聖獣に転生したら、もふもふされ過ぎてつらい
どうやら死んだようです。
こんなこと、誰が想像しただろう。
「きゅっきゅぅ~~?!」
どうやら立花 紗綾18才は、獣に転生してしまいました。
この状況を説明するには、つい数分前の出来事が関係している。
本当に数分前の私は、「大学受験めんどくさいなぁ」なんて思いながら、高校から家に帰宅していた。電車に乗り、徒歩で10分程度の何の変哲もない帰り道。平凡で、平和で、ずっと変わることがないと思っていた。
そんなとき、ふと、帰り道に必ず通る公園に目を向けると、きれいな白い物体が目に入った。
「きれー!真っ白な猫ちゃんだ。どこの家の子だろう?この辺であんな子見かけたことないけど…」
その猫は本当に純白の毛並みの美しいシルエットの猫だった。目立った汚れもないので、室内で飼われていた猫だろう。しかし、ここら辺はご近所付き合いが多く、仲が良いため、ご近所の猫を飼っている家は誰もがだいたい把握している。
それなのにあんな白くて綺麗な猫を飼っているなんて見たことも聞いたこともない。
猫だけでなく、小動物全般が大好きな紗綾は、好奇心には勝てず、鞄の中に常備していたおやつをあげようと、白い猫に近付いた。
「白い猫ちゃ~ん!こっちおいで!おやつあるよ!」
白い猫は、紗綾に気付き、少し警戒するように身を屈めて、数歩後ずさった。
「んー、人慣れしてないのかな?」
直接手であげるのを諦め、目の前におやつをおいて、紗綾も数歩後ずさった。
すると、白い猫は、警戒しながらも少しずつおやつに近づき、クンクンと執拗におやつの匂いを嗅いだ。確認し終えたのか、おやつを一口食べると、白い猫は嬉しそうにがっついた。
「よしよーし!まだまだあるよー!」
鞄の中から追加でおやつを取り出すと、白い猫は警戒もせず紗綾の近くに寄り、手を出すとそのまま食べてくれた。
「かわいい~!」
しばらくその白い猫と戯れていると、辺りはすっかり日が沈んで暗くなってきていた。
「やば!帰らなきゃ!ごめんね猫ちゃん、私もう帰らなきゃいけないの」
 
「……にゃん」
「うぅ……か、かわいい!でもダメ!また今度ね?」
紗綾は誘惑を振り切って帰宅への道に戻ることにした。
しかし、紗綾はその場から動けなかった。
何故なら、振り返ったその先に、こちらをじっと見つめて立つ、不審人物がいたからだ。パーカーの帽子を目深に被っていて、此方からは良く見えない。
しかしその口元が、不気味に笑っていた。
「その猫はかわいいね……君の猫?」
突然話しかけてきた不審者。そう言えば、朝の回覧板に最近不審者が出没するので気を付けてっていう警告文があったのを紗綾は今になって思い出した。
「……私の猫じゃないです。もう帰りますから」
「そんなこと言わずにさ?俺とお喋りしようよ」
「…私急いでるんで!」
「少しくらいいいだろ?な?」
「しつこい!もう!いい加減にして!」
「……そういう態度とるんだ。なら、変わりにその猫と遊ぼうかなぁ」
「!?さ、サイテー!」
「君の猫じゃないんだろ?野良猫なら、殺したって問題ないじゃん」
「ッ!!」
紗綾は男の返答に身震いした。
動物とはいえ、命は命。それを簡単に奪えるその神経が理解できなかった。それ故に、得体の知れない恐怖が紗綾を襲った。
ここにいてはいけない。
こいつから逃げなければならない。
頭のなかで警報が鳴り響いた。紗綾は瞬時に白い猫を抱き抱えて、一目散に逃げた。
「ごめんねっ!猫ちゃんっ……はぁ、はぁ、私のせいでッ!」
「まってよー!逃げることないだろー?」
男は紗綾を追って走っていた。
紗綾は少し様子を見るように後ろに目線だけをやると、どこに隠し持っていたのか、男の右手にナイフのようなものが握られていた。紗綾は前を向き、一心不乱に走った。
あの男に捕まったら殺される。
紗綾は恐怖のなか、走りながらそう確信していた。故にもつれる足を無理矢理動かして、前へ前へと走る足を止めなかった。
「ハァ、……ハァッ!うぅ、もう、ハァッ!息がッ!」
走りすぎて酸欠でだんだんと意識が朦朧としてきていた紗綾は、自分が飛び出した場所を理解できていなかった。
そこは赤信号の横断歩道。
大きなトラックが目の前に来ていた。
その一瞬、紗綾は考えた。このままじゃ死んでしまう。腕に抱えた猫ちゃんごと。今、放り投げるように手放せば、猫の身体能力なら多少は怪我をするかもしれないが、着地できるだろう。今ならまだ猫ちゃんだけは助けられる──と。
