最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

マーくん

第166話 【キャロ側近ハロの独白】

<<キャロ側近ハロ視点>>
あの日、そうキャロ様の父上キャン様がヤライの独立戦争で亡くなってから全てが始まったのです。

キャン様は、当時ロンドーでも最有力者で、大きな権力を持っておられました。

キャン様は、ロンドーの将来を憂い、ヤライの独立を支持しておられました。

密かにヤライと連絡を取り、双方最小限の被害で独立できるように、取り計らっておられました。

キャン様は、現在発生しているロンドーの人口問題を当時から予測しておられ、その解決のためにヤライを独立させようとしていました。

当時のヤライは植民地として疲弊していました。

元々生殖能力が低いヤライ族は、ロンドー各地からの強制徴用もあり、人口は減るばかりでした。

農業が盛んで、豊富な食糧を生産できるヤライ族は将来のロンドーにとって、必要不可欠な存在にも関わらず、ロンドーの有力者達は、ヤライを喰いものにすることしか考えていなかったのです。

キャン様は、ヤライを独立国とすることで、ロンドーの束縛を排除し、ヤライ族の向上心を上げることを考えていました。

その向上心が更に生産性を上げ、その食糧がロンドーに輸入されると共に、ロンドーからヤライに移民を入れることで、ロンドーとヤライの人口問題を解決しようとしておられました。

しかしその案は、バクターによって潰されたのです。

バクターはキャン様に次ぐ有力者で、ヤライを喰いものにしている元凶でした。

ヤライから食糧や働き手を平気で掠奪し、それを国外に売ることで莫大な利益を上げていました。

自らの職務を利用し、非合法擦れ擦れにそれらは行われていたため、キャン様も処罰することが出来なかったのです。




事態が大きく変わったのは、ヤライ族が独立を旗印に立ち上がった時でした。

ことの発端は、ヤライ族族長の妻デラさんの失踪に始まります。

実はバクターが、デラさんを性奴隷にしようと誘拐したのです。

しかし、デラさんは自ら命を立つことで、ヤライの尊厳を守ろうとしました。

デラさんの死に憤ったバクターは、隠密を使ってヤライの街に火を放ち、デラさんの死体を晒したのでした。

ヤライ族の怒りは尋常ではなく、その矛先はロンドーに向けられました。


キャン様は、それを止めようとヤライ族に接触を試みますが、その時バクターが放っていた隠密に殺害されました。

バクターは、キャン様がヤライ族と共謀してロンドーの転覆を画策していたと王に報告しました。

王の怒りは尋常ではありません。
すぐにキャン様の一族は全て捕らえられ、死体は街の広場に晒されました。

唯一、生まれたばかりのキャロ様だけが、王妃様の懇願により助けて頂きました。

王妃は、我が子と同じようにキャロ様を育てて下さいました。

10歳となったキャロ様は、アーク殿下の侍従として、歳の離れた友として、成長していきました。

真っ直ぐで、賢くて、愛国心に溢れたキャロ様でしたが、2年前のあの日を境に、変わられてしました。

あの日、とある有力者のパーティーに招待されたキャロ様は、そこにいた別の有力者から自身の家が被った理不尽な末路について聞いてしまったのです。

彼はバクターを恨みました。
しかし、バクターは数年前に亡くなっており、その恨みはバクターの子供と王家に向けられたのです。

しかし、キャロ様は王家から受けた恩を忘れることは出来ませんでした。

それが先日のアーク殿下への王権移譲で事情が変わりました。

あのバクターの息子であるヤクル様が宰相になることが決まったのです。

ヤクル様は、偶然にもキャン様が目指しておられたヤライとの協力関係を政策として打ち出しました。

バクター様が完全否定し、キャロ様一家を破滅させたのと同じものです。

キャロ様の復讐心が再燃し、それを助長し煽る者も現れたため、とうとう謀反という手段に訴えてしまったのです。

わたしは、それを止めることが出来ませんでした。

いえ、わたしに本当に止める気があったのかどうか。

わたしはキャン様一家に使える家宰でした。
キャン様は職にあぶれ住むところにも困っていたわたしを拾って下さり、わたしを重用して下さいました。

キャン様はわたしにとって掛け替えの無い恩人であり、キャン様亡き後、わたしはキャン様の恨みを晴らすことだけを考えて、生きてきました。




いまだから告白します。
キャロ様が復讐心を抱いたきっかけとなった有力者との接触を仕組んだのは、わたしです。

もちろん、謀反の直接のきっかけとなった者達との接点を作ったのもわたしです。

キャロ様の謀反が失敗したのは想定外でしたが、こうしてキャン様の無念を白日の元に曝け出されたことだけでも、わたしの目的は達成されたのです。

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