聖獣に転生したら、もふもふされ過ぎてつらい
王都の情勢と第一王子
騎士団の宿舎についたら、カイとレイもそこにいた。そこで私は、今の王都の情勢について、ジルベスターが話してくれた。
「王妃だが……あの方は二番目なんだ」
「きゅうん?」二番目?
ジルベスター曰く、王様には愛する王妃がいた。貴族には珍しい恋愛結婚で、二人は仲睦まじく、その後第一王子を授かった。だが、最初の王妃様は産後の肥立ちが悪くずっと寝たきりになり、王子が5歳になったときに亡くなったそうだ。
王様は側室を持たず、王妃様が亡くなった後も、王妃様以外を娶らないと公言していた。しかし、後取りが一人だけと言うのは王族にとってはよろしくない。なので、貴族たちが結婚をごり押しして、二番目に王妃になったのが、あの人なのだ。
そして、第二王子が生まれたのだが、そこで問題が。王様は自分の後継者は第一王子だと明言していたが、王妃様は自分の子である第二王子を王位につけたくなった。なので、あの手この手で、第一王子を追い落とそうとしているらしい。
なんて迷惑な!
「今回のドラゴン討伐もそうだ。俺達第二騎士団は、第一王子直轄の騎士でな。ドラゴン討伐を押し付けて第一王子の勢力を削ろうとしていたんだ」
「きゅん!」ひどい!
「でも、サーヤのおかげで被害はゼロだろ?だからさっき、忌々しそうに睨み付けてたんだ」
そう言うことか。なんか、偶然だけどざまぁみろ!!と私は心の中で王妃を罵倒しておいた。
他にも色々と教えてくれた。
この国はエストレア王国。この大陸の三大国の一つらしい。
エストレア王国の騎士団は、今は4部門ある。王様直属の第一騎士団、第一王子直属のジルベスターが所属する第二騎士団、第二王子直属の第三騎士団、そして国土防衛を主な任務とする第四騎士団だ。
今回のドラゴン討伐は、ホントは第四騎士団の仕事だったが、王都にいる第四騎士団は今、王妃の無茶な命令を聞かざるえなく、王都にいない。
「だから、第三騎士団にも近づかないようにな。第二王子を盲信する貴族氏族ばかりだ」
「きゅん!」わかった!
「ほんと、サーヤ様は頭がいいですね」
「そうだよな。あ、サーヤ、遅くなったが、俺はカイ・マティアウスだ。よろしくな!」
「私は、レイ・マティアウスです。よろしくお願いしますね」
改めてジルベスターの側近である二人に自己紹介された。
「きゅうん?きゅ?」マティアウス?同じ?
「あぁ、私とカイは似ていませんが双子の兄弟なんですよ」
「そうそう!俺が兄でレイが弟だ」
「きゅん!」そうなんだ!
私はカイとレイに撫でられるのも好きだ。
そして、一通り説明を終えると、ジルベスターは本題を切り出した。
「サーヤ、頼みがある」
「きゅん?」なぁに?
「サーヤに第一王子を助けてほしい」
真剣な顔で私にお願いするジルベスター。森でも言ってたけど助けてほしいってどういうこと?と思っていると、ジルベスターが説明をしてくれた。
ジルベスターが言うには、王子は今、王妃の計略で毒を飲んでしまい、ずっと苦しんでいるそうだ。
この国にいる高位の魔導師に見てもらったが、誰も解毒できず、苦しみを和らげることしか出来ていない。そこで治癒魔法の使える私にお願いしているらしい。
そんなことならいくらでも言って!
私はジルベスターに抱えられて、王子の寝室へとやって来た。
コンコン
「ジルベスターです。側近のカイとレイと共に戻りました」
「……入っていいよ」
扉の奥から弱々しい声で許可が降りた。
中に入ると、謁見の間に負けず劣らずの豪華な部屋。その一角にある大きなベットにこちらを見る男の人がいた。
毒で顔色が悪いせいか、弱々しく見えるが、まさに貴公子といった感じのイケメンがいた。
「お帰りジル。無事でよかった」
「はい、ラルフ様。なんとか生きて戻れました」
「カイとレイもご苦労」
「「はい!」」
「じゃあ、色々教えてくれるかい?」
ジルベスターは【深淵の森】で起こったことを王子に説明していた。
うーん……暇だ。ジルベスターのマントの中って、ジルベスターの匂いがいっぱいで眠くなる。
私がうとうとしていると、突然ジルベスターに引っ張り出された。
「うきゅぅっ!?」なに!?
