最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~
第254話 【悪巧みを阻止するのだ。1】
<<スリトー王国ヤマトー侯爵視点>>
「おのれマクベスの奴め!息子ばかりか、わたしにまで恥をかかせおって!」
マクベスの奴、どこまでもわたしの邪魔をするつもりじゃな!
☆
あれは3年前のことだ。
スリトー王国とナーカ教国の国境に繋がる街道を1台の馬車がナーカ教国に向かって全速力で走っていた。
かれこれ1時間弱も馭者が鳴らす警笛が鳴り響き、街道を行く旅人は、そのけたたましい音に誰もが驚き、そして道を開けた。
馬車は、いくら街道に人通りがあろうとも、お構いなしに先を急いでいるのだ。
馬車の中には、頭から血を流しながらも気丈に振る舞う少女が乗っていた。
「ペーター、急いで!!
早くしないと、取り返しのつかないことになっちゃうわ。」
「お嬢様、もうすぐナーカ教国との国境に着きます!」
街道を急ぐのは、その馬車だけでは無かった。
馬車の後方には数頭の馬がものすごい勢いで追いかけているのだ。
馬に乗るのは衣装も統一されていない盗賊達。
しかし彼等はキチンと統率されており、一分の隙もない。
騎乗した盗賊から放たれた矢が、馬車を襲う。
この勢いだと、数分もしないうちに馬車は追いつかれてしまうに違いない。
「もう少し、後もう少しで逃げ切れるのに。」
悔しそうに歯を食いしばる少女ベスタの手には彼女の主から託された1通の手紙が握られていた。
「あの時、王女からの手紙を持ったベスタを捕まえておけば、今頃この国の実権はわたしが握っておったはずなのに!
全く忌々しいことだ。」
あと一歩のところでマクベス率いるカトウ運輸が邪魔をしたのだ。
おかげで、我等の陰謀は計画段階で潰えてしまったのだ。
<<マクベス視点>>
モーグル王国での商談に向かう途中で、盗賊に襲われている馬車を見つけたのは、本当に偶然であった。
ナーカ教国の国境を抜けて、スリトー王国に入って小1時間経った頃だろうか、盗賊に後ろから矢を射掛けられている馬車を見つけたのだ。
「先行して盗賊を捕らえるのだ!」
「はっ!」
俺は部下に指示を出す。
部下に続き、俺も盗賊に向かおうとして、馬車とすれ違う。
矢傷を受けた馭者はすでに息絶えており、馬車は暴走していたのだ。
俺は馬車を通り過ぎたところで反転し、馬車に追いつくと馭者席に跳び移った。
手綱を取り馬車を止める。
後ろを振り返って馬車の中を確認すると、馬車の壁を貫いた数本の矢が少女の身体を貫いていた。
息も絶え絶えな少女が差し出した右手には、血塗れの手紙が固く握りしめられていた。
「マクベス隊長、盗賊の捕僕が完了しました。」
「うむ、ご苦労さん。
馬車の方は2人。馭者はすでに亡くなっていた。
後少女が乗っていたのだが、深い傷を負っている。
恐らく助かるまい。」
俺は持っていたポーションを少女に飲ませようとしたが、すでに虫の息で、嚥下することが出来ない状態だったのだ。
その日の晩、意識を無くしていた少女は、静かに息を引き取った。
俺達は、馭者と少女の遺体を連れて、次の中継地となるスリトー王国へと向かった。
少女が大切に守っていた手紙には宛先も差出人も書かれていなかった。
スリトー王国の国境に着き、馭者と少女の遺体を引き渡す。
「マクベス殿でしたか。ご苦労様です。」
通された部屋に、国境警備隊隊長のラリーが入ってきた。
「ラリー殿、久しぶりです。」
ラリーとは、以前街道を荒らしていた盗賊団討伐に協力してから親しくしている。
「この度はありがとう。捕まえて頂いた盗賊は、今尋問をさせている。
それで相談なのだが、今回の件は内密にお願い出来ないだろうか?」
「何かいわくがありそうだな。」
「実はあの少女は、やんごとなきお方の侍女でな。」
「なるほど、国外には持ち出せぬ問題か。
ならば従うしかしようがない。」
「話しが早くて助かる。
預かった手紙については、俺が責任を持って処理する。」
「わかった。頼みます。ラリー殿。」
ラリーと別れた俺は、当初の目的地であるモーグル王国へと急いだ。
<<スリトー王国カンナ王女視点>>
国境警備隊のラリー隊長から内密にと連絡が入りました。
不吉な予感は的中しました。
ベスタがヤマトー侯爵の追手に殺害されたようです。
本当にかわいそうなことをしました。
不幸中の幸いと言ってはなんですが、あのナーカ教皇に宛てた手紙は、わたしの手元に戻って来ました。
あの手紙まで奪われてしまっていては、侯爵に大きな付け入る隙を与えるところでした。
我がスリトー王国は、これまでナーカ教国の属国に近い形で存続してきました。
面積も狭く、ほとんどの土地が山中となる我が国には、特産品と呼べるものもなく、ナーカ教国の庇護下に置かれるしか、存続の道がありませんでした。
ところが、ナーカ教国が国際連合に加盟することになり、我が国も加盟することが決まりました。
そしてカトウ運輸の物流センターが設置されて、我が国の経済は一変しました。
英雄と呼ばれるマサル様の指導の下、新たな地下資源の開発や、山を切り拓いての農地開発、社会インフラの整備等、ものすごい勢いで、我が国の経済は発展していきました。
ナーカ教国の手助けもあり、これまでは他国の庇護下でないと立ち行かなかった我が国は、見事に独り立ち出来るまでに発展したのです。
          
「おのれマクベスの奴め!息子ばかりか、わたしにまで恥をかかせおって!」
マクベスの奴、どこまでもわたしの邪魔をするつもりじゃな!
