最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

マーくん

第75話【魔族との交渉1】

<<マサル視点>>

俺はナーカ教国に行く前にマリス様の意見を聞いておこうと思った。

近くの教会に行き祈りを捧げる。

いつものように周りが明るくなりマリス様が姿を現わす。

「マサルさん、久しぶりね。元気そうでなにより。

最近直接会ってなかったから寂しかったわ。

だいぶこちらの世界で頑張ってくれているので、わたしも課内で評価が上がってホクホクよ。

最近は、他の世界の立て直しを頼まれちゃったりして大忙しなのよ。

本当にありがとね。それでね……」


※創造神マリス様は神の国のOLです。わからない人は、第8話を参照して下さい。


マリス様は相変わらず話し始めたら止まらない。
それに最初の頃から比べると話し方が完全に砕けてるし。

「マリス様、ご無沙汰しておりました。
お元気そうでなによりです。

それで、今日は相談があってやって来ました。

実は、………」

俺はハーン帝国への制裁から現状までを出来るだけ細かく説明した。

「経緯は以上です。
これまでの経緯と頂いたタブレットで調べられないことを加味すると、ナーカ教国は魔族が支配しているとしか考えられません。

そこでご相談なのですが、今後の魔族との付き合い方についてです。

このままでは、魔族が支配地を広げていこうとするかも知れないですし、恐怖に囚われた国がナーカ教国に攻め入るかも知れません。
どちらにせよ、この世界を発展させる妨げになるのは間違いないでしょう。

一度魔族と会って話しをしてみようと思っていますがいかがでしょうか?」

「そうね、この世界に発展してもらわないと、わたしの評価に響いてくるし、もし強制介入することなんかにでもなったら、今度はどの部署に飛ばされるかわからないし……」

「マリス様、あのぉ……」

「あっ、ごめんごめん。自分の世界に入っちゃいましたー。って、ごめんなさいね。

そうね、魔族はわたし達のことを良く思っていないから、わたしの神託とかはダメね。

こんな時は、………

あっそうだ。マオーさんに相談してみようか。

マオーさんってね、先輩なんだけどね、お客様相談室の人で、

あっお客様相談室っていつもいろんな世界の住人からの苦情や要望を聞いて神の啓示を出したり、天罰を与えたりする部署なんだけど。

でっ、そのマオーさんは、魔族の扱いが上手くって、最近では『魔王様』って呼ばれてるのよ。
面白いでしょうぉ!」

神の啓示や神罰を下す人って……笑えない。

「それでね、マサルさんには前に大地の神シールの失敗で魔族が発生したことを話したと思うけど、あれって他の世界でも頻繁に起こっているらしいの。

それで魔族に対する苦情があまりに多いから魔族専用の窓口をお客様相談室に設置したの。
そこの主任がマオーさんよ。

まぁ、わたしに任せておきなさい。マオーさんと相談して上手くやっとくわ。

また連絡するから、ナーカ教国に行くのは待っててね。」

辺りの明るさが消え、元の神殿に戻った。

マリス様は、相変わらずだ。

2日後の早朝、目を覚ますと目の前にマリス様の顔があった。

「うわぁ、マリス様いきなりなんですかぁ、びっくりしますよー。」

「この間のマオーさんの件、決まったから伝えに来たのよ。
でもマサルさんの寝顔が可愛かったからちょっと見てただけよ。」

「わかりましたから、ちょっと離れて下さい。」

「もおぉ、真っ赤な顔しちゃて可愛いいんだから。」

やっと避けてくれたマリス様をテーブルに着かせてその前に座る。

「マオーさんに話しをしたら快く受けて下さったわ。
1週間程、時間が欲しいって。

さぁすが、わたしの人望よね。
じゃあ、頑張ってねー。」

そのまま消えようとするマリス様を慌てて捕まえた。

「もおぉ、強引なんだからぁ。
言ってくれればいいのに。」

顔を赤くしたマリス様がくねくねしている。

絶対勘違いしてる。

「いや、そうじゃなくってですねー、マオーさんはどう対応して頂けるのでしょうか?」

マリス様のくねくねが止まる。

「えっ、ええっと、きっと上手くやってくれるわよ。ねっ。」

「もしかして聞いていないとか?」

「いや、聞こうとしたのよ。
そしたらね、クレーム対応の要請が来て、聞けなかったのよ。
本当よ。」

あの慌て方は怪しいが、とりあえずなるようになるか。

マオーさんとの約束の1週間が経ち、俺はナーカ教国に向かった。

いつものように空を走って、モーグル王国からハーン帝国を抜けて、ナーカ教国に入った。

国境砦は無人なので、そのまま通り過ぎようとしたら、何かにぶつかった。

「いてっ、これは結界か。
結構丈夫なものだな。」

力技で結界を破壊することも考えたが、変に魔族を刺激しない方が良い。

目に魔力を込めて結界を見ていると、国境砦の崖の下すぐのところが一部剥がれている。
そこから入れそうだ。

俺は、結界の亀裂からナーカ教国に侵入した。

ここからは敵地なので、注意が必要だ。

国境からできるだけ地面に沿って教都に向かう。

国境から教都までは、それほど距離が無く、その途中には荒廃した砂地があるだけだ。

ナーカ教国は、西側にハーン帝国があるが、南北は峻険な岩山に囲まれている。

もう少しで教都に着くってところで、検問をしている兵士に見つかった。

少し手前で地上に降りた俺は、戦闘になることを考えて、警戒感を強めた。

「おまえ、ハーン帝国の者ではないな。
あの結界を抜けてきたのか?
どうやって抜けたのだ。」

俺が結界の裂け目を見つけて、そこから入ってきたことを告げる。

「あの結界を見抜くとは、人間としては、優秀だと認めよう。

シン様がおっしゃっていた人間とは、おまえのことだろう。

俺は教会警備隊 隊長のカイヤだ。人間、おまえの名前は?」

「マサルだ。」

「マサル、シン様がお待ちだ。
俺について来い。」

カイヤはそう言うと空に飛び上がる。

俺は訳がわからないが、とりあえずカイヤについて空を走る。

「これは驚いた。おまえ、空も飛べるのか。
人間にしておくのはもったいないな。
気にいった。この国で何かあれば、俺を頼ってくれば良いぞ。」

「ああ、その時は頼むよ。」

俺達2人は、そのまま教都にある大神殿に向かった。

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