全ての魔法を極めた勇者が魔王学園の保健室で働くワケ

雪月 桜

黒歴史を封じるために

「……そう言えば、アイネとルミナリエの二人は、どうしたんだ? いま結界を解いたけど、こっちに来る気配が無いぞ。あと、一緒に居た魔族の二人は?」

ルミナリエに対する罪悪感で沈んでいる、ルクスリアの気分をまぎらわせるべく、適当な話題を口にする。

本音を言うと、さっさとヴェノの所に行って、白鴉はくあの事を相談したいんだけど、ルクスリアが落ち込んだ原因の一端いったんは、俺がになってるから、放り出すのも気が引ける。

まぁ、根本的には本人の注意不足が要因だから、自業自得と言えなくも無いけどさ。

とはいえ、俺は、ただ悪意の無い悲劇を見過ごしたく無かっただけで、別にルクスリアを追い詰めたかった訳じゃないしな。

「アイネというのは……あの人間の少女ですね? 魔族の二人、というのが誰を指しているのか正確には分かりませんが、確かに二人の魔族が姫様に保護されて居ました。その四人なら今頃、第2演習場前の広場で他の受験者と待機しているはずですよ。これから、一次試験の結果発表が行われる予定ですから。一応、そのアイネさんと姫様には今回の件について緘口令かんこうれいいておきましたから、他言の心配はないでしょう。残りの二人は事件発生時から意識が無かった、との事でしたので、特別な処置はしていません。……ただ、少女の方は事件に深く関わっているという話でしたから、後ほど詳しい事情聴取が必要となるでしょうね」

流石に魔王の右腕と言うべきか、仕事の話になると即座に気分が切り替わるようで、スラスラと現状を説明してくれた。

狙い通りに事が進むのは有りがたいが、こんなのは対症療法に過ぎない。

本当の意味で元気を取り戻すためには、やっぱり早いところルミナリエと腹を割って話さないとな。

「なるほど……。ホント、ルクスリアはすごいよな。あれだけ調子が悪そうだったのに、あっという間に飛び起きて、それだけ的確に動けるんだからさ」

当事者同士の話し合いについて、俺が仲立なかだちをすべきか、その場合どのように段取るべきか、などと考えつつ、なかば無意識に口を動かす。

そのせいで、俺は自分の失言に気付くのに遅れてしまう。

「……えっ? なぜ、私の調子が悪かった事を知っているのですか? 私は女子寮の脱衣所で倒れて、通りがかった管理人の方に助けられたはずですが……」

しまった!

コイツの黒歴史を夢という形で誤魔化して封じるために、そういうストーリーになってたんだ。

つまり、俺とコイツは、男子寮で会っていない、という事になる。

……どうやって辻褄つじつまを合わせよう。

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