沼
5.キャバクラ編 ★体験入店
もともと私は普通の女の子の人生を送るはずだった。
家庭の事情は色々あったが高校まできちんと通い、就職、中学生の頃から付き合っていた彼とはゆくゆくは結婚して家庭をもつ。
そんな未来が約束されているかのような毎日だった。
しかし、人生うまくいくわけもなく、長く付き合っていた彼をすて新しい男のところへ私は行く。
ここからが最悪だった。
その彼はとても優しく面白かった。
前の彼も決してつまらなくはないのだが、桁違いに面白かった。
というのも、今となっては当時私が20歳、彼が30歳だったので当たり前と言っては当たり前だった。
私も前の彼氏も知らないことを教えてくれるので何もかもが新鮮でたのしかった。
女心も絶妙にわかっていたのか、毎日気分が良かった。
この人にわからないことはないんだとさえ思っていたのだからとても恥ずかしい。
そんな楽しい生活が続いたのも1年と6ヶ月がたったある頃。
「結婚してほしい。」
夕食を一緒に食べているときに突然言われた。
多分ゆくゆくはこの人と結婚するだろうなと思っていたので、
「ふつつかものですが・・・。」
私ははにかみながら答えた。
このときが幸せの絶頂だった。
更に1ヶ月後。
これもまた突然に
「家が欲しい。」
と言い出したものだから私はただ驚いたのを覚えている。
「それは、私も家はいつか欲しいと思うけどまだ結婚もしてないしちょっと早いんじゃない?」
と彼をなだめた。
「家をさ、買うにあたって相談があるんだ。」
「相談?」
「ローンってさ、つまりは借金ってことだと思うんだよね。」
「ん?うん、まあそうだね。」
「俺、借金はしたくないんだよね。」
「は?」
「だからさ、これから二人で頑張ってお金貯めよう!現金で買いたいからさ。」
「ちょっとまって。状況がつかめないんだけど・・・ローンが嫌なのはわかったけど、そんな大金とてもじゃないけど貯められないと思う・・・。」
「だからさ、働いてよ、キャバクラで。」
「え?」
一瞬にして私の体は凍りついた。
平然と言う彼になんと言葉を返していいかわからない。
「若いうちだけじゃん、稼げるのって。ちょっと男とお酒飲むだけで時給5000円くらい貰えるんだからいいじゃん。」
「えっと、その・・・嫌、じゃないの?」
「何が。」
「何がって、私が他の男性と話したりお酒飲んだりするのは嫌じゃないの?」
「だって仕事でしょ?今やってる接客業と変わらないじゃん。もったいないよ今のお店居ても。」
彼をまっすぐ見つめたが、冗談ではなさそうだった。
22歳になった私は今まで”昼”の世界でしか働いたことがない。
何より地味だ。
接客は好きだったが、お客様はおじいちゃんおばあちゃんが多かったため、かなり難しい。
何よりも、経験したこともない職業だったが、内心見下していた。
昼に真面目に働けない人が落ちぶれる場所と思うくらい見下していた。
この騒動はうやむやなまま、1ヶ月ほど経ったある日。
「キャバクラで働く話、覚えてる?」
「え?覚えてはいるけど・・・。」
「若い時間がもったいないから絶対やるべきだと思う。今まで俺が言ってきた事って間違ったことなかったでしょ?」
「それは・・・。」
言葉に詰まった。
確かに間違ったことはなかった。
仕事においても友人関係に置いても、いつも彼のアドバイスによって解決していたし、なにより私のためになることが多かった。
今となっては当たり前のことしか言われていなかったのだけれど・・・。
この日から毎日毎日、キャバクラでの勤務をすすめられた。
そんな中、不運なことに会社が倒産する事になった。
「10月いっぱいでお店を閉めることになりました・・・。」
突然、朝の朝礼で店長が悲しそうにそういった。
それもそのはず、このお店は250年続く老舗のかまぼこ屋さんだったからだ。
近年、若者の練り物離れが酷く売上が年々下がっていた。
ギリギリの利益で耐え忍んできていたが、ついに赤字をだしてしまい、とうとう従業員の給料を払うのが苦しくなってきたのだ。
「会社都合で保険でお金が下りるのでみんな、ゆっくり休んでね。」
そう店長がいうとみんな一斉に泣き出した。
そんな中私は頭が真っ白だった。
