最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

マーくん

第189話【とりあえず解決】

<<スパニ族長ラモス視点>>
何が起こったのか全く分からん。

執務室でいつものように仕事をしていたわたしは、いつもとは喧噪に気付いた。
外が騒がしい?

しばらくして、侍従長が慌てた様子で執務室に入ってきた。

「陛下、兵士が王宮内になだれ込んでまいりました!
クーデターの可能性があります。すぐにお逃げください!」

クーデターだと!そんな馬鹿な?


コンコン

しばらくして扉がノックされた。入室を許可するとクルーが入ってきた。

「おおクルーか。いま侍従長から聞いたが、兵士が大量に王宮内に入ってきているということだが?」

「はい、わたしが命令を出しました。まもなく近衛隊は制圧されると思いますが…」

近衛隊を制圧?クルーが?

「お、お前が……、クーデターか?」

「さすがは聡明なラモス陛下。よくお気付きで。」

おどけたようなしぐさで儂を讃えているが、目には侮蔑の感情が見て取れた。

「おのれ。」
儂は近くにおいてある愛剣を手に取り、クルーに切りかかる。

クルーは、儂の剣を剣で受け止める。

「さすがは『歴代最強王』の異名をとるラモス様。見事な剣筋ですなあ。

ただ、最強王も寄る年波には敵わないと見える。
惜しむらくは、全盛期の時に刃を交えたかったというところですかな。」

クルーは儂の剣を軽々とはじくと剣先を儂に突き付けてきた。

そこへ10人ほどの兵士が部屋に入ってきた。

そして逃げようとしていた侍従長をついでのように切りつけた。

侍従長は動かない。

「報告致します。近衛兵の制圧完了しました。」

「はい、ご苦労様でした。

さて、陛下。先ほどクーデターと仰いましたか。

そうですねぇ。理由は、圧政に苦しむ民を見兼ねたわたしが、陛下に直訴したところ、陛下が怒りのままにわたしを殺そうとして、わたしに返り討ちにあった。

とでもしておきましょうかね。

皆さんは、陛下の命でわたしを殺そうとした近衛兵を制圧した英雄達というところですかね。


とりあえず、長年族長の座お疲れ様でした。

あの世でゆっくりおやすみ下さい。ははははは。」

高笑いするクルーの隙をついて一太刀入れる。

「往生際が悪いですね。
陛下、この国はわたしが頂きますよ。
では、さようなら。」

クルーの剣が振りかぶられ、わたしの首に落ちようとした時、わたしは死を覚悟した。

しかし、クルーの剣が落ちてくることはなかった。

侵入してきた兵士と共にクルーの体が突然吹いた突風に飛ばされたのだ。

窓が開いているわけでも無いのに。

飛ばされて気を失っているクルー達を囲むように光のリングが出来たと思うと、赤い光で拘束されたようだ。

何が起こったのか全く分からず、暫し放心していたが、倒れている侍従長が目に入り駆け寄った。

かなり深傷を負っている。

これでは治療しても助かるまい。

そう思って侍従長を悼んでいると、彼の傷がどんどん塞がっていくではないか!

やがて、全ての傷が塞がった時、侍従長が目を開けた。

「おおっ、奇跡だ。奇跡が起こった。」

わたしは歓喜に震えた。


バタバタバタバタ

「陛下、陛下ご無事でしたか。」

息を切らせながら入ってきたハリーの顔を見て、わたしは安堵するのであった。




全滅したと思っていた近衛兵の半数くらいが生きていた。

彼等は、すぐに拘束されているクルー達を地下牢へ連れて行った。

今わたしの執務室には、わたし、ハリー、侍従長の3人がいる。

「そうですか、やはりクルーが。

実はこれまでの調査結果をご報告しようとして王宮に参ったのですが、間に合わなかったようです。

申し訳ありませんでした。」

「もう良い。よく駆けつけてくれた。

しかし、今日は奇妙なことが起こるものだ。

窓が閉まっているのに突風が吹いたり、その突風でクルー達が吹き飛ばされ、おかしな光で拘束されたり。

死んだと思った侍従長の傷が癒て生き返ったり。

誠に不思議なことだ。

まぁ、そのおかげで助かったのだがな。」

「陛下、ご報告させて頂いてよろしいでしょうか?」

「ああ、頼む。」

「クルーですが、官僚の大半を味方につけて、不正をしたい放題だったみたいです。

税率も我々が決めたものに水増しして取り立てておったみたいです。

地方の領主や監察官も大半がグルで、わたしへの報告も自分達の都合の良いように偽造したものだったのです。

唯一ブァイフ領だけが、クルー達に加担せずに抵抗していたのですが、先日クルーの手に掛かり皆殺しになってしまいました。」

何ということだ!

まつりごとを預かる者の大半が不正に加担し、真面目に正義を貫こうとした者が毒牙に掛かってしまうとは。

全てはわたしの目が曇り、良く見えなくなっていたからだろう。

「バァイフには、申し訳ないことをした。
なんとかしてやりたいが、誰も残っていないのであれば………」

「陛下、その件なのですが、バァイフ家の令嬢であるカチヤが生き残っており、わたしのところで保護致しております。」

何ということだ。神はいるのか!

「すぐに会いたい。会って詫びるのだ。

わたしの不徳で、かけがえのない忠臣を死なせてしまったのだ。

出来るだけのことはしてやりたい。」

「承知しました。
それともう1人お目通し頂きたい方がいらっしゃるのですが、お呼びしてもよろしいでしょうか?」

「構わん。ハリーがこのタイミングでそう言うのであれば、今回の件に関する者なのであろう。」

「ではお呼び致します。カトウ公爵様、ランス君、イリヤちゃん。姿を見せて下さい。」

ハリーがその場で声を掛けると、目の前に片膝を床につけた3人が急に現れた。

「なんだ、何が起こった。」

訳がわからない。

「陛下、この方達が今回のクルーのクーデターを防いで下さった方達です。

ジャボ大陸のキンコー王国という国から来られた、カトウ公爵様と、その御子息です。」

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