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不幸でも異世界チーレム!

千歳

■閑話 エリーの恋心











"私はマサキが好き。"










いつ、どこで、どのようにすきになったのか。










少し時間を遡る。












◆◆◆












私はエリー。18歳。
本名、アミスコーリアット・エリー・ブライト。箱庭の宮廷の第1皇女。
そんな私は今冒険者として活動している。


小さい頃、1人で村にお忍びで出かけた事があった。
その当時は出かける事が多かった為によくママ【王妃】に怒られたり、
世話をしてくれていた人達を困らせていた。
そんな回数出かければ町のみんなとも仲良くなっている。
お忍びと言っても、町の人達は既に私の正体は分かっている。
分かっていて仲良くしてくれる。それでもどこか壁を感じていた。


ある時、またお忍びと称して出かけた時、
いつもより遠出をしすぎて森で迷子になってしまった。
その時の私は剣すらまともに握った事がなかった。
そんな私が森で迷子になる。しかも1人で。
そうなってはゴブリンに襲われるのはどんな子供であれ目に見えていた。






そして起こった。






ゴブリンではなく。






オークが目の前に居たのである。






当時の私は魔物すら見たことがない。
そんな場所に娘の私を連れて行くなんて国王でなくても、
大事な娘の父親なのだ。連れて行くわけない。
私はオークを見るや、「だ~れぇ?」と軽く挨拶をしてしまった。
オークはこっちを見るや、手には斧、口からは液体を垂れ流していた。
まともに見ることはできなかった。見た目の酷さではない。既に陽が沈んでいたのだから。
普通の人であれば陽が落ちてから町を出ることなどない。ましてや1人でなんか尚更。


そのオークは雄だった。
なぜそれがわかったのか。
下にぶらさげている物が自分とは違うものをつけていたから。
私はゾッとした。背筋が震えた。人間の危機感知の鐘が頭の中に鳴り響いている。
そしてその暗さで見えるということは、見える範囲まで近くに寄ってきたからである。






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エリーの日記から抜粋






 魔物の行動時間には昼行性と夜行性のどちらかに分かれる。
 魔物には睡眠が必要な物やそうでないものがいる。
 私の目の前に居たオークは昼行性。それも睡眠が必要な種。
 その当時の私が知らないのは仕方ないが、今だになぜ、
 その時間にオークが出歩いているのかが疑問として残る。
 箱庭の宮廷でも調べたが今だに解明されていない。






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私の成長は周りの女性より遥かに早かった。
身長や体重、胸やお尻周りは15歳で既に大人顔負けなくらい整っていた。
変な男性に狙われる事はなかったが、視線はいつも気にしていた。


そんな私をオークは攻撃をせず近寄ってきた。
手を見ると斧は既になかった。
そう。オークは子作りの準備をしていた。
私は動けなかった。
恐怖の対象のレベルを遥かに超えていた。
今までなかった恐怖心。それは実体験がない事であれば素直な気持ちだと今でも思う。
人間は自分が知らない体験をすると、恐怖か、はたまた歓喜する。
だが、今、目の前に居るのはオーク。魔物なのだ。


オークの手が手を差し出せば届きそうな距離まで近づく。
恐怖で動けなくなり、ここでなにかされる気持ちで目を瞑る。声が出なくなる。
私の肩に触れるその時、








グギャアアアアアアアア








"勇者が現れた。"








私は顔になにかが掛かった事に驚き目を開ける。
目の前のオークは右腕をなくしていた。
手で顔を拭うと液体が付いている。
手を近づけなくても分かる。血の臭いだ。
今の状況が判断出来ず固まる。


「嬢ちゃん!大丈夫だったか!」


「...」


「反応ねぇか。そりゃそうだわな。
でも大丈夫だ!俺が来たからにはもう安心しな!」


「...」


「さすがにちょっとは反応が欲しいところだが、
まずはこの大男をぶっ飛ばしてからにするか、っな!」




グガアアアアアアアアア




「ふぅ。まぁこんなもんだろ。
とりあえず嬢ちゃん。ここは危ねぇ。ちょっとばかし移動しようや。よっこらっせ。」


「うわぁっ!」


私はその男性の肩に担がれた。


「嬢ちゃん!あそこの村まで行くからちょーっと静かにしててなー。
また魔物出てきたらこの状態だと面倒だからよぉ。」


「は、はぃ...。」


「んじゃちょっくらコルまで行くかぁ~!」


そして男性に担がれた私は、コルの町まで静かだった。
男性は応のない私に気遣ってくれたのか森を抜けてからコルの町までは、
ずっとなにかを語りかけてくれた。
コルの町に着くと衛兵さんがそれに気づき、私を宮廷まで送ってくれた。
あとになって知ったが、その男性は"冒険者"という職業だった。
その男性はもうコルの町や宮廷にさえ居なかった。


そして18歳になった私は、
パパ【国王】に直談判【我が儘】をして冒険者になることが出来た。
もちろん宮廷からの援助は受けないと豪語した上でのお願い【我が儘】なのだ。


初めてお忍びではなく、1人で生きていく為に向かった。
ただ初めてと言ってもコルの町。昔からの知り合いが居るおかげで苦ではなかった。
最初の頃は冒険者ランクも低く、薬草の採取から始まった。
冒険者のみんなもほとんど顔ぶれは変わってないので、みんな優しかった。
でもやはり18歳になっても皇女は皇女。壁は今だに少しばかり存在する。


