全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ
絡み合う謎
「……これが誘拐事件で、その犯行が魔族によるものだとしたら、何故わざわざ人間界まで行って攫ったんだろうな? ターゲットは魔王学園の受験生で、魔界に来るのが分かってるんだから、こっちに来てから攫った方が、ずっと手間もリスクも少ないのに」
ルクスリアに対する疑問が浮かんだものの、今は優先すべき話題が他にあるため、それについては後回しにする。
そして、俺の言葉を受けたヴェノは、顎に手を当てて考え込んだ。
「そうですねぇ。ターゲットが受験生だと知らなかったのか、それとも人間に罪を擦り付けたかったのか、あるいは……魔界に来られると不味い事情でもあったのか」
「……二つ目と三つ目は分かるんだけどさ、ターゲットが受験生だと知らなかった、なんて可能性があるのか? 行方不明になった全員に共通する特徴だろ?」
適当に(あるいは別の基準で)選んだ相手が全員、うちの受験生だったなんて、そんな偶然は考えにくいぞ。
「実は、受験生の失踪を差し引いても、人間界における行方不明者の数が例年より多いらしいのです。確たる証拠は有りませんが、他にも誘拐された人間がいる可能性は否定できません」
つまり、適当に選んだ何十人(もしくは、それ以上の人間)の中に受験生が入っていた、という訳だ。
あくまでも可能性の一つだけど、あり得ない話じゃない……か?
「……なるほどな。あと気になる事が、もう一つ。今回の入学試験に唯一、参加できた人間の話だ。“アイネ”っていう赤髪の女の子なんだけど、もちろん知ってるよな?」
「えぇ、シルクさんが試験開始から終了まで付きっきりで見守っていた女の子ですよね?」
ヴェノの言葉に、ピクリと反応したルクスリアが蔑みの視線を向けてくる。
「……シルクさん、それは本当ですか? いくら可愛い女の子だからといって公私混同は、どうかと思いますが」
「いや、そんなんじゃねぇから。試験前に成り行きで知り合ってな。妙な違和感を覚えたもんだから監視してたんだよ。想定してたトラブルとは違ったけど、結果的に事件に遭遇したんだから、俺の判断は間違って無かったろ? それに、アイネが事件前後で不審な行動を取らなかった事も確認できたしな」
俺の言い分に(一応は)納得したのか、“失礼しました”と素直に頭を下げるルクスリア。
その顔を見ても、特に不満や疑念は感じられない。
それでも、どこか疑いの気配が漂ってる気がするんだよなぁ。
俺の好みは、どちらかと言うと歳上派なんだけど。
「シルクさんが監視していたのなら、間違い無いでしょうね。私が見ていた範囲でも不穏な挙動はありませんでしたし。流石に学園に来る前の事までは分かりませんが。……それにしても、彼女は、どんな手段で魔界まで無事に辿り着いたのでしょうね?」
ヴェノの疑問は俺も抱いていたものだが、未だに答えは出ていない。
「さぁ……。定期船には受験生が乗って無かったって話だし、自前の船でも持ってたのかな? あるいは転移魔法の使い手が身内に居て送って貰ったとか? まぁ、その辺は俺から探りを入れてみるよ。どうせ、アイツは一次試験通過だろ?」
「そうですね。危なっかしい所はありますが、人間と魔族を分け隔てなく受け入れる慈愛の心を感じましたし、実力的にも最低ラインは上回ってますから。アイネさんについては引き続き、シルクさんにお任せします。それから、事件の発端となった彼女の事ですが……」
失踪事件に関する話題は、そこで一区切りとなり、そこから先は例の魔族の少女の話が始まった。
そして、一通りの話を聞き終わった俺は、2次試験の会場となる魔法実験室に向かったのだった。
ルクスリアに対する疑問が浮かんだものの、今は優先すべき話題が他にあるため、それについては後回しにする。
そして、俺の言葉を受けたヴェノは、顎に手を当てて考え込んだ。
「そうですねぇ。ターゲットが受験生だと知らなかったのか、それとも人間に罪を擦り付けたかったのか、あるいは……魔界に来られると不味い事情でもあったのか」
「……二つ目と三つ目は分かるんだけどさ、ターゲットが受験生だと知らなかった、なんて可能性があるのか? 行方不明になった全員に共通する特徴だろ?」
適当に(あるいは別の基準で)選んだ相手が全員、うちの受験生だったなんて、そんな偶然は考えにくいぞ。
「実は、受験生の失踪を差し引いても、人間界における行方不明者の数が例年より多いらしいのです。確たる証拠は有りませんが、他にも誘拐された人間がいる可能性は否定できません」
つまり、適当に選んだ何十人(もしくは、それ以上の人間)の中に受験生が入っていた、という訳だ。
あくまでも可能性の一つだけど、あり得ない話じゃない……か?
「……なるほどな。あと気になる事が、もう一つ。今回の入学試験に唯一、参加できた人間の話だ。“アイネ”っていう赤髪の女の子なんだけど、もちろん知ってるよな?」
「えぇ、シルクさんが試験開始から終了まで付きっきりで見守っていた女の子ですよね?」
ヴェノの言葉に、ピクリと反応したルクスリアが蔑みの視線を向けてくる。
「……シルクさん、それは本当ですか? いくら可愛い女の子だからといって公私混同は、どうかと思いますが」
「いや、そんなんじゃねぇから。試験前に成り行きで知り合ってな。妙な違和感を覚えたもんだから監視してたんだよ。想定してたトラブルとは違ったけど、結果的に事件に遭遇したんだから、俺の判断は間違って無かったろ? それに、アイネが事件前後で不審な行動を取らなかった事も確認できたしな」
俺の言い分に(一応は)納得したのか、“失礼しました”と素直に頭を下げるルクスリア。
その顔を見ても、特に不満や疑念は感じられない。
それでも、どこか疑いの気配が漂ってる気がするんだよなぁ。
俺の好みは、どちらかと言うと歳上派なんだけど。
「シルクさんが監視していたのなら、間違い無いでしょうね。私が見ていた範囲でも不穏な挙動はありませんでしたし。流石に学園に来る前の事までは分かりませんが。……それにしても、彼女は、どんな手段で魔界まで無事に辿り着いたのでしょうね?」
ヴェノの疑問は俺も抱いていたものだが、未だに答えは出ていない。
「さぁ……。定期船には受験生が乗って無かったって話だし、自前の船でも持ってたのかな? あるいは転移魔法の使い手が身内に居て送って貰ったとか? まぁ、その辺は俺から探りを入れてみるよ。どうせ、アイツは一次試験通過だろ?」
「そうですね。危なっかしい所はありますが、人間と魔族を分け隔てなく受け入れる慈愛の心を感じましたし、実力的にも最低ラインは上回ってますから。アイネさんについては引き続き、シルクさんにお任せします。それから、事件の発端となった彼女の事ですが……」
失踪事件に関する話題は、そこで一区切りとなり、そこから先は例の魔族の少女の話が始まった。
そして、一通りの話を聞き終わった俺は、2次試験の会場となる魔法実験室に向かったのだった。
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