最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

マーくん

第196話【開拓って楽しいね2】

<<イリヤ視点>>
次の日は、移動してくる人達の受け入れ準備です。

建物と一緒に寮や食堂も移動したので、寮に入っていた人達の荷物も既に移動済みです。

寮に入っていなかった人達も、新たに増築した家族寮に引越しを済ませていたので、問題無しです。

まだ街の中には2つの建物しか無いので不便ですが、『とりあえずカトウ運輸の直営店をいくつか作れば当面の生活は大丈夫だろう』ってお父様が言っていました。

港から街までの道を作っていると、港に船が到着しました。

キンコー王国のサイカー領からは船で2時間くらいで着きます。

落ち着いたら定期便も出すそうなので、商人達が動き出したら街もすぐに商店で埋まってしまいそうです。


「「お疲れ様でございます。」」

スポックさんとヤングさんが最初に船から降りて来ました。

「ここがあのシーク二島ですか?
シーク二島は高い崖に囲まれた山ばかりの島だと聞いていましたが…」

「山を崩して崖下に土砂を入れて僕達で整地したんだよ。」

お兄ちゃん、なにげに自慢してます。

「まぁここで話していてもなんだから、本社の食堂に移動しましょうか。」

お父様の呼びかけに船から降りた皆んなが坂を登って街に向かいます。

「まあ!広くってすごく綺麗な街ね。」
「真ん中に大きな道が一直線に伸びていて、きちんと区画整理も終わっているわ。」

「道も、石も敷いていないのに平らで歩き易いわ。」

「アスファルトって言うんだって。」

褒めてもらったのが嬉しくて、わたしも自慢しちゃった。

「本社も、事務局も本当にそのまま移動されていますね。」

食堂に入ると早速食堂のおばちゃん達が厨房に向かいます。

「あら、何から何まで昨日のままだねぇ。嬉しいねぇ。」

と口々に話しながら、料理を作ってくれています。

「ところでスポックさん、今年で事務局長の任期が終わりだったと思うのですが。」

「ええ、結局3期9年間勤めさせていただきました。

こちらへの移転作業が最後の仕事になります。

既に事務局の仕事はアニスさんに引き継いでいますし。」

「そうですか。長い間ありがとうございました。

ところで、その後はどうされますか?」

「出来ればこの国で、過ごさせて頂ければと思います。
既に家族も出来ましたので。」

「それは良かった。
スポックさん、この街の代官をお願い出来ませんでしょうか?」

「カトウ公爵様、いやマサル王、わたしに務まるでしょうか?」

「大丈夫ですよ。スポックさんとは付き合いが長いので、わたしが保証します。

あっ、それと、わたしは王にはなりませんよ。

この国は共和制にしますから。」

「「「ええっ」」」


「マサル様、王にならないってどういうことですか?皇帝になるとか?」

「ヤングさん、王にも皇帝にもなりませんよ。一応首長という立場で上には立ちますが、基本的には一般市民から選出された議員が議論して政治を決める予定です。

もちろん、首長も数年に1回国民から選出されます。」

「詳しい話しはわたしの方からいたしましょう。



カトウ公爵様のおっしゃっている共和制というのは、前回の国際連合総会でカトウ公爵様から提唱のあった、新しい国の統治方法のことです。

共和制には大きく2つの特徴があります。

1つ目は、政治を行うものは市民から選出された者であり、世襲制ではないこと。

2つ目は、国は市民の物であり、市民から選出された政務者は市民の意見を最大限に尊重する事。

この2つがマサル様のおっしゃる共和制です。そうですね。」

お父様はスポットさんに頷きます。

スポットさんは話しを続けます。

「共和制には選挙と議会というものがあるそうです。

選挙は数年に一度市民から政務者を選出するイベントで、政務者になりたいものが立候補し、市民がその中から政務者にふさわしい者を数名選ぶのです。

政務者は村・街単位から領、国単位まで何段階かに分かれていて、それぞれの範疇について話し合い、方向性を決めます。
この話し合いする場を議会と言い、議会の様子や決定内容は全て市民に報告されます。

いわば、一般の市民が国の統治者であり監査役でもあり、責任者でもあるということです。

しかし、この新しい国で共和制を採用されるとは、考えも及びませんでしたが……」

スポックさんは、話し終えるとお父様の方を見られます。

お父様は頷くとスポックさんの話しを引き継ぎます。

「今スポックさんが言ったように、共和制は皆んなで国や領、街、村を協議しながら治めて行こうという考え方です。
当然、皆んながばらばらに意見を出し合うと纏らなくなるので、政務者を選挙で選出しその政務者の中の代表者が国の代表者になります。

但し、この代表者には任期があり、その任期が過ぎると新たに市民から選出された新しい代表者が誕生します。

『世襲制でない開かれた政治』これがわたしの考える共和制です。

あっ、もちろん市民の声を政治に反映させるのが本来の目的ですから、皆さんが王制を望まれるのであれば王制でも構わないのですが…。」

「数多の改革を立案して進めてこられたマサル様ですから、マサル様のおっしゃる共和制については皆信頼し、納得していると思います。

ただ、マサル様には王、いや首長ですか、に長くなって頂きたいと皆思っていると思います。」

ヤングさんの意見に皆んな首を大きく縦に振りながら賛同されています。

「わかりました。1代限りの終身首長がいる共和制も有りだと思いますので、それを踏まえて考えてみますね。」

皆んなの顔に安堵の表情が生まれました。

「どちらにしても最初の代表者を決める必要があります。
この国の初代政務者はわたしで、この新しい街の初代政務者はスポックさんにお願いしようと思うのですが、皆さんそれで構いませんか?

あと、政治に長けた人を各国から3名づつ来てもらうことになっています。
その中から初回の議員を選びたいと思います。

それで良いと思う人は手を挙げて下さい。」


全員の手が一斉に上がり、『マサル共和国』はスタートしたのです。

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