1分で読める物語

淺井 哲(あさい てつ)

bought time

時間屋というものが最近流行っているらしい

そこでは文字通り時間を買える

時間は長いほど高額になる

僕は今日ここで時間を買う

「ふーん……。それで、時間を買った人はどうなったの?」

寝室で、本の読み聞かせをしていると、幼い娘が私に尋ねてくる。

「三年、長く生きた」

「それだけ? なんかつまんない」

「そんなことないわ」と娘の頭を撫でる。「その三年を使って、彼はこの本を書き上げたのだから」

そう言って、ベッドボードに置かれた写真に目を向ける。歯を見せて笑う男性と、私が肩を並べて写っていた。

「あなたが生まれたころに病気で亡くなった、パパのお話よ」

「1分で読める物語」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く