いか、魔力計測を待つ受験生の列に、慌てて並んで行ったアイネ。
そんな彼女を見送った俺は、胸に抱く呆れを隠そうともせず、視線を背後に移す。
「……で? お前は、いつになったら俺の背中から出てくるんだ?」
実はルミナリエが来た辺りから、ずっと俺の後ろに隠れていたルクスリア。
そんな彼女に疑問を投げると、その身体が怯えたように、ビクッと震えた。
例の件が原因で、ルミナリエと向き合うのが気まずいのは分かるけど、逃げた所で問題の先送りにしかならないだろうに。
一方、ルミナリエはというと、ルクスリアの奇行に慣れているからか、特に気にした様子は無い。
とはいえ、全く心配していない、という訳でも無いようで、何があったのかと視線で問い掛けてくる。
まったく、これじゃあ、どっちが年上だか分かんねぇな。
「あっ、ルナちゃん、お疲れ様!」
俺が密かにアイネの認識を改めていると、部屋の復旧作業に当っていたルミナリエが戻って来た。
話に夢中で気が付かなかったけど、確かに天井や壁に空いた穴が完璧に修復されていて、散乱していた瓦礫や調度品の類いも、すっかり元通りになっている。
なんなら、ルミナリエが荒らす前よりも綺麗になっているかも知れない。
「随分と時間が掛かったみたいだけど、この仕上がりは流石だな。修復魔法は苦手だと言っていたのに大したもんだ」
「うんうん。やっぱり、ルナちゃんは凄いよ! 修復魔法は回復魔法よりも難易度が高いって言われてるのにっ」
俺とアイネに褒められて、ルミナリエが照れくさそうに目を逸らす。
「……やっているうちに何となくコツを掴めたから。でも、慣れない事をするのは思ったより疲れた」
言われてみれば、ルミナリエのアホ毛の張りが少し弱い気がするな。
いつもは天を衝くように、そそり立っているのに、今は微妙に萎びている印象だ。
これだけ分かりやすく、かつリアルタイムに疲労が反映される髪というのも珍しい気がするけど、そもそもアホ毛自体、滅多に見られるものじゃないか。
「ご苦労さん。けど、すぐに試験が再開されるんだろ? そんな調子で大丈夫なのか?」
とはいえ、大丈夫じゃないと言われた所で、ルミナリエだけに便宜を図る訳にはいかないんだけども。
「……問題ない。私の計測は既に終わってるから。後は結果が出るまで待機するだけ。後は、あそこで伸びてる愚か者も」
そう言って、部屋の隅で壁に背を預けているガンマの方へ視線を向けるルミナリエ。
どうやら、俺が放置した後で、誰かが運んでやったようだ。
どうせなら、保健室に連れて行ってやれよと思わなくもないけど、そこまでする義理は無いという事か。
あるいは自分の試験が終わっていないのか、はたまた邪魔だから退けただけ、という事かも知れない。
まぁ、別に怪我してる訳でもないから、適当に寝かせとけば良いという判断は間違ってないな。
「そうか。ならアイツも、きっと次の試験に進むだろうな。三次試験は筆記だから魔力の消耗は関係ないし、そのまま合格する可能性もあるか」
あの沸点の低い脳筋に、どれだけの知性が宿ってるかは知らないし、最後の面接試験で落とされる危険も残ってるけどさ。
「――って、まだ私は終わってなかったんだ! ちょっと行ってきますね!」
言うが早いか、魔力計測を待つ受験生の列に、慌てて並んで行ったアイネ。
そんな彼女を見送った俺は、胸に抱く呆れを隠そうともせず、視線を背後に移す。
「……で? お前は、いつになったら俺の背中から出てくるんだ?」
実はルミナリエが来た辺りから、ずっと俺の後ろに隠れていたルクスリア。
そんな彼女に疑問を投げると、その身体が怯えたように、ビクッと震えた。
例の件が原因で、ルミナリエと向き合うのが気まずいのは分かるけど、逃げた所で問題の先送りにしかならないだろうに。
一方、ルミナリエはというと、ルクスリアの奇行に慣れているからか、特に気にした様子は無い。
とはいえ、全く心配していない、という訳でも無いようで、何があったのかと視線で問い掛けてくる。
まったく、これじゃあ、どっちが年上だか分かんねぇな。
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