最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~
第180話 【ハリーの苦悩】
<<スパニ族宰相ハリー視点>>
陛下よりヤライ、ヤコブ、ロンドーの調査を依頼された。
わたしは早速、信頼できる手の者3人をそれぞれの国に潜入させ、調査に当たらせた。
「ハリー様、ヤライに入れたライヤーとヤコブに入れたコリーから連絡が参りました。」
わたしは執事から手紙を受け取り中を確認した。
当然手紙は暗号化されており、わたしを含め数名の者しか読めない。
見たとしても文字だと判断すること自体無理だろう。
「うん? 村には豊富な水が川より引かれ、耕作地では夏と秋の2回作物が収穫できる?
そんなバカなことはないだろう。
年に2回も収穫出来るなんて!」
「ハリー様、以前知人より聞いたことがあります。
なんでも、東方にある島国では、麦とその土地特有の作物を同じ耕作地で作っていると。」
「それが本当であれば、不可能ではないか。
しかし、ヤライは我が国と同様で平地が多く、川から潤沢に水を引くのは難しいはず。
年に2回も作物を作るとなると、水の確保だけでも大変だと思うが?
まさか、前回の報告にあった村まで水を引いている水路と川に設置してあるというあの丸い構造物か!」
わたしは、前回の報告書に書いてあった絵を見ながら考えた。
川の中に設置されてた丸い木製の構造物。
高さは5メートルほどか。
側面には水を汲むための桶がいくつも付いており、川の流れと共にその構造物が回転すると桶が勝手に水を汲む。
桶は一番上まで来ると中の水を溢すが、溢した先には桶と同じくらいの高さまで延びた水路の橋があり、その水路は村の中心部まで水を引いている。
たしかにこの構造物を大量に作って設置すれば、全ての耕作地に水を引くことは可能だが…………
それほどの技術力と労働力はいったい何処から?………!!
ジャボ大陸!
まさかジャボ大陸からの協力で、これほどまでのことが?………
わたしはヤコブに入れたコリーからの報告を開く。
焦って少し破ってしまうが、些細なことだ。
コリーからの報告では、『これまでに見たことも無い製品がたくさん製造され、どの製品も大量生産されているにも関わらず、非常に精度の高い』とある。
ヤコブは高い技術力を持ちながらも、技術力に拘るばかりに新しい製品の開発に力を入れてこなかったので、新しく製品を増やすのが苦手だったはずだ。
しかも職人の登用基準が非常に高く、いかにドワーフとはいえ、高精度の製品を大量生産することは不可能なはず。
何故こんなことが?
わたしの中で謎は深まるばかりだった。
わたしがその秘密を知るまでに、あと半年の期間が必要であった。
<<ハリー宅掃除婦視点>>
いつものようにハリー様の部屋を掃除していると、机の下に紙の切れ端が落ちていることに気付きました。
あの几帳面なハリー様にしては珍しいことです。
切れ端を拾って見てみると、文字でもなければ、絵でもない子供の落書きみたいなのが書いてあります。
ハリー様にお渡しするべきでしょうか?
でも最近のハリー様はお忙しそうだし、今日も気難しそうだったから、こんなの渡したら怒られそう。
わたしはそう判断すると、その紙をゴミ箱に捨てました。
「あら、もうこんな時間!
急がなくっちゃ。」
わたしは次の部屋に急ぎました。
<<ヤコブに潜入中のコリー視点>>
ヤコブに行くのは何年ぶりだろうか?
ヤコブはドワーフの国で、頑固な職人が多い。
それぞれの家の技術を一子相伝で守っているので、機密管理にもうるさいところだ。
何よりも、仕事しているか酒を飲んでいるかどっちかなので、常に酒臭い。
俺の嫌いな酒の匂いが街のいたるところでプンプンしている。
こんなところできれば来たくないのだが、ハリー様のご命令とあらば仕方がない。
どうせ何百年と変わらない生活をしているのだ、数年来ていなかったとしても何も変わってはいまい。
久しぶりのヤコブの街は相変わらず酒臭い。
やっぱり何も変わっていないじゃないか!
とりあえず、商店に入ってみて品物に変化が無ければさっさと適当に報告してスパニに帰ろう。
俺は街の大通りにある一軒の商店に入った。
店に入って驚いた。
品物の数が多い。
以前来た時は、物がほとんど並んで無かった。
どんなものが欲しいかを店主に説明して、オーダーすることが普通だったのだ。
だから、店頭にはサンプルくらいしか置いていなかった。
オーダーメイドだから、価格は作り手の言い値になってしまい、高くついた。
もちろん品物は良い物なので、価格に不満は無いのだけれど、時間はかかるし、もう少し廉価品も欲しい時だってあった。
しかし今は全く違う。
品揃えは豊富で、高価な物から廉価品まで様々な種類がある。
奥には在庫もあるようで、店主が次々と出してくる。
値札を見ると、製作した工房名が書かれているが、廉価品の方には『ロンドー製』の文字が入っている。
ロンドーと講和条約を結んだと聞いているが、輸入も始めたようだ。
もちろん、ヤコブの工房で作られた物は値も張るが品質は高い。
それに比べてロンドーの物は、少し品質は落ちるが値は安い。
日常使いであれば問題無いレベルだろう。
ヤコブ内での生産品もロンドーからの輸入品もよく売れているようだ。
店主に聞くと、族長がルソン殿に代わってからヤコブは急成長したようだ。
ルソン殿はうわさではジャボ大陸に渡り、向こうで成功して戻って来たと聞いている。
もしかしたら、向こうの大陸の知識を導入したことで、いろいろと変わったのかもしれない。
もう少し調査をしてみよう。
陛下よりヤライ、ヤコブ、ロンドーの調査を依頼された。
わたしは早速、信頼できる手の者3人をそれぞれの国に潜入させ、調査に当たらせた。
「ハリー様、ヤライに入れたライヤーとヤコブに入れたコリーから連絡が参りました。」
わたしは執事から手紙を受け取り中を確認した。
当然手紙は暗号化されており、わたしを含め数名の者しか読めない。
見たとしても文字だと判断すること自体無理だろう。
「うん? 村には豊富な水が川より引かれ、耕作地では夏と秋の2回作物が収穫できる?