☆
あれは3年前のことだ。
スリトー王国とナーカ教国の国境に繋がる街道を1台の馬車がナーカ教国に向かって全速力で走っていた。
かれこれ1時間弱も馭者が鳴らす警笛が鳴り響き、街道を行く旅人は、そのけたたましい音に誰もが驚き、そして道を開けた。
馬車は、いくら街道に人通りがあろうとも、お構いなしに先を急いでいるのだ。
馬車の中には、頭から血を流しながらも気丈に振る舞う少女が乗っていた。
「ペーター、急いで!!
早くしないと、取り返しのつかないことになっちゃうわ。」
「お嬢様、もうすぐナーカ教国との国境に着きます!」
街道を急ぐのは、その馬車だけでは無かった。
馬車の後方には数頭の馬がものすごい勢いで追いかけているのだ。
馬に乗るのは衣装も統一されていない盗賊達。
しかし彼等はキチンと統率されており、一分の隙もない。
騎乗した盗賊から放たれた矢が、馬車を襲う。
この勢いだと、数分もしないうちに馬車は追いつかれてしまうに違いない。
「もう少し、後もう少しで逃げ切れるのに。」
悔しそうに歯を食いしばる少女ベスタの手には彼女の主から託された1通の手紙が握られていた。
「あの時、王女からの手紙を持ったベスタを捕まえておけば、今頃この国の実権はわたしが握っておったはずなのに!
全く忌々しいことだ。」
あと一歩のところでマクベス率いるカトウ運輸が邪魔をしたのだ。
おかげで、我等の陰謀は計画段階で潰えてしまったのだ。
<<マクベス視点>>
モーグル王国での商談に向かう途中で、盗賊に襲われている馬車を見つけたのは、本当に偶然であった。
ナーカ教国の国境を抜けて、スリトー王国に入って小1時間経った頃だろうか、盗賊に後ろから矢を射掛けられている馬車を見つけたのだ。
「先行して盗賊を捕らえるのだ!」
「はっ!」
俺は部下に指示を出す。
部下に続き、俺も盗賊に向かおうとして、馬車とすれ違う。
矢傷を受けた馭者はすでに息絶えており、馬車は暴走していたのだ。
俺は馬車を通り過ぎたところで反転し、馬車に追いつくと馭者席に跳び移った。
手綱を取り馬車を止める。
後ろを振り返って馬車の中を確認すると、馬車の壁を貫いた数本の矢が少女の身体を貫いていた。
息も絶え絶えな少女が差し出した右手には、血塗れの手紙が固く握りしめられていた。
「マクベス隊長、盗賊の捕僕が完了しました。」
「うむ、ご苦労さん。
馬車の方は2人。馭者はすでに亡くなっていた。
後少女が乗っていたのだが、深い傷を負っている。
恐らく助かるまい。」
俺は持っていたポーションを少女に飲ませようとしたが、すでに虫の息で、嚥下することが出来ない状態だったのだ。
その日の晩、意識を無くしていた少女は、静かに息を引き取った。
俺達は、馭者と少女の遺体を連れて、次の中継地となるスリトー王国へと向かった。
少女が大切に守っていた手紙には宛先も差出人も書かれていなかった。
スリトー王国の国境に着き、馭者と少女の遺体を引き渡す。
「マクベス殿でしたか。ご苦労様です。」
通された部屋に、国境警備隊隊長のラリーが入ってきた。
「ラリー殿、久しぶりです。」
ラリーとは、以前街道を荒らしていた盗賊団討伐に協力してから親しくしている。
「この度はありがとう。捕まえて頂いた盗賊は、今尋問をさせている。
それで相談なのだが、今回の件は内密にお願い出来ないだろうか?」
「何かいわくがありそうだな。」
「実はあの少女は、やんごとなきお方の侍女でな。」
「なるほど、国外には持ち出せぬ問題か。
ならば従うしかしようがない。」
「話しが早くて助かる。
預かった手紙については、俺が責任を持って処理する。」
「わかった。頼みます。ラリー殿。」
ラリーと別れた俺は、当初の目的地であるモーグル王国へと急いだ。
<<スリトー王国カンナ王女視点>>
国境警備隊のラリー隊長から内密にと連絡が入りました。
不吉な予感は的中しました。
ベスタがヤマトー侯爵の追手に殺害されたようです。
本当にかわいそうなことをしました。
不幸中の幸いと言ってはなんですが、あのナーカ教皇に宛てた手紙は、わたしの手元に戻って来ました。
あの手紙まで奪われてしまっていては、侯爵に大きな付け入る隙を与えるところでした。
我がスリトー王国は、これまでナーカ教国の属国に近い形で存続してきました。
面積も狭く、ほとんどの土地が山中となる我が国には、特産品と呼べるものもなく、ナーカ教国の庇護下に置かれるしか、存続の道がありませんでした。
ところが、ナーカ教国が国際連合に加盟することになり、我が国も加盟することが決まりました。
そしてカトウ運輸の物流センターが設置されて、我が国の経済は一変しました。
英雄と呼ばれるマサル様の指導の下、新たな地下資源の開発や、山を切り拓いての農地開発、社会インフラの整備等、ものすごい勢いで、我が国の経済は発展していきました。
ナーカ教国の手助けもあり、これまでは他国の庇護下でないと立ち行かなかった我が国は、見事に独り立ち出来るまでに発展したのです。
          
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