最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~
第57話【カトウ運輸、賊に襲われる1】
<<カトウ運輸用心棒ハリス視点>>
俺の名はハリス。ワーカ領の山奥に根城を構え、義賊を名乗っていた盗賊団「風の旅団」の首領だった男だ。
ちょっと前に、ワーカ領に来られていたユーリスタ様が何者かに襲われる事件があった。
犯人はハローマ王国の人間だったのだが、その捜査段階で大規模な山狩りがあったんだ。
ユーリスタ様はワーカ領主マーティン様の妹君で、ナーラ公爵の奥方であり、キンコー王国の行政改革担当大臣様だ。
今までは山狩りだと言っても、俺達のところへは形だけの攻撃で、すぐに引き揚げてやがったのに、今回に関しては、ワーカ領騎士団も本気で来やがった。
当然我らも奮闘するが多勢に無勢、とうとう捕まってしまった。
当然縛り首だと思っていたんだが、義賊としての俺の名は結構広まっていたらしい。
処刑の日になって、大量の嘆願書が届いた。
ほとんどが街の住人で、俺が悪党から助けてやったやつらばかりだ。
別に助けようとして助けた訳じゃ無いぞ。
たまたま悪党を懲らしめてやろうとした時に居ただけだぜ。
たまたまだぜ。
でも、嘆願書を出してくれるなんて嬉しいじゃねえか。
これで死んでも本望ってもんだぜ。
そんなことを考えていると、1人の若い兄ちゃんが近づいてきた。
「ちょっと、話していいですか。
あなた方、街の住人達に人気がありますね。
どうです、部下の人達も連れて、わたしのところで働きませんか?」
小声でコイツ何言ってんだ。
俺は、今から死刑になるんだぞ。
「兄ちゃん、俺達を生かしてくれるのか?マジか?」
「マジです。役人の中でも、あなた達を認めている人達もいるみたいです。
ただ、この街で解き放つのもまずいんですよね。
だから、「王都で裁判することにして、外に出しちゃおう。」ってことになったんです。一緒に行きますか?」
まぁ、俺は独り者だしここで死んでも構わない。
ただ、部下の中には、かかあの居る奴もいるしな。
ケンゾーなんてついこの間子供が出来たっけ。
彼奴を生かす為なら、この変な兄ちゃんにかけてみるか。
「まぁ、よろしく頼みます。」
こうして俺達「風の旅団」は、カトウ運輸の一員になったのさ。
カトウ運輸本社の玄関口にある守衛所が今の俺の職場だ。
守衛所って言っても、でっかい集合住宅になってて、俺達総勢50人はここで寝泊まりしている。
あの時俺らを逃がしてくれた兄ちゃんは、ユーリスタ様のお付きの者だった。
ユーリスタ様が王都に戻る時、俺達も一緒について行った。
その時初めて知ったんだが、あの兄ちゃん、あの「マサル、ハーバラ村の奇跡」の主人公マサルだった。
前に王都に行った時に、流行りの舞台だって言うから見に行ったんだ。
いやあ、アレは泣いた。
苦労しながら困難に立ち向かい、様々な成果を出していくマサル。
ヒロインのリザベートとの恋の行方も気になるけど、やっぱりジョージ騎士達と難工事の水路を掘り切ったところなんかは、本当に泣けたなぁ。
後で本人から、ほとんど脚色ですって言われた時は落ち込んだけど、これは秘密だ。
王都に入って、マサルの兄ちゃんの店に着いたら唖然とした。
無茶苦茶でかい。そして看板にはカトウ運輸の文字。
「さあ着きましたよ、皆さん。
あっヤングさん、出迎えなんて良いのに。
あっこの人達、トランシーバーで伝えておいた人達です。
この人がリーダーのハリスさんです。
ハリスさん、こちらがうちの商会の番頭でヤングさんです。」
「ヤングです。ハリスさん達お疲れでしょう。
奥にお茶を用意してありますよ。
会頭、お帰りなさいませ。
しばらくは、ゆっくりできるのですか?」
ううん?この兄ちゃん、いやマサルさん、このでっかい商会の会頭なの?
