朝昼晩

2.沖縄へ

「まもなく着陸致します。」


のアナウンスと共に目を覚ました私は飛行機の小窓を覗く。
内側が曇っていたので、手のひらで拭いズボンでふいた。


小窓の外には青い海に囲まれた孤島があった_。






飛行機を降りると、湿気の凄さに驚いた。
まだ6月中旬なのにこの暑さ・・・。


兎にも角にも、私は不動産に急がないと行けなかった。




「すいません。お部屋を契約した山崎と申しますが・・・」


「あぁ〜!山崎さんね!お待ちしておりました!さーさ、こっちに座って座って!」
小太りで派手な柄のかりゆしをきたそのおじさんは茶色い革製の古い椅子に手招きをした。


「私は、”金城”といいます。よろしくね、山崎さん。」
「よろしくお願い致します・・・。」


「なんだ、あんた元気ないさ!お茶でも飲んでいきなさい。さんぴん茶は飲めるかな?」
「さんぴん茶ってなんですか?」


「さんぴん茶っていうのは・・・うーん、さんぴん茶さ。たとえが思いつかなくてごめんね。今お茶持ってこようね。」


そういって半ば強制的にさんぴん茶を頂いた。


「あ、ジャスミン茶みたいですね・・・!」


「あー!そうそう、それだね!」


「それで、契約の方・・・。」


「そうだったね。ぱぱっと終わらせちゃおうか!」


そういって流れるような説明と、契約書に判子、サイン、鍵を受け取り家に入る準備ができた。


「沖縄初めてでしょ?わからないとおもうから車で送っていこうね。」


「ありがとうございます!とても助かります。」


金城さんにつれられて、不動産屋を出た後向かい側にある駐車場まで歩いた。


「沖縄は暑いでしょ?これからもっともっと暑くなるから気をつけるんだよ。」


「梅雨って来るんですか?」


「なーに言ってんだよ、もうこの間梅雨は終わったよ。」


と金城さんはガハハと笑いながら私の肩をバシバシと叩いた。


駐車場につき、車にのせてもらった。


「ごめんね〜、今こんな車しか無くて。乗せる荷物は1つだけかな?」


「い、いえ、気にしないです。送っていただけるだけで有り難いですから。1つだけです。」


のせてもらった車は黄色の軽自動車だった。
後々気がつくことになるが、沖縄では軽自動車の割合がものすごく高いのだ。




車にのって8分位たったころ、


「あそこのコンビニの前が山崎さん家だよ。」


コンビニの駐車場に車を止めて、新住居へと案内してもらった。


「ちょっとばかしボロいけど、立地てきにも申し分ないし、その割に家賃も安いんだけど・・・本当にいいかな?」


「はい、構いません!」


確かに外観は少しボロかった。
ボロい・・・という表現で合っているのかもなぞだが、
鉄筋コンクリートでできた3階建てのその建物は所々コンクリートが欠けていて、錆びた鉄筋がこちらを見ている。


万が一にもコンクリートの破片が落ちてきたら大事故になるだろうなとは思った。
ただ、そうやってもし大事故にあって死ぬことになってもそれはそれでもいいか、という気持ちだった。


「部屋の中は改装してるからきれいだけどねえ。山崎さんのお部屋は301ね。


玄関前まで行くと小声で金城さんが


「引っ越しの挨拶だけど、お隣さんにはしなくていいからね。ちょっと変わってる人だから。」


続けて私が


「え?そうなんですか?」


というと、


「この間もご近所トラブルでこの部屋空いちゃったんだよね・・・。だから、挨拶しなくていいからね。なにか問題起きたらすぐに教えてね。」


「わかりました・・・。」


「それと、下の階の201には家族が住んでいてね、下の階は201と202の部屋壁をぶち抜いてワンフロアーにしてるから挨拶いくなら201からね。」


「結構自由なんですね?」


部屋の壁をぶち抜くという自由さに思わず笑ってしまった。


「で、1回はお部屋がなくて2階の家族が物置として借りているから入ったりしちゃだめだよ?」


「わかりました。」


要は、この建物には私含めて3世帯だけということだ。


「本当に、なにかわからないこととかあったらすぐに連絡してね。」


「わかりました。」


そう言って金城さんはコンビニまで歩いていった。


車に乗り込むまで見届けた後、早速部屋に入った。


「わー広い・・・。」


1kと聞いていたので、結構狭いのを想像していたが・・・。
30畳位ある部屋に、立派な三口コンロ付きキッチンが端にどーんとあった。


私は広すぎる部屋に急に心細くなった。
部屋が広すぎてどこに居たらいいのかわからないからだ。


困惑しながらもスーツケースを部屋に入れる。




広い部屋の真ん中に大の字で寝そべってみた。


「新しい生活か・・・。」







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