霧の異世界物語(ミスティアストーリー)

みうけん

第八話 炎の悪魔

四人は戦闘用の服に着替え、準備を整えた。シャウルはオーギルを羽織りユニユルにまたがり、ミトルスを右手に持ち大樹の知恵はユニユルに括り付けた。
パスジルは服の上に鎧を着て剣を腰に差して、青く長い髪はくくって背中にたらし、マントを着ている。魔術師というよりはどちらかというと騎士のような格好だ。
マユイルは少し気やすいドレスのような白い服を着て、右手にナドーリアが持っていたような先端が少し丸く膨らんでいる長い金色の杖を持っている。
モーシーは黒ベースに緑の模様のマントに身を包んでいるので何もわからない。基本的に魔力が高くなればなるほど持つ装備が薄くなっているような気がした。
まず一行はマユイルの案内でパスジルがとらわれていた魔物の巣へ向かった。パスジルがとらわれていたのは海底都市ダラスの西の果てにある小さなぼろ家の地下だった。ぼろ屋の地下へは特に魔術式を解くとかいうことはなく普通に階段を下りた先の扉から入ることができた。地下室は狭く、魔物の気配はなく、魔物がパスジルを拷問した後だけが残っていた。
マユイル「もしかすると邪神ファボールについての手がかりがあるかもしれません。少し探してみましょう。」
だが部屋に隠し部屋の様なものもなく、パスジルの血の匂いと拷問用の器具だけが置いてあった。
一行が部屋を出ようとするとガチャッという音がして魔物が一匹部屋に入ってきた。魔物はトカゲを思わせる長くぬるぬる動くしっぽが生え、両手は鎌のように丸く研がれた刃のようになって刃の色は赤い、二足歩行でひざとひじの関節に紫の鎧が取り付けられ、全身は赤い。即座に一番近くにいたモーシーが鎖の呪文で捕えようとしたが、素早い動きで階段を上り、家の外へ逃げようとした。動きの速いパスジルは重い鎧を着ているとは思えないような速さで、剣を抜き階段の上へ追いかけていき、シャウルとモーシーはそれに続いたが、マユイルは地面に大きな杖を突いたまま魔力を杖に込め呪文を唱えている。
とにかくシャウルが上に行くと家の周囲に霧のバリアが張られている。おそらくマユイルが魔物を逃がさないための霧のバリアを張っているのだろう。しかし魔物は家の中のどこにも見つからない。しばらく三人があたりを見渡すと、とんでもない速さで魔物が家の中へ飛び込み家の壁に激突した。
魔物「これはどういうことだ?私は確かにこの家から逆方向へ走っていたはず。」
マユイルがゆっくりと階段を登りながら言った。
マユイル「それは霧に入った者の方向感覚を鈍らせ、霧の外へと逃がさないためのバリアです。私たちを倒さない限りこのバリアは解けません。」
魔物「このくそ女が」
魔物がそう言うと全速力でマユイルの方へ突っ走った。どうやらこの魔物はスピードが武器の様だ。
すぐにパスジルが魔物に匹敵する速さでマユイルの前に立ちはだかり、魔物に剣を振り下ろし、魔物の鎌とパスジルの剣がぶつかった。
次の瞬間、パスジルの剣がぼやけたかと思うと魔物の両腕は切断されていた。シャウルは鎧を着ているにもかかわらず、人並外れた速さの動きをするパスジルの強さに驚いた。
敗北を悟り、その場から全力で逃げようとする魔物をモーシーが鎖の呪文で縛り、捕えた。シャウルはミトルスを構えていたのに出番なく終わってしまった。
マユイル「その魔物から何か情報が得られそうですね。ちょうど地下室に良いものがあることですし。この場はとりあえず霧のバリアで囲っているので、情報をとれるだけ取っておきましょう。」
モーシー「私もそれがいいと思う。」
シャウル「しかし情報は確かに必要ですが、ここにそんな異様なバリアを張ればおかしいと思った魔物がここをかぎつけるんじゃないのか?」
モーシー「このクラスの魔物が何人来ようが支障はない。」
パスジル「では私が前を見張っておきましょう。」
シャウル「私は少し心配ですがまあいいでしょう」
マユイル「では決まりです。早速情報を聞き出しましょう。」
そういうとパスジルは家の前に座り、三人は魔物を拘束したまま地下の拷問部屋へ入った。
シャウル「ちなみにパスジルが両腕を切断してしまいましたが、こいつ死なないんでしょうか?」
マユイル「魔物の生命力は強大です。このままでも一週間は生き残れるでしょう。そして拷問の必要性もありません。情報を聞き出す役目は私にお任せください。」
そういうとマユイルは魔物を魔術で眠らせ、頭部に手を触れ呪文を唱えた
マユイル「アマール(答えよ)」
そういうと魔物がパッと目を開けたが暴れないし何も言わない。
マユイル「これから私が質問します。一切のウソを言わずに答えなさい」
魔物は催眠術にかけられたように、棒読みで答えた。
魔物「かしこまりました。」
シャウル「これはどうなっているのですか?」
マユイル「私の催眠術でいったん眠らせるときにうそを言えない暗示と私に逆らえない暗示をかけてアマールの呪文でそれを発動させたのです。」
シャウル「よくわかりませんね。」
マユイル「あとで教えてあげますよ。」
マユイル「それで魔物さんに質問します。」


マユイル「この地でパスジルを含め、魔術師たちを捕えているものは誰ですか?」
魔物「破壊神ファボール様の三人の手下の側近の一人である炎の悪魔メジクリアス様です。」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品