「団長、思い出しました。カトウ運輸の会頭ってあのマサルさんでした。」
「風の旅団」きってのインテリのマーズが、俺に耳打ちした。
「マサル様、ナーラ大公爵から将棋のお誘いも来てますよ。」
「たぶんワーカ領での顛末を聞きたいんでしょうね。
ちょっと行って来ますね。」
大公爵様からの呼び出しに、軽い気持ちで出ていくなんて、……… マサル…様。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ハリスさん、何人か裏口に待機させて置いてくれませんか?
誰かがこちらを監視している感じがしばらく前からしてるんです。
何もなかったらいいんですけどねぇ。
ここも大きくなったんで、逆恨みのひとつやふたつあってもおかしくないでしょう。」
番頭のヤング様が気の抜けた声で、話し掛けてきた。
番頭って言ったって、天下のカトウ運輸のナンバー2だぜ。
小国の宰相様くらいの権力を持ってるんじないか?
まぁ、マサル様といい、ヤング様といい、権力とも金とも全く無関係だけどね。
でも良く知らない奴等からしたら、カトウ運輸という大商会の幹部は、脅威の存在に映るかもしれないな。
何にしても、5人程裏口にまわしておくか。
<<????視点>>
そろそろカトウ運輸本社に張り付いて10日ほどになる。
相変わらず会頭のマサルは神出鬼没だ。
社屋から出た気配が無いのに、玄関から帰って来たり、馬車で10日以上かかる様な遠方に出かけたとの情報を得て、出発を確認したはずなのに、半日程で帰って来たりする。
我らを欺く為の擬装かとも思い、つけてみたら途中でまかれてしまった。
後に確認してみると確かに現地に行っていた形跡があった。
まるで瞬間移動の魔法の様だ。
魔法?まさかそんなことは無いだろう。
我ら魔族の血を濃く引く者か、エルフくらいしか魔法は使えないはずだ。
2月程前、ハローマ王国ダゴー領に潜入させていたフェアリーから連絡が途絶えた。
どうやら正体がバレて、処刑されたようだ。
フェアリーは、得意の精神操作を使ってハローマ王国ダゴー領の深くに入り込んでいた。
ダゴー公爵の令嬢マリーに取り入って、キンコー王国との離間を画策した。
マリーの心の弱さもあり、それは失敗したようだが、2ヶ月前に、キンコー王国の使節を出迎えたダゴー公爵を、使節共々爆死させ、ダガー城を制圧したという報告があったのだ。
我らの悲願の一端が開いたと一族で喜んでいたが、その後フェアリーからの連絡が途絶えたのだ。
仲間に確認に行かせたところ、ダゴー公爵は生きており、キンコー王国からユーリスタ行政改革担当大臣が訪れて親交を結ぶなど、以前よりも良好な状態になっていた。
そして、その前後にフェアリーが処刑されたらしいと判明した。
全くいまいましい話しだ。
フェアリーの最後の報告の後、一体何があったのか、我らは調査した。
すると、意外にもカトウ運輸のマサル会頭の名前が出てきた。
どうやら、上手くいっていたフェアリーの計画を潰した張本人らしい。
今やキンコー王国の主要人物と目されるマサルとユーリスタ。
この2人が関わっているとなると、非常に厄介なことになるような気がする。
憎っくきマサルだけでも潰しておこうと、カトウ運輸本社にやって来たのだ。
張り込みがバレた様だ。
手薄だった裏口の警備が強化された。
一旦引くか。俺は監視用に1人置いてアジトに戻った。
<<ヤング視点>>
ハリスさんに裏口の警備強化を頼んでから10日が過ぎました。
警備している者に確認すると、監視していた者はいなくなったみたいです。
1度捕まえようとしたらしいんですけど、上手く逃げられたみたいですね。
まぁ、監視していることがバレたんだから、戻ってきてもしょうがないけどですよね。
まだ油断は禁物ですが、すぐにどうこうという問題でもなさそうです。
マサル様にこの話しををしますと、「ちょっと見てくる」と言って出ていかれました。
