最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~
第276話 【魔方陣の謎3】
<<イリヤ視点>>
お兄ちゃんと図書館に来てから司書のタマリーさんに協力してもらって、片っ端から資料を調べています。
10冊目くらいに1冊の本が目につきました。
『古代魔方陣の歴史と応用』スミサン・アッシー著
少し古びた装丁の中を開けてみると、作者別のインデックスが書かれています。
「アレク、アレク、あっ、あった。」
マリス様が手元に置いたくらいの方ですから、3000年前の方とはいえ、かなりのページが割かれています。
その中で『カテゴリ:転移』のページを開くと、3つ目くらいにお父様から依頼のあった魔方陣がありました。
タマリーさんが説明してくれたアレク様独特の記述も見受けられます。
神様の加護であらゆる文字が読み書きできるわたし達は、当然のようにこの魔方陣に書かれている古代語も読めます。
わたしは、用意していたメモ用紙に調査中の魔方陣に書いてある古代文字を整理しながら翻訳していきます。
それが終わると、今度は本に載っている魔方陣の翻訳です。
実際に翻訳後の文字を比較してみると少し違うところがあるのに気付きました。
本に記載されている魔方陣が
『この魔方陣は我が魔力を吸収し、・・・・・・・・ 我の思う場所にこの場所から移動せしめし・・・・・・ 』
となっているのに対し、調査対象の魔方陣は
『この魔方陣は我が魔力を吸収し、・・・・・・・・ 我の思うものをこの場所に移動せしめし・・・・・・ 』
となっています。
お父様から頂いた調査対象の魔方陣は、転移先に使うものだとばかり思っていたのですが、どうやら少し違うようです。
『我の思うものをこの場所に移動』
ものをこの場所に移動する?
もしかして、呼び出す? 召還?
「もしかして、この魔方陣は、転移じゃなくて召喚の魔方陣じゃないかしら。」
突然上げたわたしの声にお兄ちゃんとタマリーさんがこちらを向きます。
「召還だって!」
「そう、ほらここの記述を見て!わたし、移動先の魔方陣だとばっかり思っていたんだけど、もしかして召還の意味じゃないかなあ。」
わたしの翻訳したメモを見て、お兄ちゃんとタマリーさんが頷いています。
わたしは、『カテゴリ:召還』のページを開きました。
いくつかの魔方陣を見ていくと『我の思うものをこの場所に移動』の文言が見つかりました。
やはり、召還の魔方陣のようです。
この記述はよく使われているので、召還の文言としてはよく使われていたのでしょう。
「うん?」
この文言が使われている魔方陣の作者を見ていくと、あることに気付きました。
作成年は500年程度の幅がありますが、家名が同じなのです。
「サッチャー家!」
わたしの声に、タマリーさんが反応します。
「イリヤ様、今サッチャー家と仰いましたか。」
「ええ。先ほど召還の魔方陣と判断した文言を調べていたのですが、この文言を召還で使用しているのが、全て家名がサッチャーの方なのです。」
「サッチャー家ですか。」
「タマリーさん、サッチャー家をご存じなのですか?」
「ええ、元ハーン帝国にあった子爵家です。
500年ほど前に取り潰しになって、その子孫は行方知れずと言われている、呪われた家です。
数千年続く古い家と言われ、魔方陣にかけては右に出る者がいないと言われる魔方陣作成の名家でした。
アレク様の魔方陣の特徴と似ているため、アレク様本人もしくはその高弟の子孫だと言われていたようです。
ただ、500年前の当主が強大な魔物を召還してしまい、領地の大半を崩壊させてしまったとの記録が残っています。
この責任を取って、爵位取り消しの上、国外追放になったと伝えられています。
その際、屋敷に残された多くの魔方陣はハーン帝国王家に接収されたとされています。」
「それじゃあ、この魔方陣はその時に使われた召還魔方陣の可能性がありますね。
そしてそれを使えるのは、魔方陣を受け継ぐもの、ハーン帝国王家かサッチャー家の子孫かということかな。」
お兄ちゃんのつぶやきに、わたしもタマリーさんも頷きます。
「じゃあ、このことをお父様に伝えて、ハーン帝国王家とサッチャー家の子孫を探しましょう。」
<<マサル視点>>
砂漠のオアシスで調査中の俺達のところに、イリヤからトランシーバーで連絡が入った。
魔方陣が召還を目的としたもので、ハーン帝国王家とサッチャー家の子孫が疑わしいとのことだった。
俺は早速モーグル王とシン教皇に連絡を取り、両家の子孫の消息を探索してもらうよう依頼した。
同時に、その魔方陣を強力な結界で封印する。
「召還の魔方陣でしたか。他にもあるかも知れませんね。」
ライズ騎士の言葉に同意する。
「魔方陣は発動させなくても微力の魔素が発生することがあるんです。それも、魔方陣特有の。
この魔素を探せば、他に設置されているものを見つけることが出来るかも知れません。
ちょっと、人工衛星を作って調べてみましょう。」
俺は土魔法を使って人工衛星の筐体を作り、探索の魔方陣を組み込んだ魔石を搭載し、空高くに放り投げた。
地上1000メートルくらいまで飛ばせば、半径500メートルくらいの探索は出来るだろう。
これを少しづつ動かしていけば、この広い砂漠でも数日でチェックできるはずだ。
          
