全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ
崇拝と恋は紙一重
「魔王に負けて、魔王に救われた? ……それは、つまり、驕り高ぶっていた、お前の鼻を圧し折って、改心させてくれたのが魔王だったという事か?」
「少し、違います。私が身の程を弁えるようになったのは、とある事件が切っ掛けでした。そして、その件で危うく殺されかけた所を魔王様に救って頂いたのです」
うーん、どうにも要領を得ない話だけど、これだけ抽象的な言い回しをしている以上、その事件について詳しく説明する気は無いんだろうな。
まぁ、本人からしたら相当な黒歴史みたいだし、積極的に話したい事でも無いだろう。
……あるいは、もっとルクスリアに信頼されるか、特殊な状況に陥ったら教えてくれるかも知れない。
ただ、今の話で、1つだけツッコみたい部分があった。
「……なぁ、たしか初めての敗北が魔王で、二回目が俺って話だったよな? でも、今、『危うく殺されかけた』って聞こえた気がするんだけど?」
暗に、それは敗北に含まれないのか? と問いかける。
「……あれは無効です。魔王様が参戦して勝敗は有耶無耶になりましたし、そもそも一対一なら不覚を取る事もありませんでしたから」
どこか拗ねたような顔付きで、ぷいっと顔を背ける、ルクスリア。
相変わらず細部については伏せているけど、微妙に言い訳がましく聞こえるな。
普段のルクスリアなら、誰が相手で、どれだけ卑怯な手段を使われても、負けは負けだと素直に認めそうな気がするし。
やはり、それだけ特別な思い入れがあるという事だろう。
「あっそ。なら、それは良いや。それで? 肝心の魔王に敗北したって話は、何が切っ掛けで、そんな流れになったんだ?」
「ああ、それは単純な話です。その事件を切っ掛けにして、魔王様の元で働く事となった私は、あっという間に、この心を奪われてしまったのですよ。そこで、魔王様に勝負を挑んだのです。勝った方が相手に何でも命令できるという条件で。もちろん、私が勝った暁には、妻にして下さいと命令するつもりでした。まぁ、結局、あっさりと負けてしまったので、この想いは伝えられず仕舞いでしたけど」
「……お前って、魔王の事を崇拝してる癖に妙に図々しい時があるよな」
例の事件とやらを通して、身の程を弁えるようになったんじゃ無いのかよ。
あげく、既婚者になった今でも諦めきれずに妾になるとか言い出す始末だし。
というか、ほいほいと安請け合いしたヴェノもヴェノだな。
万が一にも負けは無いと思って、胸を貸すつもりで勝負を受けたのかも知れないけどさ。
もしくは、本当に自分に勝てたなら、魔王の座を譲るつもりだったのか。
「崇拝してる相手だからこそ、勝ち取りたいと思うのですよ。シルクさんだって、価値を感じないモノの為に戦ったりしないでしょう?」
「……まぁ、それはそうだけどな。ただ、崇拝の対象って、どちらかと言うと、手を出すのが恐れ多く感じる存在じゃないのか?」
「人間の場合は、そうかも知れませんね。ですが、魔族は自尊心や対抗意識が強いので、たとえ尊敬している相手でも、いつかは乗り越えないと気が済まないのですよ。あるいは、対等な存在になるとか、自分のモノにするとか。……といっても、私も魔王様に仕えて間もない頃は畏怖が勝っていて、恋心を自覚するまでに時間が掛かりましたけど」
その頃の自分を思い出しているのか、どこか遠い目をして苦笑するルクスリア。
コイツにも魔王を恐れていた時期があったのか。
出来れば、そのまま恐れていてくれた方が、俺的には都合が良かったかも知れないけどな。
「少し、違います。私が身の程を弁えるようになったのは、とある事件が切っ掛けでした。そして、その件で危うく殺されかけた所を魔王様に救って頂いたのです」
うーん、どうにも要領を得ない話だけど、これだけ抽象的な言い回しをしている以上、その事件について詳しく説明する気は無いんだろうな。
まぁ、本人からしたら相当な黒歴史みたいだし、積極的に話したい事でも無いだろう。
……あるいは、もっとルクスリアに信頼されるか、特殊な状況に陥ったら教えてくれるかも知れない。
ただ、今の話で、1つだけツッコみたい部分があった。
「……なぁ、たしか初めての敗北が魔王で、二回目が俺って話だったよな? でも、今、『危うく殺されかけた』って聞こえた気がするんだけど?」
暗に、それは敗北に含まれないのか? と問いかける。
「……あれは無効です。魔王様が参戦して勝敗は有耶無耶になりましたし、そもそも一対一なら不覚を取る事もありませんでしたから」
どこか拗ねたような顔付きで、ぷいっと顔を背ける、ルクスリア。
相変わらず細部については伏せているけど、微妙に言い訳がましく聞こえるな。
普段のルクスリアなら、誰が相手で、どれだけ卑怯な手段を使われても、負けは負けだと素直に認めそうな気がするし。
やはり、それだけ特別な思い入れがあるという事だろう。
「あっそ。なら、それは良いや。それで? 肝心の魔王に敗北したって話は、何が切っ掛けで、そんな流れになったんだ?」
「ああ、それは単純な話です。その事件を切っ掛けにして、魔王様の元で働く事となった私は、あっという間に、この心を奪われてしまったのですよ。そこで、魔王様に勝負を挑んだのです。勝った方が相手に何でも命令できるという条件で。もちろん、私が勝った暁には、妻にして下さいと命令するつもりでした。まぁ、結局、あっさりと負けてしまったので、この想いは伝えられず仕舞いでしたけど」
「……お前って、魔王の事を崇拝してる癖に妙に図々しい時があるよな」
例の事件とやらを通して、身の程を弁えるようになったんじゃ無いのかよ。
あげく、既婚者になった今でも諦めきれずに妾になるとか言い出す始末だし。
というか、ほいほいと安請け合いしたヴェノもヴェノだな。
万が一にも負けは無いと思って、胸を貸すつもりで勝負を受けたのかも知れないけどさ。
もしくは、本当に自分に勝てたなら、魔王の座を譲るつもりだったのか。
「崇拝してる相手だからこそ、勝ち取りたいと思うのですよ。シルクさんだって、価値を感じないモノの為に戦ったりしないでしょう?」
「……まぁ、それはそうだけどな。ただ、崇拝の対象って、どちらかと言うと、手を出すのが恐れ多く感じる存在じゃないのか?」
「人間の場合は、そうかも知れませんね。ですが、魔族は自尊心や対抗意識が強いので、たとえ尊敬している相手でも、いつかは乗り越えないと気が済まないのですよ。あるいは、対等な存在になるとか、自分のモノにするとか。……といっても、私も魔王様に仕えて間もない頃は畏怖が勝っていて、恋心を自覚するまでに時間が掛かりましたけど」
その頃の自分を思い出しているのか、どこか遠い目をして苦笑するルクスリア。
コイツにも魔王を恐れていた時期があったのか。
出来れば、そのまま恐れていてくれた方が、俺的には都合が良かったかも知れないけどな。
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