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聖獣に転生したら、もふもふされ過ぎてつらい

シーチキンたいし

初めての異世界人は騎士


人間が近くにいると信じ走っていると、何だかその方角から金属と金属がぶつかるような音と怒号が聞こえてきた。

やっぱり人間!

どうやら何かと戦闘しているようだ。私はそこがギリギリ見える位置に身を潜めて様子をうかがった。

「ギャォォオオオオオオッ!!!!」

「きゅん?!!」

獣の大きな鳴き声に私はビビった。そして、その姿をみてさらにビビった。

だってそれは前世の物語では、ファンタジーの定番で、最強の存在として描かれていることの多いに生物。そう───

ド・ラ・ゴ・ン!!!

ビックリだよね。ってことは1ヶ月まえのあの轟音と地震はこいつのせいか。

おそらく人間のいる国の方からこちらに向かって飛んできたんだろう。だって私の頭上を飛んでいっていたら気付くし。

そして、もしかするとこの人間たちはこのドラゴンを調査しに来たのかも知れない。だってなんか、ザ・騎士みたいな格好いい鎧をしている。初異世界人は騎士かぁ。

さすがに戦闘中に割って入れるほど勇気はない。なので、遠くから人間とドラゴンの闘いを凝視していた。

隊列を組み、魔法で翻弄しながら攻撃を仕掛ける騎士。

あれ?この人たちかなり強いんじゃね?

そして、その攻撃を受けながらもあまり効いていなさそうなドラゴン。鱗に傷はついているが、致命傷には至っていないようだ。流石ドラゴン。

すると、ドラゴンの尻尾の不意打ちにあたった一人の騎士を庇うように誰かが間に入って、その人が私の方へと飛ばされてきた。

「きゅ?!」

ガザガザガサッ!

「う”ぅ”う”……ッ!クソッ!足が……」

少し手前で落ちた騎士。どうやら落ちた衝撃で足が折れてしまったようだ。怪我が痛々しい。

その騎士は驚くほどイケメンだった。

流れるようなシルバーブロンドの綺麗な髪と私の額にある石と同じ赤い瞳。前世にこんな人いたら、キャーキャー騒がれること間違いなしの美男子だ。

だが何故だろう?あの人間をみた瞬間、私は心臓がドクリと大きく脈打ったような気がした。

あの人とは知り合いでも何でもないのに、心が…もっと奥の魂が…この人を知っていると叫んでいる。

私は最初、助けるかどうか迷ってうろうろしていたが、意を決して彼の前に姿を見せることにした。












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「う”ぅ”う”……ッ!クソッ!足が……」

ドラゴンに吹っ飛ばされた俺は、自身の怪我を確認すると。常備していたポーションはもうない。そして、この怪我では戦線復帰は無理だ。

もし、ドラゴンを倒せたとしても森の外まで持つかも分からない。

ここまでか…そんな不吉なことが頭をよぎった。


俺達の住む国、エルカトラン王国は比較的平和な国だ。周辺諸国とは早くに同盟を結び、戦争の火種をたてないようにし、もう数十年は平和を保っている。

異種族とも国交を持つ、平和的大国として有名である。

そんな国で王宮務めの騎士をしていた俺は、この度、ドラゴンの目撃情報を元に、討伐隊が組まれることになったので、その隊長としてこの遠征に参加していた。

実は今、平和を保っているエルカトランだが、その平和が脅かされていた。理由は簡単、お家騒動だ。

実は王家には今、二人の王子がいて、誰が次の王になるかと、派閥争いが始まっているのだ。勿論王は、正妃との子であり第一王子を後継者にと考えている。それでも我が子(第二王子)を次代の王にしたい側妃が暗躍して、対立している。

そんな中、側妃の計略により、第一王子は今毒を盛られて床に伏している。その静養のうちに王宮の派閥を広げられ、今、第一王子の立場が危うい。そして今回、このドラゴンの討伐隊に選ばれた騎士は皆、第一王子派の騎士たちなのだ。

ここまで言えば誰でもわかる。側妃が第一王子の追い落としに拍車を掛けるために、第一王子の守りをしている戦力を落とさせるためだ。

出発前王も、第一王子も、「すまない」と申し訳無さそうに謝っていた。

王のためにも、なにより仕える第一王子のためにも……

「こんなところで終わってたまるかッ!」

ガザガザ!

「!!」

目の前の茂みが揺れた。

もしかしたら、血の臭いにつられてきた魔物かもしれない。

「ッ!クソ!くるなら来い!」

剣を構えながら警戒すると、茂みから2つ耳が出てきた。

「……?!な…んだ?」

そして、その耳はなんだかこちらが申し訳なくなるくらいぶるぶると震えていた。

俺はどうすればいいのかよくわからず、ゆっくりと剣をさげ地面に下ろすと、耳は安心したように震えが止まった。

するとゆっくりとその姿を現した。

「……は?」

小さな獣だった。少し長い耳と、ぷっくりとした顔、胸毛がもっこりとあり、幼体なのか、短足の可愛らしい真っ白な獣。額の赤い宝石と同じ瞳がこちらをじっと見ていた。

「み、見たことない魔獣だな……」

コテンと首をかしげたその小さな獣は、少しずつ少しずつ距離を詰め、俺に近づいてきた。

「お前……ここは危険だぞ…早く逃げろ…」

「きゅん!」

高くて可愛らしい鳴き声で鳴いた小さな獣は、俺に近づいてスンスンとこれでもかというくらい匂いを嗅いで、嬉しそうに俺にすり寄ってきた。

「この深淵の森にこんな人懐っこい魔獣なんていたか?」

基本的に【深淵の森】に生息する魔獣や魔物は凶暴だ。人慣れしている獣などあり得ない。

「お前いったい……ッ!?」

何者だ?と聞く前に、小さな獣が魔法を展開させた。驚いた俺は、攻撃か?!と身構えたが、自身の体の変化に戸惑った。

「これは……回復魔法か?!」

「きゅきゅう!」

「俺を助けてくれるのか?」

「きゅう!」

小さな獣が回復魔法を使ったことにも驚いたが、その精度にも驚きだ。まるで怪我でもしていなかったかのように完治していた。

恐らく治癒魔法のスキルレベルはかなり高くなければ無理だ。

「動く……ありがとう、小さな魔獣。お前に礼をしたいところだが、俺は仲間を助けにいかなくちゃならない。この礼はいつか必ずする」

「きゅう…」

「すまない、俺の名はジルベスター・アンダルシアン。この名に誓って約束は守る」

「きゅう」

頭のいい魔獣なのかもしれない。会話を理解しているかのように相槌をうった。

俺はそれを確認して、再びドラゴンの戦場へと戻っていった。

「隊列を崩すな!!」

「だ、団長!!!」

「ご無事でよかった!さすが団長!」

「ぼさっとするな!絶対生きて帰るぞ!」

「「「はいッ!!!!!!」」」


数時間後、死闘の末ようやくドラゴンの討伐に成功した。


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