「……。」
「……きゅうん」…こんにちわ
目の前にイケメンの王子がいて、ビックリした。目の前の王子も私を見て驚いているようだ。
「君がサーヤかい?僕はラルフ、ラルフ・フォン・エストレア。ジルの上司で、この国の第一王子だよ」
「きゅん!」よろしく!
「ジルを助けてくれてありがとう」
王子は私に恐る恐る触れて、優しくもふもふしてくれた。お主、なかなかのお手前だな!もっとしてくれ!
「ふふ、可愛いね」
「きゅん!きゅぅん!」そうだろ?もっと!
「サーヤ、さっき頼んだこと…いいか?」
「きゅん!」勿論!
私はまず始めに鑑定を使った。ステータスは個人情報なので、体の状態だけ鑑定した。その結果──
状態:毒(弱呪い)
毒系の魔物からとれた毒を複数使い調合して作られたオリジナルの毒にかかっています。服用した際、呪いの効果が付与されました。解毒の際には、解呪も同時に行わなければ、治せません。(尚、呪いの術式は継続して発動中です)
どういうこと!?
呪い:負荷の呪い
儀式を継続的に行うことで相手に呪いを付与し続けます。儀式に手間がかかりますが、高位の鑑定でなければ見破れないというメリットがあります。
効果:相手の体力を奪い続けます。
つまり、毒で弱らせて、更に呪いで体力を奪い、徐々に徐々に弱らせて殺そうとしたのだろう。なんて卑怯な奴等なんだ!
「きゅん!」まかせて!
私はチート前回で治癒魔法を使った。
神様からもらった力だからね!治せないはずない!
「す、すごいね…体が軽くなったようだ!」
「ラルフ様!大丈夫なのですか?!」
「あぁ、なんだか生まれ変わった気分だよ。凄まじい回復魔法だ。ありがとうサーヤ」
「きゅん!」どういたしまして!
まぁ、回復魔法じゃなくて治癒魔法なんだけどね!
鑑定で知ったんのだけど、回復魔法と治癒魔法は別物なんだそうだ。
この世界で一般的に知られている回復系の魔法は、回復魔法、解呪魔法、解毒魔法(その他状態異常を含む)、この三種類だ。
回復魔法が体の外傷を治すことで、解呪魔法が呪いや病を治す。そして解毒魔法が毒や麻痺などの状態異常を治す魔法である。
ここでの常識は、回復系の魔法は素養がなければスキルを取得することが出来ない。そして、この世界の人間は、一つ回復系の魔法を覚えると他の回復系の魔物を覚えられないということだ。
つまり、同時に魔法を使えないということだ。
じゃぁ、回復魔法を持ってる人と、解呪魔法持ってる人、それぞれ別の人間を使えば?と思うかもしれないがそれも無理。
正確には「出来る可能性が限りなく低い」だ。
この世界で、魔法の重ねがけは容易にできるが、それは魔導師が1人の場合だ。1人の魔導師が魔法を重ねがけで行うことは、普通にある。だが二人となると話は別だ。
生物は皆魔力を持っているが、指紋のようにどれ一つとして同じものがない。故に、他者の魔法と組み合わせようとすると、反発がおき、最悪の場合魔力爆発を起こす。
限りなく魔力の質が似ていて、何十年も修行すれば出来なくもないだろう。だが、そんな手間をかける人間などいない。だから「出来る可能性が限りなく低い」だ。
では、私の持つ治癒魔法は?
簡単なことだ。私の持つ治癒魔法は、その一つで回復、解呪、解毒を行うことが出来るチートスキルなのだ。
尚、この治癒魔法は探せば精霊とか、私以外の聖獣とかなら持ってるかもだが、人類には居ないのだそうだ。
話は戻るが、ジルベスター達が言っている回復魔法は前者なので、私の使う治癒魔法はかなり異質に見えるだろう。
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