故に紗綾は迷うことなく猫を手放した。
「ごめんね、猫ちゃんッ」
それが、立花 紗綾の最後の瞬間だった。
「やあ!ようこそ天界に!」
「………………は?」
紗綾は気がつくと、真っ白な何もない空間に立っていて、目の前にかなりのイケメンの外人さんがたっていた。
病院…ではなさそうだ。
「あの……ここは?私は……」
「トラックに引かれたのは覚えてる?」
「はい…」
「君はね、そのまま即死。死んでしまったよ。でも安心して、君の抱えていた猫は無事だったよ。今君は魂の状態で天界に招かれてるんだ。ちなみに僕は神様!その一柱さ」
「……そう、ですか」
「ずいぶんあっさりだね?驚かない?」
「…充分驚いてますよ」
いきなり神とか、頭が混乱しそうになる。しかし、自分が死んでしまったことは、自分自身が理解していた。
そして、そのはずの私が、こうして喋ったり思考できると言うことは、なにか大きな力が働いているんだろうと思った。なので、神様と言われれば、納得できる。
それに、早くに両親をなくし、親戚の家に居候している身だった紗綾。両親も交通事故で突然だった。なので、抗えない死と言うものを、紗綾は他人より知っていた。
「君は本当……大人びてるね。いや、そう成らざるえなかったのかな」
「……それは」
「まぁ、いいよ。今回、君を天界に招いた理由なんだけどね、聞きたい?」
「普通……ないんですか?」
「うん。特別な魂以外は、普通に輪廻の輪に乗って、次の生へと転生する。勿論その時に魂を浄化するから、記憶も何もかも綺麗になってからね」
どうやら神様が言うには、普通は、工場のベルトコンベアみたいに流れ作業で魂は分別され、輪廻の輪に乗って、次の生へと転生する。そしてそのさい、その魂のもととなる記憶や感情などの個人の情報はまっさらに消去されるらしい。
しかし、例外もある。
特別な魂。世界に貢献するような偉大な人などは、神のすすめで、魂を天界に召し上げられたりするらしい。
「じゃぁ、私は?」
「君はかなり例外。何でかっていうと、君が創造神様のペットを助けたからだよ」
「………………………………はい?」
「君が助けたあの白い猫はね、創造神様のペットなんだよ。所謂“神獣”ってやつさ。本来君はあそこで死ぬはずじゃなかった。まぁ、重体にはなるけど。でも、一命をとりとめるはずだった。でも、そこに居るはずのない神獣が居合わせてしまったせいで運命が歪んで君を死なせてしまったんだ」 
「……創造神様の……ペット?!」
死ぬはずじゃなかった、ともっと重要なことを言っていたが、それよりも最初の言葉が気になって、それどころではなかった。
「創造神様は神々の頂点。ホントに偉い人だから、僕みたいな下っぱの神とは全然違うからね」
「そ、そんな人のペットだったんですね…。でもなんであんなところに?」
「構われ過ぎて家出しちゃってたんだって」
「家出……」
神様の家出猫を助けて死んだ……なんか死んだ理由がマヌケっぽい。
難しいことはよく分からないが、あの白い猫ちゃんが無事ならそれでいい気がしてきた。
「それで、あの子を見つけてくれたことと、助けてくれたこと、創造神様がいたく君に感謝していてね。若くして死んでしまったことを哀れんで、君に御礼をしたいそうだ」
「え?そんなのいいですよ」
「そう言うわけにはいかないよ」
神様の真剣な表情に押され、御礼を受けとることにした。
「わかりました……じゃぁ、もらいます」
「うん!君にはね、僕の管理する世界への転生する権力が与えられるよ。勿論記憶もそのままでね。ちょうど君の世界で流行っているところで言う異世界転生ってやつさ」
「異世界…転生、私が……?」
「うん。争いばかりの荒廃した世界とかいやでしょ?僕の管理する世界は、絶対安全とは言いがたいけど、他の世界よりかは安定して平和なところだよ。君にはそこへいってもらうよ」
「そうですね…ありがとうございます」
その後も神様は丁寧に説明してくれて、私は神様の管理する世界、アルシエルに転生することとなった。
「じゃぁ、そろそろ送るよ」
「はい。なにから何までありがとうございました。創造神様にも、過分なご恩ありがとうございます。今度はもっとたくさん生きますとお伝えください」
「うん、わかったよ。じゃ、行ってらっしゃい!」
そして冒頭へと戻るのだ。
