不幸でも異世界チーレム!

千歳

■第1話 出会い



誕生日の日でさえも俺はバイトがあった。
いつも通り電車で向かっていたのだが、
バイト先の最寄りに着いた途端、扉が光った。


「"え!?みんなこれ気付いてないのか!?"」


そう、他の人は普通に扉を通って
ホームへと足を下ろしている。
なぜみんなは驚かないのか。
これは俺だけに見えているのか。
そう素直な感想だけが頭に過ぎる。
その瞬間、扉から手が出てきた。


「"!?!?・・・"」


俺はその手に右手を掴まれ、引きづりこまれてしまった。
何が何だか・・・思考が追いつかない。
扉の中に入るとそこには、
天使がいた。
絶世の美女だった。・・・・・・








































ってなれば最高だったんだけどね。そこは不幸オーラの濃い俺だ。
そんなことはなかったと思わせるほどのことが起きた。
そう、おっさんがそこにいた。


「"え・・・おっさんかよ・・・
なんで天使とか神とかそういうんじゃなくておっさんなんだよ・・・"」


そのおっさんは、現世でいう和室に、丸型のちゃぶ台、
座布団の上に正座でお茶をすすりながらみかんを食べている。


「"えぇー・・・"」


その一言に尽きる。
おっさんはなにかあるわけでもなく、くつろいでいるのだ。
俺も現世では趣味がなかったわけではない。
12歳の頃、両親が亡くなりそれから引き篭もってしまった俺が、
唯一癒しになっていたのがアニメや漫画や小説。
今の今まで、それで精神を助けられたといっても過言ではない。
なので電車の扉が光って手が出てきた時は、


「"おっとこれは女神が出てきて異世界に飛ばされるんじゃねーか!?
神は俺を見捨ててなかった!!!!"」


とか現実逃避くらいはしていたのだ。
なのにこれだ。
なんだこれ。俺の現実逃避【夢】を返せよ!!!
期待した分くらいは返せよ!!!
・・・おっと取り乱してしまった。気を取り直して、
とりあえず状況を確認するために話しかけてみよう。


「あのー・・・あなたh」


「やぁ神埼正樹君・・だったかな?あ、ここ?えっとね天界だよ。
なんでここにいるかって?それはわしが呼び寄せたからね。
なんでかって?暇だったから?まぁまぁそこに突っ立ってないで、
ほら、お茶もみかんも用意してるんだからお話でもしようじゃないか。ハハハハ」


なんだこのおっさん。話全然きかねぇな!?!?!?
なんなの!?暇だったから?!馬鹿なの!?


「あぁ?ふざけんなよおっさん。」


「あ、あぁごめんごめん。そんな怒らんでも冗談だよ。冗談!
そんなことで君を天界に呼ぶわけないじゃないかーあははは。あははは!!!はぁー・・・」


え、なんでこのおっさんこんなに慌ててんの!?
もしかして本当に暇で呼んだのか?!
はぁ。まぁいいや。別に元の世界での未練なんてないし。


「はぁ。まぁ別に未練ないからいいんですけどね。
それで?・・・本当に暇だから呼んだんですか?
あなたとずっと喋るようなネタなんてないと思うんですけど。
俺もおっさんとずっといるの死ぬほどつらいんですけど。」


「そんなおっさんおっさん言わんでくれよぉ・・・
これでも神なんだよ?わし。」


「あぁじゃあ神様。俺はずっとここにいたくはないんですけど。」


「あれ?そんなに驚かない?・・・まぁそうだよね。
君、元の世界では隠れヲタクだったもんね。うんうん。
そりゃあ驚かないか。
えっとね、なんで呼んだかって言うとだね。
神埼正樹君には、現世で言う所の異世界に行ってほしいんだ。」


!?今このおっさん俺を隠れヲタクと言ったか!?
そりゃあ俺もこの方いろんな物を見て、
いろんな物を集めてきたし、それを他人に言うなんてしてこなかったけどさ・・・
ん!?!?異世界?!?!?お?おぉ!?!?
てか俺そんなにおっさんて連呼してない気がするんだけど。


「"そりゃあだってわしは神なんだから
そこはほら、心の声っていうの?
そういうのまで聞こえちゃんだよね。てへ。"」


気持ち悪い。なにこのおっさん本気で「てへ」とかやったよ
現世だったらドン引きだぞおい。
しかも声にでてないから動作だけが目に入ってくるし。・・・


「さてそろそろ本題に入ろうかの。
神埼正樹君。君には異世界に行って欲しいんだ。
なぜか、それは、
わしがそろそろその世界の監視ができなくなってきたからなんだよ」


「もしかしてなんですけど、その世界に魔王とかいたりします?」


「あぁいるよ。」


「それでもしかしてですけど、その魔王に負けたとか言わないですよね?」


「うん。負けた。」


「それで監視ができないから、俺を異世界に飛ばして、
俺の身体に乗り移って監視するとかじゃないですよね?」


「ん?あぁそれは心配ないよ。君に乗り移ったりはしないから。
君にその世界の監視をして欲しいんだよね。
あ、別にその世界で恋愛して、結婚して、子供が授かるのとかも別に大丈夫だからね。
そこまでプライベートを禁止したりはしないから!!
神様に誓って!!それはない!!!あ、わし神だった。てへ。」


「いや!いやいやいや、急に世界の監視とか!!無理だから!!
それに俺そんな力あるわけじゃないし!!」


「あぁ力に関しても大丈夫!ちゃんと譲渡するから!
神の力だよ!良かったね!
あぁでも全部じゃないよ?一部ね。一部。
神の力全部あげたら本当に神になっちゃうからね!
まぁその力を工夫すればなんとかなると思うよ!ハハハハ!!!!」


本当大丈夫かよこのおっさん【神様】・・・・


「ということで、君に力を譲渡する。」


神の手がマサキの頭に乗せられる。
そして、力を譲渡されることなる。
その力とは・・・・

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