お兄ちゃんと図書館に来てから司書のタマリーさんに協力してもらって、片っ端から資料を調べています。
10冊目くらいに1冊の本が目につきました。
『古代魔方陣の歴史と応用』スミサン・アッシー著
少し古びた装丁の中を開けてみると、作者別のインデックスが書かれています。
「アレク、アレク、あっ、あった。」
マリス様が手元に置いたくらいの方ですから、3000年前の方とはいえ、かなりのページが割かれています。
その中で『カテゴリ:転移』のページを開くと、3つ目くらいにお父様から依頼のあった魔方陣がありました。
タマリーさんが説明してくれたアレク様独特の記述も見受けられます。
神様の加護であらゆる文字が読み書きできるわたし達は、当然のようにこの魔方陣に書かれている古代語も読めます。
わたしは、用意していたメモ用紙に調査中の魔方陣に書いてある古代文字を整理しながら翻訳していきます。
それが終わると、今度は本に載っている魔方陣の翻訳です。
実際に翻訳後の文字を比較してみると少し違うところがあるのに気付きました。
本に記載されている魔方陣が
『この魔方陣は我が魔力を吸収し、・・・・・・・・ 我の思う場所にこの場所から移動せしめし・・・・・・ 』
となっているのに対し、調査対象の魔方陣は
『この魔方陣は我が魔力を吸収し、・・・・・・・・ 我の思うものをこの場所に移動せしめし・・・・・・ 』
となっています。
お父様から頂いた調査対象の魔方陣は、転移先に使うものだとばかり思っていたのですが、どうやら少し違うようです。
『我の思うものをこの場所に移動』
ものをこの場所に移動する?
もしかして、呼び出す? 召還?
「もしかして、この魔方陣は、転移じゃなくて召喚の魔方陣じゃないかしら。」
突然上げたわたしの声にお兄ちゃんとタマリーさんがこちらを向きます。
「召還だって!」
「そう、ほらここの記述を見て!わたし、移動先の魔方陣だとばっかり思っていたんだけど、もしかして召還の意味じゃないかなあ。」
わたしの翻訳したメモを見て、お兄ちゃんとタマリーさんが頷いています。
わたしは、『カテゴリ:召還』のページを開きました。
いくつかの魔方陣を見ていくと『我の思うものをこの場所に移動』の文言が見つかりました。
やはり、召還の魔方陣のようです。
この記述はよく使われているので、召還の文言としてはよく使われていたのでしょう。
「うん?」
この文言が使われている魔方陣の作者を見ていくと、あることに気付きました。
作成年は500年程度の幅がありますが、家名が同じなのです。
「サッチャー家!」
わたしの声に、タマリーさんが反応します。
「イリヤ様、今サッチャー家と仰いましたか。」
「ええ。先ほど召還の魔方陣と判断した文言を調べていたのですが、この文言を召還で使用しているのが、全て家名がサッチャーの方なのです。」
「サッチャー家ですか。」
「タマリーさん、サッチャー家をご存じなのですか?」
「ええ、元ハーン帝国にあった子爵家です。
500年ほど前に取り潰しになって、その子孫は行方知れずと言われている、呪われた家です。
数千年続く古い家と言われ、魔方陣にかけては右に出る者がいないと言われる魔方陣作成の名家でした。
アレク様の魔方陣の特徴と似ているため、アレク様本人もしくはその高弟の子孫だと言われていたようです。
ただ、500年前の当主が強大な魔物を召還してしまい、領地の大半を崩壊させてしまったとの記録が残っています。
この責任を取って、爵位取り消しの上、国外追放になったと伝えられています。
その際、屋敷に残された多くの魔方陣はハーン帝国王家に接収されたとされています。」
「それじゃあ、この魔方陣はその時に使われた召還魔方陣の可能性がありますね。
そしてそれを使えるのは、魔方陣を受け継ぐもの、ハーン帝国王家かサッチャー家の子孫かということかな。」
お兄ちゃんのつぶやきに、わたしもタマリーさんも頷きます。
「じゃあ、このことをお父様に伝えて、ハーン帝国王家とサッチャー家の子孫を探しましょう。」
<<マサル視点>>
砂漠のオアシスで調査中の俺達のところに、イリヤからトランシーバーで連絡が入った。
魔方陣が召還を目的としたもので、ハーン帝国王家とサッチャー家の子孫が疑わしいとのことだった。
俺は早速モーグル王とシン教皇に連絡を取り、両家の子孫の消息を探索してもらうよう依頼した。
同時に、その魔方陣を強力な結界で封印する。
「召還の魔方陣でしたか。他にもあるかも知れませんね。」
ライズ騎士の言葉に同意する。
「魔方陣は発動させなくても微力の魔素が発生することがあるんです。それも、魔方陣特有の。
この魔素を探せば、他に設置されているものを見つけることが出来るかも知れません。
ちょっと、人工衛星を作って調べてみましょう。」
俺は土魔法を使って人工衛星の筐体を作り、探索の魔方陣を組み込んだ魔石を搭載し、空高くに放り投げた。
地上1000メートルくらいまで飛ばせば、半径500メートルくらいの探索は出来るだろう。
これを少しづつ動かしていけば、この広い砂漠でも数日でチェックできるはずだ。
          
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