「きゅっきゅぅ~~?!」
どうやら立花 紗綾18才は、獣に転生してしまいました。
この状況を説明するには、つい数分前の出来事が関係している。
本当に数分前の私は、「大学受験めんどくさいなぁ」なんて思いながら、高校から家に帰宅していた。電車に乗り、徒歩で10分程度の何の変哲もない帰り道。平凡で、平和で、ずっと変わることがないと思っていた。
そんなとき、ふと、帰り道に必ず通る公園に目を向けると、きれいな白い物体が目に入った。
「きれー!真っ白な猫ちゃんだ。どこの家の子だろう?この辺であんな子見かけたことないけど…」
その猫は本当に純白の毛並みの美しいシルエットの猫だった。目立った汚れもないので、室内で飼われていた猫だろう。しかし、ここら辺はご近所付き合いが多く、仲が良いため、ご近所の猫を飼っている家は誰もがだいたい把握している。
それなのにあんな白くて綺麗な猫を飼っているなんて見たことも聞いたこともない。
猫だけでなく、小動物全般が大好きな紗綾は、好奇心には勝てず、鞄の中に常備していたおやつをあげようと、白い猫に近付いた。
「白い猫ちゃ~ん!こっちおいで!おやつあるよ!」
白い猫は、紗綾に気付き、少し警戒するように身を屈めて、数歩後ずさった。
「んー、人慣れしてないのかな?」
直接手であげるのを諦め、目の前におやつをおいて、紗綾も数歩後ずさった。
すると、白い猫は、警戒しながらも少しずつおやつに近づき、クンクンと執拗におやつの匂いを嗅いだ。確認し終えたのか、おやつを一口食べると、白い猫は嬉しそうにがっついた。
「よしよーし!まだまだあるよー!」
鞄の中から追加でおやつを取り出すと、白い猫は警戒もせず紗綾の近くに寄り、手を出すとそのまま食べてくれた。
「かわいい~!」
しばらくその白い猫と戯れていると、辺りはすっかり日が沈んで暗くなってきていた。
「やば!帰らなきゃ!ごめんね猫ちゃん、私もう帰らなきゃいけないの」
 
「……にゃん」
「うぅ……か、かわいい!でもダメ!また今度ね?」
紗綾は誘惑を振り切って帰宅への道に戻ることにした。
しかし、紗綾はその場から動けなかった。
何故なら、振り返ったその先に、こちらをじっと見つめて立つ、不審人物がいたからだ。パーカーの帽子を目深に被っていて、此方からは良く見えない。
しかしその口元が、不気味に笑っていた。
「その猫はかわいいね……君の猫?」
突然話しかけてきた不審者。そう言えば、朝の回覧板に最近不審者が出没するので気を付けてっていう警告文があったのを紗綾は今になって思い出した。
「……私の猫じゃないです。もう帰りますから」
「そんなこと言わずにさ?俺とお喋りしようよ」
「…私急いでるんで!」
「少しくらいいいだろ?な?」
「しつこい!もう!いい加減にして!」
「……そういう態度とるんだ。なら、変わりにその猫と遊ぼうかなぁ」
「!?さ、サイテー!」
「君の猫じゃないんだろ?野良猫なら、殺したって問題ないじゃん」
「ッ!!」
紗綾は男の返答に身震いした。
動物とはいえ、命は命。それを簡単に奪えるその神経が理解できなかった。それ故に、得体の知れない恐怖が紗綾を襲った。
ここにいてはいけない。
こいつから逃げなければならない。
頭のなかで警報が鳴り響いた。紗綾は瞬時に白い猫を抱き抱えて、一目散に逃げた。
「ごめんねっ!猫ちゃんっ……はぁ、はぁ、私のせいでッ!」
「まってよー!逃げることないだろー?」
男は紗綾を追って走っていた。
紗綾は少し様子を見るように後ろに目線だけをやると、どこに隠し持っていたのか、男の右手にナイフのようなものが握られていた。紗綾は前を向き、一心不乱に走った。
あの男に捕まったら殺される。
紗綾は恐怖のなか、走りながらそう確信していた。故にもつれる足を無理矢理動かして、前へ前へと走る足を止めなかった。
「ハァ、……ハァッ!うぅ、もう、ハァッ!息がッ!」
走りすぎて酸欠でだんだんと意識が朦朧としてきていた紗綾は、自分が飛び出した場所を理解できていなかった。
そこは赤信号の横断歩道。
大きなトラックが目の前に来ていた。
その一瞬、紗綾は考えた。このままじゃ死んでしまう。腕に抱えた猫ちゃんごと。今、放り投げるように手放せば、猫の身体能力なら多少は怪我をするかもしれないが、着地できるだろう。今ならまだ猫ちゃんだけは助けられる──と。
故に紗綾は迷うことなく猫を手放した。