2時間程してマサル様が戻ってこられ、賊の正体が隠れホンノー人達で異能の力を使うから注意する様にと助言を頂きました。
そうして1ヶ月程経った頃でした。
マサル様の予言通り、賊が襲って来たのです。
俺の名はハリス。ワーカ領の山奥に根城を構え、義賊を名乗っていた盗賊団「風の旅団」の首領だった男だ。
ちょっと前に、ワーカ領に来られていたユーリスタ様が何者かに襲われる事件があった。
犯人はハローマ王国の人間だったのだが、その捜査段階で大規模な山狩りがあったんだ。
ユーリスタ様はワーカ領主マーティン様の妹君で、ナーラ公爵の奥方であり、キンコー王国の行政改革担当大臣様だ。
今までは山狩りだと言っても、俺達のところへは形だけの攻撃で、すぐに引き揚げてやがったのに、今回に関しては、ワーカ領騎士団も本気で来やがった。
当然我らも奮闘するが多勢に無勢、とうとう捕まってしまった。
当然縛り首だと思っていたんだが、義賊としての俺の名は結構広まっていたらしい。
処刑の日になって、大量の嘆願書が届いた。
ほとんどが街の住人で、俺が悪党から助けてやったやつらばかりだ。
別に助けようとして助けた訳じゃ無いぞ。
たまたま悪党を懲らしめてやろうとした時に居ただけだぜ。
たまたまだぜ。
でも、嘆願書を出してくれるなんて嬉しいじゃねえか。
これで死んでも本望ってもんだぜ。
そんなことを考えていると、1人の若い兄ちゃんが近づいてきた。
「ちょっと、話していいですか。
あなた方、街の住人達に人気がありますね。
どうです、部下の人達も連れて、わたしのところで働きませんか?」
小声でコイツ何言ってんだ。
俺は、今から死刑になるんだぞ。
「兄ちゃん、俺達を生かしてくれるのか?マジか?」
「マジです。役人の中でも、あなた達を認めている人達もいるみたいです。
ただ、この街で解き放つのもまずいんですよね。
だから、「王都で裁判することにして、外に出しちゃおう。」ってことになったんです。一緒に行きますか?」
まぁ、俺は独り者だしここで死んでも構わない。
ただ、部下の中には、かかあの居る奴もいるしな。
ケンゾーなんてついこの間子供が出来たっけ。
彼奴を生かす為なら、この変な兄ちゃんにかけてみるか。
「まぁ、よろしく頼みます。」
こうして俺達「風の旅団」は、カトウ運輸の一員になったのさ。
カトウ運輸本社の玄関口にある守衛所が今の俺の職場だ。
守衛所って言っても、でっかい集合住宅になってて、俺達総勢50人はここで寝泊まりしている。
あの時俺らを逃がしてくれた兄ちゃんは、ユーリスタ様のお付きの者だった。
ユーリスタ様が王都に戻る時、俺達も一緒について行った。
その時初めて知ったんだが、あの兄ちゃん、あの「マサル、ハーバラ村の奇跡」の主人公マサルだった。
前に王都に行った時に、流行りの舞台だって言うから見に行ったんだ。
いやあ、アレは泣いた。
苦労しながら困難に立ち向かい、様々な成果を出していくマサル。
ヒロインのリザベートとの恋の行方も気になるけど、やっぱりジョージ騎士達と難工事の水路を掘り切ったところなんかは、本当に泣けたなぁ。
後で本人から、ほとんど脚色ですって言われた時は落ち込んだけど、これは秘密だ。
王都に入って、マサルの兄ちゃんの店に着いたら唖然とした。
無茶苦茶でかい。そして看板にはカトウ運輸の文字。
「さあ着きましたよ、皆さん。
あっヤングさん、出迎えなんて良いのに。
あっこの人達、トランシーバーで伝えておいた人達です。
この人がリーダーのハリスさんです。
ハリスさん、こちらがうちの商会の番頭でヤングさんです。」
「ヤングです。ハリスさん達お疲れでしょう。
奥にお茶を用意してありますよ。
会頭、お帰りなさいませ。
しばらくは、ゆっくりできるのですか?」
ううん?この兄ちゃん、いやマサルさん、このでっかい商会の会頭なの?