次の依頼でランクがあがるくらいの頃。
私はゴブリンの討伐依頼を受けた。
最初は誰かとパーティを組んで行こうと思った。
ただ壁のせいか、皆引き受けてくれない。
そりゃそうだ。皇女に怪我でも追わせたら問題になる。そんな責任は負えないのは当然だ。
だったらと、皆に迷惑がかかるまいと1人であの"オークに襲われた森"に行った。


その日は凄く調子の良い日だった。
朝食の卵が1個で卵黄2つだったり。いつもなら疲れる運動も疲れずに乗り切ったし。
運動のあとのお風呂上がり、肌ツヤとかもよかったし。
屋台のおじさんから肉と野菜の串焼きもタダで貰ったし。


そして戦闘。
討伐依頼のゴブリン。
最初は1体ずつ倒していった。
その内2体、3体と出てきてギリギリで倒せた。
流石にそろそろ戻ろうとした時、目の前にまたゴブリン。
その時もやはりギリギリ。相当消耗している。
ゴブリンの攻撃を避けきれなかった時に、足に攻撃を食らってしまった。
血が流れてドクドクとしているのが分かる。
森を抜けようとしたらまたゴブリン。
2体。こちらを見て動かない。
今にも倒れそうになっている時。








"勇者が現れた。"








ただ"その人"は私の後ろに居た。
その時の私は戦闘中。気づいてはいなかった。
目の前の魔物に必死だった。
ただこれを倒さなければ自分が死ぬだけ。渾身の一撃で2体を倒さなければいけない。
力を振り絞り、


「うりゃぁぁああ!!」


ゴブリンをなぎ倒していた。
そして気づく。後ろに何かがいる。振り向いた。
そこには1人の男性。


「!?キミ、誰!?どこから来た!!」


私は盗賊なのかと警戒して、短剣を構える。
そしてその戦闘態勢を見た男性は、


「ちょちょちょ!ちょっと待って!俺はキミの敵じゃないから!!
とりあえずそのナイフを下ろして!!!」


いかにも怪しい。ここに居るのであれば冒険者、それか盗賊しかいない。
薬草採取でここまでは来ないはず。


「そんな言葉は信用ならない。ギルドカードを見せろ。
ここにいるってことは冒険者なんだろ。」


「"あぁ~~変な口調になっちゃったぁぁ...うぅ恥ずかしぃ。"」


「いや俺は...お、俺は異世界から来た!だからギルドカードは持ってない!
本当だ!!だからとりあえず話を聞いてくれ!!」


「"この人はなにを言っているの?異世界人なんて御伽噺じゃない。
でも悪い人には見えないし...。"」


「異世界?キミ異世界人だっていうのか?それは本当なのか?
御伽噺でしか聞いたことがないのに...分かったとりあえず話を聞こう。」


「ありがとう。俺は神崎正樹。キミは?」


「エリー。エリー・ブライト。冒険者だ。」


そうこれが私、エリーとマサキとの出会いだった。
マサキはその後私の出血を見て少し慌てていた。
「女の子がなぜ...」と言ってたのが聞こえた。優しい人だった。
そしてよく見ると顔が凄くタイプだ。稀に見るイケメンだ。
身体付きも申し分なさそうだし。これで強かったら惚れちゃいそうだなぁ...。
なんて考えていると、


「な、なんでそんな赤面しなが言ってるの?」


「な!べ、別に恥ずかしい事はなにも!!...と、とりあえず!
ここは森なのだ!そうこうしてるうちに魔物が来たら!...」


「えっとそれフラグなんですけど...しかも速攻回収するって...」


「ふらぐ?なんのこt...!!!やっぱり来たじゃないか!!
マサキは戦えるのか!?戦えないならそこにいないで後ろに隠れてろ!!!」


「"ふらぐ?とはなんぞや!この人武器すらも持ってないじゃないの!"」


「やっぱりって...回収したの自分じゃ..まぁいいや俺は戦えないけど、
一応補助として後ろでスキル使うから、エリーはナイフで1発殴ってくれればいいからね~」


「は!?どういう...わ、わかった!!とりあえず後ろに隠れてろ!!!」


「"戦えないってどういうことなの!それでも男なの!?しかもスキルって!?補助って!?!?
とりあえずゴブリンを倒さないと!!"」


「エリー!!1発入れればそのゴブリン倒せるから!!」


「なに!?そんなことはないはずだ!私でもこの数を相手には...ッ!!
なんだと...これはおかしいぞ...どういうことだ!!!マサキ!!!」


「"え!?どういう事なの!?なんで紙を切る感覚で切れちゃうの!?!?
も、もしかしてマサキって人凄く強いんじゃ!!"」


「話はあとで!!!とりあえずゴブリン倒さないと!!!
あ...って終わってるし...とりあえずこの森を出よう!」


「わ、わかった。とりあえずここを脱出しよう。ゆっくり会話もできないからな。
私が泊まっている宿屋にでも行こう。そこでゆっくり話し合おうではないか。」


そしてそれから、マサキという男性と過ごした。凄く楽しかった。
徐々にマサキの強さを知っていった。


マサキは、顔もタイプで優しくて面白くて、
皇女としての私ではなく、"一人の女性"として扱ってくれた。
過ごした日常で分かった事、マサキとの間には壁はない。








そして、いつしか私は、










"マサキを好きになっていた。"





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