霧の異世界物語(ミスティアストーリー)

みうけん

第七話 寝起きの魔術師

三人は実際に襲われたパスジルが起きないことには、敵の居場所も情報もわからないので、朝食を済ませた後はお互いの、特にマユイルの情報を交換し合っていた。
シャウル「邪神ファボールを倒すにはユリギエルという神が使ったとされる魔法の杖が必要になるそうなのですが、マユイルは何か知っていますか?」
マユイル「ユリギエルの魔法の杖は三百年前私の先祖が邪神ファボールと戦ったときに使用した後、どこかに紛失しています。故に現在その杖はユリギエルの失われた杖と呼ばれています。」
シャウル「あなたはそれを扱うことはできるのですか?」
マユイル「失われた杖はユリギエルが姿を消した後、その継承権は代々ジュコイルの聖女の家に帰属していますが、実際に触れてもいないのでわかりません。」
シャウル「なるほど。では次に、あなたはサラッと四日間拷問されたパスジルを完治寸前まで治癒し、こんな広いところを囲む大きなバリアを持続的に張り、魔物の巣に潜り込みパスジルを助け出したが、もしその話が本当なのであれば、あなたには相当な実力と状況判断能力を持っていることになります。あなたはどのような力を持っているのですか?」
マユイル「私の持つ力は大きく分けて二つです。一つ目は治癒の力、もう一つが霧の力です。まあこの二つが大きいというだけで、普通に呪文などを使うこともできます。」
シャウル「もう少し詳しく教えてください。」
マユイル「いいでしょう。まず、この世界には影と光の二つの勢力が争いを続けており、邪神ファボールは影の勢力に帰属し、ミスティアは光の勢力に帰属します。このミスティアの地は霧で隠されており、ジュコイルに伝わる伝説では、ミスティアを覆う霧の力は魔術の神である我らがユリギエルの力だとされており、その力はジュコイルの聖女である私にも受け継がれています。霧には対象を隠す作用があり、魔物の巣に忍び込んだのと、この場所にバリアを張っているのは私の霧の力によるものです。次に治癒の力ですが、これも霧と同じく神の力を受け継いだものです。この力には対象を治癒する力があり、これが今パスジルに使っている力です。それ以外の説明はありません。」
シャウル「力の種類はわかりましたが、どんな魔術を使うにしても、それなりの魔力という物が必要になります。魔物の巣に潜った時の魔術がどれほどのものだったかは知りませんが、今使用している二つの魔術は私であれば一つ使うだけでも大きく消耗するよう強力なものです。ですがあなたは特に消耗した様子もなく元気にしています。今もかなり消耗しているのではありませんか?」
マユイル「ジュコイルの住人の魔力は強大なもので、常人の倍は魔力があります。特にこの私はそのジュコイルの住人の中でも魔力のある方です。故に常人が使って大きく消耗する魔術であっても私にはなんともないのです。」
シャウル「よくわかりました。」
そんな無駄話をしていると、シャウルから向かって斜め前から人がうなるような声が聞こえた。
シャウルが斜め前を見ると、パスジルが寝転がったまま微妙に動いているような気がした。モーシーが真っ先にパスジルへ駆け寄り、問いかけた。
モーシー「起きたかパスジル。」
パスジル「お父様ですか?」
マユイル「やっと起きましたか。起きたのであれば傷はもう完治したと言ってよいでしょう。」
パスジルはベッドから起き上がり、寝起き顔で尋ねた。
パスジル「ここはどこですか?」
マユイル「ここは海底都市ダラスの中です。あなたは私に保護され眠らされた後、二週間と少しの間体についた傷と体力の回復のため眠りについていたのです。」
パスジル「海底都市ダラスの中であれば今すぐ逃げなければ魔物に見つかり拷問されてしまう。すぐに安全な場所へ避難しなければならない。」
マユイル「さすがはオウルでえりすぐりの魔術師たちの隊長になるまではある。状況判断が早いですね。ご安心ください。ここは私のはった霧のバリアの中です。この中は安全です。」
パスジル「なるほど、殺さずにいたのがその証明か。でそこにいるのは誰だ?」
シャウル「こんにちは、私は森の賢者シャウルです。」
その後シャウルとモーシーでパスジルに今現在必要な情報をすべて伝えて何とか理解してもらった。

五分後

パスジル「それでは、これからここにいる全員で残りの魔術師たちを救出しに行くということでよろしいでしょうか。」
マユイル「だいたいそれでよろしいですが、あなたもお腹がすいているであろうことなので、食べる時間くらいは上げてもよろしいですよ。」
パスジル「では相当腹が減っているのでお言葉に甘えて、ご飯を食べさせていただきます。それで私の食料袋はどこでしょうか。」
パスジルは食料を持っていないようなので、モーシーの食料をパスジルに分けた。

十分後

マユイル「それでは皆様。魔術師たちを助け出しに行きましょう。」

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