そんなバカなことはないだろう。
年に2回も収穫出来るなんて!」
「ハリー様、以前知人より聞いたことがあります。
なんでも、東方にある島国では、麦とその土地特有の作物を同じ耕作地で作っていると。」
「それが本当であれば、不可能ではないか。
しかし、ヤライは我が国と同様で平地が多く、川から潤沢に水を引くのは難しいはず。
年に2回も作物を作るとなると、水の確保だけでも大変だと思うが?
まさか、前回の報告にあった村まで水を引いている水路と川に設置してあるというあの丸い構造物か!」
わたしは、前回の報告書に書いてあった絵を見ながら考えた。
川の中に設置されてた丸い木製の構造物。
高さは5メートルほどか。
側面には水を汲むための桶がいくつも付いており、川の流れと共にその構造物が回転すると桶が勝手に水を汲む。
桶は一番上まで来ると中の水を溢すが、溢した先には桶と同じくらいの高さまで延びた水路の橋があり、その水路は村の中心部まで水を引いている。
たしかにこの構造物を大量に作って設置すれば、全ての耕作地に水を引くことは可能だが…………
それほどの技術力と労働力はいったい何処から?………!!
ジャボ大陸!
まさかジャボ大陸からの協力で、これほどまでのことが?………
わたしはヤコブに入れたコリーからの報告を開く。
焦って少し破ってしまうが、些細なことだ。
コリーからの報告では、『これまでに見たことも無い製品がたくさん製造され、どの製品も大量生産されているにも関わらず、非常に精度の高い』とある。
ヤコブは高い技術力を持ちながらも、技術力に拘るばかりに新しい製品の開発に力を入れてこなかったので、新しく製品を増やすのが苦手だったはずだ。
しかも職人の登用基準が非常に高く、いかにドワーフとはいえ、高精度の製品を大量生産することは不可能なはず。
何故こんなことが?
わたしの中で謎は深まるばかりだった。
わたしがその秘密を知るまでに、あと半年の期間が必要であった。
<<ハリー宅掃除婦視点>>
いつものようにハリー様の部屋を掃除していると、机の下に紙の切れ端が落ちていることに気付きました。
あの几帳面なハリー様にしては珍しいことです。
切れ端を拾って見てみると、文字でもなければ、絵でもない子供の落書きみたいなのが書いてあります。
ハリー様にお渡しするべきでしょうか?
でも最近のハリー様はお忙しそうだし、今日も気難しそうだったから、こんなの渡したら怒られそう。
わたしはそう判断すると、その紙をゴミ箱に捨てました。
「あら、もうこんな時間!
急がなくっちゃ。」
わたしは次の部屋に急ぎました。
<<ヤコブに潜入中のコリー視点>>
ヤコブに行くのは何年ぶりだろうか?
ヤコブはドワーフの国で、頑固な職人が多い。
それぞれの家の技術を一子相伝で守っているので、機密管理にもうるさいところだ。
何よりも、仕事しているか酒を飲んでいるかどっちかなので、常に酒臭い。
俺の嫌いな酒の匂いが街のいたるところでプンプンしている。
こんなところできれば来たくないのだが、ハリー様のご命令とあらば仕方がない。
どうせ何百年と変わらない生活をしているのだ、数年来ていなかったとしても何も変わってはいまい。
久しぶりのヤコブの街は相変わらず酒臭い。
やっぱり何も変わっていないじゃないか!
とりあえず、商店に入ってみて品物に変化が無ければさっさと適当に報告してスパニに帰ろう。
俺は街の大通りにある一軒の商店に入った。
店に入って驚いた。
品物の数が多い。
以前来た時は、物がほとんど並んで無かった。
どんなものが欲しいかを店主に説明して、オーダーすることが普通だったのだ。
だから、店頭にはサンプルくらいしか置いていなかった。
オーダーメイドだから、価格は作り手の言い値になってしまい、高くついた。
もちろん品物は良い物なので、価格に不満は無いのだけれど、時間はかかるし、もう少し廉価品も欲しい時だってあった。
しかし今は全く違う。
品揃えは豊富で、高価な物から廉価品まで様々な種類がある。
奥には在庫もあるようで、店主が次々と出してくる。
値札を見ると、製作した工房名が書かれているが、廉価品の方には『ロンドー製』の文字が入っている。
ロンドーと講和条約を結んだと聞いているが、輸入も始めたようだ。
もちろん、ヤコブの工房で作られた物は値も張るが品質は高い。
それに比べてロンドーの物は、少し品質は落ちるが値は安い。
日常使いであれば問題無いレベルだろう。
ヤコブ内での生産品もロンドーからの輸入品もよく売れているようだ。
店主に聞くと、族長がルソン殿に代わってからヤコブは急成長したようだ。
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