「ごめんね、猫ちゃんッ」
それが、立花 紗綾の最後の瞬間だった。
「やあ!ようこそ天界に!」
「………………は?」
紗綾は気がつくと、真っ白な何もない空間に立っていて、目の前にかなりのイケメンの外人さんがたっていた。
病院…ではなさそうだ。
「あの……ここは?私は……」
「トラックに引かれたのは覚えてる?」
「はい…」
「君はね、そのまま即死。死んでしまったよ。でも安心して、君の抱えていた猫は無事だったよ。今君は魂の状態で天界に招かれてるんだ。ちなみに僕は神様!その一柱さ」
「……そう、ですか」
「ずいぶんあっさりだね?驚かない?」
「…充分驚いてますよ」
いきなり神とか、頭が混乱しそうになる。しかし、自分が死んでしまったことは、自分自身が理解していた。
そして、そのはずの私が、こうして喋ったり思考できると言うことは、なにか大きな力が働いているんだろうと思った。なので、神様と言われれば、納得できる。
それに、早くに両親をなくし、親戚の家に居候している身だった紗綾。両親も交通事故で突然だった。なので、抗えない死と言うものを、紗綾は他人より知っていた。
「君は本当……大人びてるね。いや、そう成らざるえなかったのかな」
「……それは」
「まぁ、いいよ。今回、君を天界に招いた理由なんだけどね、聞きたい?」
「普通……ないんですか?」
「うん。特別な魂以外は、普通に輪廻の輪に乗って、次の生へと転生する。勿論その時に魂を浄化するから、記憶も何もかも綺麗になってからね」
どうやら神様が言うには、普通は、工場のベルトコンベアみたいに流れ作業で魂は分別され、輪廻の輪に乗って、次の生へと転生する。そしてそのさい、その魂のもととなる記憶や感情などの個人の情報はまっさらに消去されるらしい。
しかし、例外もある。
特別な魂。世界に貢献するような偉大な人などは、神のすすめで、魂を天界に召し上げられたりするらしい。
「じゃぁ、私は?」
「君はかなり例外。何でかっていうと、君が創造神様のペットを助けたからだよ」
「………………………………はい?」
「君が助けたあの白い猫はね、創造神様のペットなんだよ。所謂“神獣”ってやつさ。本来君はあそこで死ぬはずじゃなかった。まぁ、重体にはなるけど。でも、一命をとりとめるはずだった。でも、そこに居るはずのない神獣が居合わせてしまったせいで運命が歪んで君を死なせてしまったんだ」 
「……創造神様の……ペット?!」
死ぬはずじゃなかった、ともっと重要なことを言っていたが、それよりも最初の言葉が気になって、それどころではなかった。
「創造神様は神々の頂点。ホントに偉い人だから、僕みたいな下っぱの神とは全然違うからね」
「そ、そんな人のペットだったんですね…。でもなんであんなところに?」
「構われ過ぎて家出しちゃってたんだって」
「家出……」
神様の家出猫を助けて死んだ……なんか死んだ理由がマヌケっぽい。
難しいことはよく分からないが、あの白い猫ちゃんが無事ならそれでいい気がしてきた。
「それで、あの子を見つけてくれたことと、助けてくれたこと、創造神様がいたく君に感謝していてね。若くして死んでしまったことを哀れんで、君に御礼をしたいそうだ」
「え?そんなのいいですよ」
「そう言うわけにはいかないよ」
神様の真剣な表情に押され、御礼を受けとることにした。
「わかりました……じゃぁ、もらいます」
「うん!君にはね、僕の管理する世界への転生する権力が与えられるよ。勿論記憶もそのままでね。ちょうど君の世界で流行っているところで言う異世界転生ってやつさ」
「異世界…転生、私が……?」
「うん。争いばかりの荒廃した世界とかいやでしょ?僕の管理する世界は、絶対安全とは言いがたいけど、他の世界よりかは安定して平和なところだよ。君にはそこへいってもらうよ」
「そうですね…ありがとうございます」
その後も神様は丁寧に説明してくれて、私は神様の管理する世界、アルシエルに転生することとなった。
「じゃぁ、そろそろ送るよ」
「はい。なにから何までありがとうございました。創造神様にも、過分なご恩ありがとうございます。今度はもっとたくさん生きますとお伝えください」
「うん、わかったよ。じゃ、行ってらっしゃい!」
そして冒頭へと戻るのだ。
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