「団長、思い出しました。カトウ運輸の会頭ってあのマサルさんでした。」
「風の旅団」きってのインテリのマーズが、俺に耳打ちした。
「マサル様、ナーラ大公爵から将棋のお誘いも来てますよ。」
「たぶんワーカ領での顛末を聞きたいんでしょうね。
ちょっと行って来ますね。」
大公爵様からの呼び出しに、軽い気持ちで出ていくなんて、……… マサル…様。
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「ハリスさん、何人か裏口に待機させて置いてくれませんか?
誰かがこちらを監視している感じがしばらく前からしてるんです。
何もなかったらいいんですけどねぇ。
ここも大きくなったんで、逆恨みのひとつやふたつあってもおかしくないでしょう。」
番頭のヤング様が気の抜けた声で、話し掛けてきた。
番頭って言ったって、天下のカトウ運輸のナンバー2だぜ。
小国の宰相様くらいの権力を持ってるんじないか?
まぁ、マサル様といい、ヤング様といい、権力とも金とも全く無関係だけどね。
でも良く知らない奴等からしたら、カトウ運輸という大商会の幹部は、脅威の存在に映るかもしれないな。
何にしても、5人程裏口にまわしておくか。
<<????視点>>
そろそろカトウ運輸本社に張り付いて10日ほどになる。
相変わらず会頭のマサルは神出鬼没だ。
社屋から出た気配が無いのに、玄関から帰って来たり、馬車で10日以上かかる様な遠方に出かけたとの情報を得て、出発を確認したはずなのに、半日程で帰って来たりする。
我らを欺く為の擬装かとも思い、つけてみたら途中でまかれてしまった。
後に確認してみると確かに現地に行っていた形跡があった。
まるで瞬間移動の魔法の様だ。
魔法?まさかそんなことは無いだろう。
我ら魔族の血を濃く引く者か、エルフくらいしか魔法は使えないはずだ。
2月程前、ハローマ王国ダゴー領に潜入させていたフェアリーから連絡が途絶えた。
どうやら正体がバレて、処刑されたようだ。
フェアリーは、得意の精神操作を使ってハローマ王国ダゴー領の深くに入り込んでいた。
ダゴー公爵の令嬢マリーに取り入って、キンコー王国との離間を画策した。
マリーの心の弱さもあり、それは失敗したようだが、2ヶ月前に、キンコー王国の使節を出迎えたダゴー公爵を、使節共々爆死させ、ダガー城を制圧したという報告があったのだ。
我らの悲願の一端が開いたと一族で喜んでいたが、その後フェアリーからの連絡が途絶えたのだ。
仲間に確認に行かせたところ、ダゴー公爵は生きており、キンコー王国からユーリスタ行政改革担当大臣が訪れて親交を結ぶなど、以前よりも良好な状態になっていた。
そして、その前後にフェアリーが処刑されたらしいと判明した。
全くいまいましい話しだ。
フェアリーの最後の報告の後、一体何があったのか、我らは調査した。
すると、意外にもカトウ運輸のマサル会頭の名前が出てきた。
どうやら、上手くいっていたフェアリーの計画を潰した張本人らしい。
今やキンコー王国の主要人物と目されるマサルとユーリスタ。
この2人が関わっているとなると、非常に厄介なことになるような気がする。
憎っくきマサルだけでも潰しておこうと、カトウ運輸本社にやって来たのだ。
張り込みがバレた様だ。
手薄だった裏口の警備が強化された。
一旦引くか。俺は監視用に1人置いてアジトに戻った。
<<ヤング視点>>
ハリスさんに裏口の警備強化を頼んでから10日が過ぎました。
警備している者に確認すると、監視していた者はいなくなったみたいです。
1度捕まえようとしたらしいんですけど、上手く逃げられたみたいですね。
まぁ、監視していることがバレたんだから、戻ってきてもしょうがないけどですよね。
まだ油断は禁物ですが、すぐにどうこうという問題でもなさそうです。
マサル様にこの話しををしますと、「ちょっと見てくる」と言って出ていかれました。
2時間程してマサル様が戻ってこられ、賊の正体が隠れホンノー人達で異能の力を使うから注意する様にと助言を頂きました。
そうして1ヶ月程経った頃でした。
マサル様の予言通り、賊が襲って来たのです。
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