家庭の事情は色々あったが高校まできちんと通い、就職、中学生の頃から付き合っていた彼とはゆくゆくは結婚して家庭をもつ。
そんな未来が約束されているかのような毎日だった。
しかし、人生うまくいくわけもなく、長く付き合っていた彼をすて新しい男のところへ私は行く。
ここからが最悪だった。
その彼はとても優しく面白かった。
前の彼も決してつまらなくはないのだが、桁違いに面白かった。
というのも、今となっては当時私が20歳、彼が30歳だったので当たり前と言っては当たり前だった。
私も前の彼氏も知らないことを教えてくれるので何もかもが新鮮でたのしかった。
女心も絶妙にわかっていたのか、毎日気分が良かった。
この人にわからないことはないんだとさえ思っていたのだからとても恥ずかしい。
そんな楽しい生活が続いたのも1年と6ヶ月がたったある頃。
「結婚してほしい。」
夕食を一緒に食べているときに突然言われた。
多分ゆくゆくはこの人と結婚するだろうなと思っていたので、
「ふつつかものですが・・・。」
私ははにかみながら答えた。
このときが幸せの絶頂だった。
更に1ヶ月後。
これもまた突然に
「家が欲しい。」
と言い出したものだから私はただ驚いたのを覚えている。
「それは、私も家はいつか欲しいと思うけどまだ結婚もしてないしちょっと早いんじゃない?」
と彼をなだめた。
「家をさ、買うにあたって相談があるんだ。」
「相談?」
「ローンってさ、つまりは借金ってことだと思うんだよね。」
「ん?うん、まあそうだね。」
「俺、借金はしたくないんだよね。」
「は?」
「だからさ、これから二人で頑張ってお金貯めよう!現金で買いたいからさ。」
「ちょっとまって。状況がつかめないんだけど・・・ローンが嫌なのはわかったけど、そんな大金とてもじゃないけど貯められないと思う・・・。」
「だからさ、働いてよ、キャバクラで。」
「え?」
一瞬にして私の体は凍りついた。
平然と言う彼になんと言葉を返していいかわからない。
「若いうちだけじゃん、稼げるのって。ちょっと男とお酒飲むだけで時給5000円くらい貰えるんだからいいじゃん。」
「えっと、その・・・嫌、じゃないの?」
「何が。」
「何がって、私が他の男性と話したりお酒飲んだりするのは嫌じゃないの?」
「だって仕事でしょ?今やってる接客業と変わらないじゃん。もったいないよ今のお店居ても。」
彼をまっすぐ見つめたが、冗談ではなさそうだった。
22歳になった私は今まで”昼”の世界でしか働いたことがない。
何より地味だ。
接客は好きだったが、お客様はおじいちゃんおばあちゃんが多かったため、かなり難しい。
何よりも、経験したこともない職業だったが、内心見下していた。
昼に真面目に働けない人が落ちぶれる場所と思うくらい見下していた。
この騒動はうやむやなまま、1ヶ月ほど経ったある日。
「キャバクラで働く話、覚えてる?」
「え?覚えてはいるけど・・・。」
「若い時間がもったいないから絶対やるべきだと思う。今まで俺が言ってきた事って間違ったことなかったでしょ?」
「それは・・・。」
言葉に詰まった。
確かに間違ったことはなかった。
仕事においても友人関係に置いても、いつも彼のアドバイスによって解決していたし、なにより私のためになることが多かった。
今となっては当たり前のことしか言われていなかったのだけれど・・・。
この日から毎日毎日、キャバクラでの勤務をすすめられた。
そんな中、不運なことに会社が倒産する事になった。
「10月いっぱいでお店を閉めることになりました・・・。」
突然、朝の朝礼で店長が悲しそうにそういった。
それもそのはず、このお店は250年続く老舗のかまぼこ屋さんだったからだ。
近年、若者の練り物離れが酷く売上が年々下がっていた。
ギリギリの利益で耐え忍んできていたが、ついに赤字をだしてしまい、とうとう従業員の給料を払うのが苦しくなってきたのだ。
「会社都合で保険でお金が下りるのでみんな、ゆっくり休んでね。」
そう店長がいうとみんな一斉に泣き出した。
そんな中私は頭が真っ白だった。
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