全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ
シルクの夢
「ああ、回復魔法に通じた人材が確保できてないって言われてな。魔王には世話になった恩もあるし、俺自身の夢を叶えるのにも丁度よかったからさ」
転生だの勇者だの、話すと面倒な事になる事情については適当に伏せつつ、それでいて嘘を交えないまま、アイネに状況を説明した俺。
魔王と出会った経緯については詳しく話していないが、もはや俺なら何でもありだと思われているのか、追求される事は無かった。
話が早いのは助かるが、相手の言うことをそのまま飲み込む、この素直さは美徳だけど将来が心配になるな。
放っておくと、そのうち俺みたいな悪い男に騙されそうだ。
この学園に通う事になったら、その辺りの機微についても、しっかりと学んでほしいもんだな。
「ほほう。貴方の夢ですか。それは初耳ですね。具体的には、どのような内容なのですか? 差し障りが無ければ教えて下さい」
今の今まで、ルミナリエの復旧作業をハラハラした様子で見守っていたルクスリアが、耳聡く話を聞きつけて会話に入ってきた。
そんなに俺の話に興味があったのか、それとも単に状況把握能力に優れているのか判断に迷う所だな。
とはいえ、どちらにしろ、俺の答えは変わらない。
「内緒だ。……まぁ、どうしても知りたいって言うなら別に教えてもいいけど、それなりに高く付くぞ?」
「こう言っては何ですが、お金なら売るほどありますよ? 私は物欲が殆ど無いので、魔王様や姫様に貢ぎ物を献上するくらいしか使い道がありませんからね!」
『お金なら売るほどある』の部分ではなく、『貢ぎ物を献上する』の辺りを強調して、自慢げに薄い胸を張るルクスリア。
どうやら、二人に対する忠義を、形あるもので示す喜びに浸っているらしい。
そして、そんなルクスリアに対して、アイネが羨望の眼差しを向ける。
「さ、流石ですね……。やっぱり魔王様の右腕ともなると、武力や知力や権力だけじゃなくて、財力まで兼ね備えてるんですか。私には無いものばかりで本当に羨ましいですっ」
ちなみに、俺の話をした時に、ルクスリアの紹介も改めて済ませている。
二人が最初に森で会った時は非常事態だったし、落ち着いて話す暇も無かったからな。
それからというもの、ルクスリアを見つめるアイネの視線には、妙な憧れフィルターが掛かってしまったようで、事あるごとにルクスリアを持ち上げている。
確かに、ルクスリアが優秀なのは事実だけど、色々と行き過ぎている所があったり、逆に抜けている所も多かったりするので、その幻想は遠からず打ち砕かれるだろうなぁ。
「生憎、俺も物欲が薄くてな。金には興味が無い。秘密の対価は秘密で支払って貰わないとな? 例えば、誰にも言えない恥ずかしい黒歴史とか」
「……そうですか。なら残念ですが、この話は無かったということで」
わざと嫌らしい笑みを浮かべる事で、執着を断ち切る目論見は上手くいったらしい。
正直、それほど大した秘密でも無いんだけど、ただただ気恥ずかしいんだよな。
大人しく諦めてくれたようで何よりだ。
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